私の心はあなたのもの

みミリィ

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傍観者は見ているだけを辞めた

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 愛を交わした2人の荒い呼吸音が響く。
 
 くすくす笑い合いながら2人がお互いを拭いて、服を着た。それから、隣に寝たままもつれ合う衣擦きぬずれの音やリップ音がしている。
 招かざる客であるエクトルは部屋にある大きなソファーの影に隠れた。
 早く立ち去りたい、そう思いながらも汚してしまったマリエナのパンティを握りしめたままで。


「おやすみなさい」
「おやすみなさい、アデラール」

 男はベットサイドからマリエナにキスを落とすと愛おしげに頬を撫で、挨拶を交わす。

 男が、部屋から出ていった。

 エクトルに気付かずに。
 ひどくドコドコ心臓の音がして、マリエナに聞こえやしないかと懸念する。
 呼吸の音を出来る限りたてないよう、慎重に、慎重になるエクトル。
 やがて、規則正しい寝息が聞こえてきた。
 
 寝たのか……。
 自分が何をしようとしているのかエクトル本人にもわかってない。
 衝動のまま、エクトルはマリエナの眠る寝台へと音もなく、近づく。
 そして薄いカーテンをそっとめくった。
 
 そこには上気したほほの以前と変わらないマリエナが寝ていた。
薄い月明かりに照らされて、金色の髪の毛が彼女の可憐さを際立たせている。
 何も変わっていない彼女に安堵あんどし、一点に気付くとびくりと体を震わせた。
 
 薄いネグリジェ越しに乳首がツンとふたつ、立っているのが見えた。
 顔をもう一度見ると、見慣れたはずの唇はぽってりとして、紅く彩れている。
 これまでの彼女の姿が脳裏のうりよぎる。


 
 
 マリエナの兄であるマシューと、自分の友達が十人くらいで遊んでいる時に転んでしまい、皆が走っていく中、気まぐれでそばに駆け寄って手を差し出した時のあのすがるような涙顔。
『エクトル様…………』

 道すがら花屋で見かけて、彼女に似合うと思い立ったピンクの花。女性客ばかりで恥ずかしい思いをしつつ買った花束を渡すとこぼれんばかりの笑顔でこちらを見上げるマリエナ。
『……エクトル様』

 太陽の中、麦わら帽子を飛ばされないように抑えながら白いワンピースがすごく似合っていたあの笑顔。
『エクトル様っ!』

 婚約者となって、はじめて2人きりになった時のあの真っ赤な林檎りんごのような頬。潤んで見上げてくる可愛い顔。
『エクトル様』

 己の欲望のまま無理矢理事に及ぼうとした時、痛がり辞めてって泣いていたマリエナ。
 マシューが来たから慌てて取り繕って部屋から出ようとした時に後ろからぽつりと聞こえた。
『エクトル様』

 そして、真っ白になっているマシューの隣で何も感情もなく、ただこちらをまっすぐと見つめるマリエナ。
『あらまぁ、それは失礼いたしました。エクトル様』


 
 どこで間違えたのか。
 ここ数週間、家のメイドであるアリスに抱きつかれたり、寝起きに襲われたりしていた。
 その度にやめるように言っていたのだが、唇を奪われ、顔に豊満な胸を押し付けられて頭が混乱していた。
 
「エルー様の婚約者さんって、こんなこともしてくれないのですかぁ?本当に好きなら、なんでも許しちゃうのに、婚約者さんって本当にエルー様のこと好きなんですかぁ?私なら、エルー様になんでも許しちゃうなぁ♡」

 カッとなった。マリエナは俺のことを好きだ。
 マリエナは俺が何をしても許すはずだ。
 そのままマリエナの家に魔法で転移して、マリエナを引き摺ると彼女の部屋に飛び込んだ。マリエナの柔らかい肌をアリスの感触を消すように荒々しく蹂躙じゅうりんした。
 アリスは触られちゃったぁ♡と喜んでいたのに、マリエナは硬く蕾のように閉じたまま「やめて」と泣くので意地になっていた。

