スター・スフィア-異世界冒険はお喋り宝石と共に-

黒河ハル

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第525話:良からぬ密談

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 ☆イザーク・バーミリオンsides☆


 レイト達が再び村にやってくる4日前。

 僕は来たる〝対立試合メタファー〟に向けて、訓練所にて単独稽古を重ねていた。

 今日はグスタフが巡回中の戦士長に代わり、稽古を取り仕切っている。

 同じ〝反対派〟のメンバーの戦士たちは、自分たちと組み手をしようか? と、しばしば提案してくれたが、ありがたく気持ちだけ受け取っておいた。

 理由は言わずもがな、今回の僕の相手がセルゲイ族長だからだ。

 決して仲間を下に見ているつもりはないが、今まで通りの稽古をするだけじゃ、あの人に勝てる気がしない。

 そこで僕は、レイト達の師匠でもあるオズベルクさんの教えを思い出した。

『自分より強大な仮想敵を思い描き、それを眼前の空虚へ投影したまえ』

 あの時は、僕含む戦士たちみんながイマイチピンと来ていなかったが、レイト達と共に数々の魔物や魔族と対峙した経験がある今、そのトレーニングがいかに効率的か理解できる。


「相手の強さを推し量るより、僕が相手を上回る気概で闘いに臨まないといけないんだ…」


 相手の実力を知ろうとするから、僕はいつも一手遅れる。
 頭で難しいことをあれこれ考えるより、状況に応じて手足が勝手に動くくらいがちょうどいいんだ。

 しかし、当日の相手は『人』。
 仮想敵を作るにしても、ベースはやはり人間がいい。

 したがって僕はここ数日ずっと、『マミヤ・レイト』を想定して闘い続けてきた。

 彼とはドノヴァン山で一度だけ闘ったことがあるし、なによりあの圧倒的な強さが、充分僕の中に強烈な印象として植え付けられている。

 けど…それは大きな間違いだった。

 自分でも気づかないほど、レイトに対する僕の印象はひどく歪で…醜いカタチだったのだ。


 ☆☆☆


「我々は今、秘密裏にある計画を練っています。
 少し、時間はありますか? グスタフ」

「へぇ? いいぜ。あっちで話そうか」


 その日は突然、村の族員たちがぞろぞろと訓練所へとやってきた。

 普段は身体をいたわって、公民館や自宅でアレコレと話し合っているお年寄りたちなのに、勢揃いで来るなんて珍しい…。


「なあ、イザーク。あのすぐ足腰がどうたらって騒ぎたてる族員のジジイどもが、わざわざ歩いて訓練所に来るだなんてただ事じゃないぞ。
 なんか悪いこと企んでんじゃ…」


 話しかけきたのは、同じ戦士の仲間の一人。
 僕と同じ〝反対派〟だ。

 彼らの来訪により、みんなの稽古が一時的にストップした。
 特に族員から目の敵にされている〝反対派〟の戦士たちは、彼らの動向を怪しく見始めていた。


「いやー考えすぎだろ。グスタフはホラ、族員のアナタシアばあさんの孫なんだし、稽古をがんばってる姿を見たくなったとかじゃねーの?」

「そうかぁ? んなら別に休憩室に移動することないと思うけどなぁ…」


 さらに混ざって来たのは〝暫定派〟の戦士。

 族会では対立する僕らだけど、戦士の業務では争うことはない。
 戦士長のエドウィンさんが、僕らが争うことをかたく禁じているからだ。


「…でも、たしかに変な空気ではあったよ。
 僕、ちょっとグスタフ達の様子見てくるよ」

「おっ、んじゃあ俺も。つーか休憩だ休憩。
 せっかくだしみんなで行こうぜ!」

「それはおもしろそうだな、乗ったよ」

「俺はパスだ。サボってんのがグスタフにバレるとグチグチ面倒だからな」

「うん。僕もー」


 様子を見に行くくらい、僕一人だけでいいんだけど…〝反対派〟の戦士たちは全員ついてくるようだ。

 …少し話を耳に入れたら、すぐに退散すれば良いか。


 ☆☆☆


「なに? マミヤを…『操る』だぁ?」


 薄いのれんが入り口の休憩室前。
 僕たちは信じられない話を聞いてしまった。


「おい! あいつらマミヤさんの話して…モゴ」

「シッ! 静かに…」


 仲間の口を手で塞ぐ。
 族員たちはいったい何を企んでいる?
 レイトに何をするつもりなんだ?


「グスタフ、私の手を見てみなさい。
 これがなんだか、お前に分かりますか?」

「なんだよ婆ちゃん…おおっ!? なんだこの赤いの!?」


 のれんの隙間から、アナタシアおばあさまが差し出した片手が見えた。
 しわしわの手に宿る赤いオーラ…あれは霊力エーテルだ!

 けど…どこかいつもと違う?


「これは『滅霊シャード』と言って、私たちが生まれるよりはるか昔に存在していた属性なのです。
 経緯はあとで説明しますが、私はこれを始祖ユニファ様より賜りました」

「「「!?」」」

「はあ!? マジか! すげえな婆ちゃん!」


 な、何を言ってるんだ…?
 ユニファ様って…お社のご先祖の?


「イザーク…まさかアナタシアの婆さん、ボケたんじゃ?」

「う、うん…正直僕もそう思っちゃったけど。
 でも、たしかにあんな霊力エーテルは見たことないよ」


 霊力エーテルの属性は『幻霊ファントム』一つだけのはず…。
 もし本当なら、とんでもない出来事なんじゃ…?


「ふふ、素晴らしいでしょう?
 私の血を引くお前にもきっと扱えますよ。
 これを授ける代わりに、婆の頼みを聞いてほしいのです」

「おう! 任せろ! 何でも言ってくれや!」


 意気揚々と答えるグスタフ。

 そして、族員たちは互いに目線を合わせ頷くと、とんでもない『頼み』を口にした。


「数日後にここへやって来る侵略者マミヤ。
 あの者の排除を君に頼みたいのだ」

「「「!」」」

「な…なに!?」


 なんだ…と? レイトを排除…?
 な、なんでそんなひどいことを!

 唖然とする僕らを置いて、族員たちはさらに話を進めた。


「彼はこのドノヴァンにとって、悪しき異邦の人族。数日後の対立試合メタファーで万が一〝暫定派〟に勝ってしまえば、長く続いた我々の歴史が終焉を迎えてしまう。
 そうなる前に、奴を君の手で落としてほしい」

「…いや、簡単に言ってけどよう…ムカつくがあの黒髪野郎はめちゃくちゃ強えんだ。
 エドウィン戦士長をボコボコにしやがった奴だぞ? 俺の実力で勝てる気が…」

「その心配は不要、安心なさいグスタフ。
 お前に究極魔法『妖魂アニマ』を授けます。
 人身を支配し掌握する、叡智の魔法…。
 おそらくユニファ様はこうなることを予見して、我々に賜ったのでしょう」

「アニマ…?」

「そう、この魔法は相手の身体ではなく心を攻撃するゆえ、グスタフ君にも好機はある。
 マミヤ・レイトは必ずミュアヘッドの宿で身体を休める。そこを狙え」

 ギシリ…

 良からぬ話を夢中で聞いているうち、仲間の誰かが床板を鳴らしてしまった。

 ま、まずい…!


「誰かいるのですか!?」







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