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第536話:零人の演説
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「は、犯人だって…?」
「あれは〝暫定派〟の誰かがやったんじゃ…」
「はあ!? やってねえよ! 俺らじゃねえ!」
「どの口が言ってる? お前ら、このあいだ戦士長に詰められてただろうが!」
「それはただの事情聴取だ! そういうお前らこそ怪しいんじゃねえのか!?」
「うああん!! こわいよ…!」
「ちょっとやめてよ! 子供もいるのよ!?」
俺とイザークが前に出た途端、村人たちはこぞって勝手に騒ぎ始めた。
その中に、イザークが教えてくれた心を操られている〝反対派〟の戦士たちも確認できた。
どうやら〝暫定派〟に罪を着せて潔白を証明しようと必死なご様子だ。
てか、これじゃうるさくて演説どころじゃないな。
ガキャンッ!
「レイト!? 何を…」
「イザーク。槍で盾をおもいきり殴れ」
「ええっ!?」
イザークは戸惑いながらも、背中に背負っている得物を抜刀する。
今回の試合で使用する槍だそうで、刃渡りが平たい非殺傷武器だ。
彼は俺が展開したガントレットに向けて、いつもの構えをとった。
「じゃあ、いきますよ!」
「あいよ!」
ガアァァァンッ!!!
「「「!」」」
矛と盾がぶつかり、強烈な衝突音を奏でる。
乱闘寸前だった民衆の意識が再び壇上へ向けられた。
〔はい、皆さんが静かになるまで三十秒もかかりました。今が平成や昭和なら、先生、拗ねて職員室に帰ってるところですよ?〕
「「「???」」」
「あの、レイト? それは何のことを言って…?」
イザーク含む、村人たちはポカーンと呆気に取られている。
ネタが古過ぎるというより、さすがに異世界には通じないか。
〔ゴホン。まあそれはともかくだ。
本当はアンタら…犯人なんかどうでも良くて、いかに自分ん家に飛び火しないかの方が重要なんだろ?〕
「「「…ッ」」」
奥にいる人にも聴こえるよう、昨日有り合わせの素材で作った即席メガホンを使用して、みんなへ問いかける。
目線を泳がせる者、パートナーや子供を抱きしめる者、何かを言おうとして飲み込んだ者…様々な反応がここからよく見てとれた。
〔それでいい。あんた達は間違っていないぜ〕
「「「!?」」」
「レ、レイト…?」
イザークが『何言ってんだお前?』みたいな顔で伺ってくる。
まあ、見てろって。
〔ただ自分の身や家庭を守りたいってだけなのに、どうしてそれを赤の他人が責められる?
なにも恥ずかしがるようなことはしちゃいない、人間として当然の行為だ〕
「「「………」」」
誰も、俺に反論する者はいない。
まさか肯定されるとは、彼らも予想だにしてなかったのかもしれない。
〔そう、あくまで人間として…だが、アンタらはドノヴァンで育った誇り高い『霊森人族』だ。
先週あんた達は、近所で起きていた〝宴〟、そして魔王軍の大襲撃をも凌いだ。
自分らのテリトリー内で起きたトラブルは自分らで解決する…そんなハイエルフ族の矜恃を、俺は心から尊敬していたよ〕
「「「……」」」
「レイト…」
メガホンを下げ、すぅと、腹に力を込める。
ここからは生の声で言わなくちゃいけない。
「俺から伝えたいことはいたってシンプルだ。
いいか! 自分自身から、〝逃げるな〟!!!」
「「「…ッ!?」」」
「ミュアヘッド・ナイセルの家が壊されたのは、『村の誰か』のせいじゃねえ!
誇りあるドノヴァンっ子としての自分を裏切った、テメェらが招いた結果だ!
甘ったれんな! 目を逸らさず己と向き合え!
醜いと自覚した心を受け入れるんだ!!」
ドンと、拳で自身の胸を叩く。
最後のセリフが合図。
ボン!!!
「「「ああっ!!?」」」
身体を脈打つ、馴染みある蒼の鼓動。
肩まで届いた蒼髪に、浮き出す身体。
〝カリスマ〟のおなりだ!
「さあ選べ! 偽りの秩序か、真の安寧か。
アンタらがどんな選択をしようが、俺はそれを尊重するぞ!」
☆イザーク・バーミリオンsides☆
「お、俺は…今みたいに怯えて暮らし続けるなんて、本当は嫌だ…!」
「私も…! なんで大切な仲間内で争わなきゃいけないのよ!」
「知らんぷりをすれば、いずれツケが回る…じいちゃん、そう言ってたっけな…」
「僕、前みたいにみんな仲良くしてほしい!」
蒼い姿へ変身したレイトが言い放った言葉に、集まった人々はそれぞれ想いを口にした。
なんて…なんて、心に響く演説なんだろう。
いつの間にか、僕も彼の発する言葉の一つ一つに聞き入ってしまった。
…やっぱり適わないなぁ、レイトには。
「ぎぎ…! 違う…! 違うッ! 俺は俺だ…!」
「失せろ〝アルテム〟! お前の、出番など…!」
「あ、あああ…ッ!! 今さら、暴れるな…!」
「「「ヒィッ!?」」」
あ、あれは…!?
民衆の中にいた、〝反対派〟の仲間たちが急に地面へうずくまって苦しみだした。
彼ら全員の身体から、赤い霊力が潰した膿のように這い出てきている。
僕の時と、同じ…!
「イザーク! ボケっとすんな!
次はお前が喋るんだ! 奴らを救うぞ!」
「…ッ! はい!」
レイトからメガホンを託され、バトンタッチをする。
ユニファ様が言っていた…頭の文ではなく、心の言葉で伝えるんだ!
