No.2

destiney

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ep1

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春の風が肌を撫でる。

奏来は人気のない道を歩いていた。

足元のアスファルトには、薄紅色の花びらが散らばっている。街灯の明かりがぼんやりと滲み、昼間とは違う静けさが街を包んでいた。

ポケットに入れたスマホが震える。

画面を見ると、大学の同級生からのメッセージだった。

『もうすぐ着く?』

指先が迷う。

本当は行きたくなかった。けれど、何度も誘いを断るのも気が引けて、結局「少しだけなら」と返事をしてしまった。

肩をすくめ、小さく息を吐く。

夜の空気が、少しだけ冷たく感じた。

──その違和感に気づいたのは、駅前の居酒屋に着いてからだった。

「奏来くん、もう一軒行こうよ」

酔った先輩が、肩を組んでくる。

「いや、俺は……」

「いいから。せっかくの機会だしさ」

腕を引かれ、断る隙を与えられない。

店を出ると、雑踏の中に紛れ込んだ。

駅とは反対方向に歩いていることに気づく。

「どこ行くの?」

「いいとこ知ってるんだ」

路地を曲がると、そこは人通りの少ない裏通りだった。

煌々と光るネオン。見上げると、場違いなほど派手な建物が目に入る。

──ラブホテル。

足が止まった。

「ちょっと、冗談でしょ」

「いいじゃん、そんな怖い顔すんなって」

肩を抱かれ、強く引かれる。

心臓が嫌な音を立てた。

身体がこわばり、頭の奥がざわつく。

やめろ、触るな──。

強く抵抗しようとしたそのとき、不意に腕を引かれた。

「手を離してください」

落ち着いた声が響く。

気づくと、知らない男が隣に立っていた。

「……誰?」

「迎えに来ました」

涼やかな目が、奏来まっすぐに見つめる。

「一緒に帰りましょう」

その声の優しさに、張り詰めていたものが一気にほどけそうになった。
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