「あれは〝暫定派〟の誰かがやったんじゃ…」
「はあ!? やってねえよ! 俺らじゃねえ!」
「どの口が言ってる? お前ら、このあいだ戦士長に詰められてただろうが!」
「それはただの事情聴取だ! そういうお前らこそ怪しいんじゃねえのか!?」
「うああん!! こわいよ…!」
「ちょっとやめてよ! 子供もいるのよ!?」
俺とイザークが前に出た途端、村人たちはこぞって勝手に騒ぎ始めた。
その中に、イザークが教えてくれた心を操られている〝反対派〟の戦士たちも確認できた。
どうやら〝暫定派〟に罪を着せて潔白を証明しようと必死なご様子だ。
てか、これじゃうるさくて演説どころじゃないな。
ガキャンッ!
「レイト!? 何を…」
「イザーク。槍で盾をおもいきり殴れ」
「ええっ!?」
イザークは戸惑いながらも、背中に背負っている得物を抜刀する。
今回の試合で使用する槍だそうで、刃渡りが平たい非殺傷武器だ。
彼は俺が展開したガントレットに向けて、いつもの構えをとった。
「じゃあ、いきますよ!」
「あいよ!」
ガアァァァンッ!!!
「「「!」」」
矛と盾がぶつかり、強烈な衝突音を奏でる。
乱闘寸前だった民衆の意識が再び壇上へ向けられた。
〔はい、皆さんが静かになるまで三十秒もかかりました。今が平成や昭和なら、先生、拗ねて職員室に帰ってるところですよ?〕
「「「???」」」
「あの、レイト? それは何のことを言って…?」
イザーク含む、村人たちはポカーンと呆気に取られている。
ネタが古過ぎるというより、さすがに異世界には通じないか。
〔ゴホン。まあそれはともかくだ。
本当はアンタら…犯人なんかどうでも良くて、いかに自分ん家に飛び火しないかの方が重要なんだろ?〕
「「「…ッ」」」
奥にいる人にも聴こえるよう、昨日有り合わせの素材で作った即席メガホンを使用して、みんなへ問いかける。
目線を泳がせる者、パートナーや子供を抱きしめる者、何かを言おうとして飲み込んだ者…様々な反応がここからよく見てとれた。
〔それでいい。あんた達は間違っていないぜ〕
「「「!?」」」
「レ、レイト…?」
イザークが『何言ってんだお前?』みたいな顔で伺ってくる。
まあ、見てろって。
〔ただ自分の身や家庭を守りたいってだけなのに、どうしてそれを赤の他人が責められる?
なにも恥ずかしがるようなことはしちゃいない、人間として当然の行為だ〕
「「「………」」」
誰も、俺に反論する者はいない。
まさか肯定されるとは、彼らも予想だにしてなかったのかもしれない。
〔そう、あくまで人間として…だが、アンタらはドノヴァンで育った誇り高い『霊森人族』だ。
先週あんた達は、近所で起きていた〝宴〟、そして魔王軍の大襲撃をも凌いだ。
自分らのテリトリー内で起きたトラブルは自分らで解決する…そんなハイエルフ族の矜恃を、俺は心から尊敬していたよ〕
「「「……」」」
「レイト…」
メガホンを下げ、すぅと、腹に力を込める。
ここからは生の声で言わなくちゃいけない。
「俺から伝えたいことはいたってシンプルだ。
いいか! 自分自身から、〝逃げるな〟!!!」
「「「…ッ!?」」」
「ミュアヘッド・ナイセルの家が壊されたのは、『村の誰か』のせいじゃねえ!
誇りあるドノヴァンっ子としての自分を裏切った、テメェらが招いた結果だ!
甘ったれんな! 目を逸らさず己と向き合え!
醜いと自覚した心を受け入れるんだ!!」
ドンと、拳で自身の胸を叩く。
最後のセリフが合図。
ボン!!!
「「「ああっ!!?」」」
身体を脈打つ、馴染みある蒼の鼓動。
肩まで届いた蒼髪に、浮き出す身体。
〝カリスマ〟のおなりだ!
「さあ選べ! 偽りの秩序か、真の安寧か。
アンタらがどんな選択をしようが、俺はそれを尊重するぞ!」
☆イザーク・バーミリオンsides☆
「お、俺は…今みたいに怯えて暮らし続けるなんて、本当は嫌だ…!」
「私も…! なんで大切な仲間内で争わなきゃいけないのよ!」
「知らんぷりをすれば、いずれツケが回る…じいちゃん、そう言ってたっけな…」
「僕、前みたいにみんな仲良くしてほしい!」
蒼い姿へ変身したレイトが言い放った言葉に、集まった人々はそれぞれ想いを口にした。
なんて…なんて、心に響く演説なんだろう。
いつの間にか、僕も彼の発する言葉の一つ一つに聞き入ってしまった。
…やっぱり適わないなぁ、レイトには。
「ぎぎ…! 違う…! 違うッ! 俺は俺だ…!」
「失せろ〝アルテム〟! お前の、出番など…!」
「あ、あああ…ッ!! 今さら、暴れるな…!」
「「「ヒィッ!?」」」
あ、あれは…!?
民衆の中にいた、〝反対派〟の仲間たちが急に地面へうずくまって苦しみだした。
彼ら全員の身体から、赤い霊力が潰した膿のように這い出てきている。
僕の時と、同じ…!
「イザーク! ボケっとすんな!
次はお前が喋るんだ! 奴らを救うぞ!」
「…ッ! はい!」
レイトからメガホンを託され、バトンタッチをする。
ユニファ様が言っていた…頭の文ではなく、心の言葉で伝えるんだ!
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