 そのまま何も出来ず、部屋に来たマシューと上の空でカードをし、惨敗して失意のまま家に帰る。

 
 エクトルもまた若く青かったのだ。
 夜中寝ていると夢の中でマリエナが濃厚なキスをしてきて、淫らな声を上げながら自分の上で踊っていた。
 エクトルの乳首を喰み、ヘソを舐め、その度に快楽に顔が歪む。
 
「ダメだよ、そんなことをしなくていい」
 ペニスを舐めるマリエナ。
 思ってもいない事をマリエナに伝える。それでも、辞めてほしくなくて自分の上で動く髪の毛を撫でる。
 ふと気がつくと三日月のような笑みを浮かべてマリエナはエクトルを見下ろしている。
「昼間は素直になれなくてごめんなさい。エクトル様の、これが欲しかったの」
 熱い沼のようなところにエクトルをあてがうマリエナ。
 そのままズブズブとエクトルを呑み込むとものすごい快楽がエクトルを襲った。
 マリエナはいい!ああ!いい!と叫んでいる。
 ……マリエナ?
 目を開けると同時に自分の中で射精感が駆け巡り、腰に力が入る。

 そこには一糸いっしもまとわないアリスが恍惚とした表情でいた。
 目の前が真っ暗になる。
軽く射精し、少しえたエクトルのペニスを不満げに締め付けるアリス。
 
 「やだぁ、まだ私いってないからまだして欲しいのにぃ」

 ぐりぐりと腰を激しく動かされて再び自身に硬さが戻る。

「ああっ!そう、これ!エルー様のおちんぽミルクアリスからこぼれちゃう!もっと注いでぇ」

「ああっ」

 情け無い声を上げてエクトルはアリスの中に射精した。
 ふるふると豊満な胸が目の前に震え、その胸を凝視ぎょうししていた。かつてのようにエクトルの手をアリスはその胸に押し付けた。ただし前回と違い今回は、肌に直接触れている。

「好きに、していいんだよ?」

 そこからの記憶は無い。
 一晩中していたような気がするし、次の日も朝からずっとやっていた。
 疲れたからと庭に出て休憩をしていたら、そこにもアリスが来てメイド服の長いスカートをめくった。
 下着は着ていなかった。
 
 ぬるりと沼に入り込むように呑み込まれる。
 ただのリップサービスだった。
 アリスの良さを褒めたつもりだった。

 それを全てマリエナとマシューに聞かれていただなんて。



 

 目の前の眠るマリエナは、自分の知っているマリエナと少し違った。
 体は少し丸みを帯びて、より美しくなった。
 それが自分の手によるものでなく、あのアデラールという男である事に嫉妬心を燃やす。

 ふぅ、と吐息に魔力を乗せる。
 マリエナの眠りがより深くなるように。

 エクトルは魔法が少しばかり使える。
 それは決して役に立つものばかりでは無いが、今回は助けられた。
 
 ぎしり

 寝台は音を立てる。
 マリエナの顔の横に手を立て、至近距離でじっくりと観察する。
 今まで頬にしかしたことのなかったキスを落とす。
 幾度か頬に口付けるとくすぐったいのか、ふふッとマリエナが笑った。

 唇を喰む。
 今度は傷が入らない程度にする。
 口内へ舌を入れると、それを迎えるようにマリエナが舌を絡めてきた。
 ぐらりと頭が嫉妬でどうにかなりそうになる。

 これを教えたのは俺では無い。

 ふつり、ふつりとボタンを外して出てきたのはこの世のものとは思えないほど白く輝く胸だった。
 数日前に見た時はもう少し小さかった乳首は、アデラールに愛でられてはしたなくツンと少し大きく立っていた。

 べろり

 舐めるとそれは更に硬さを増して愛おしい。
 これはあの男が先程まで舐めていたものだ。
 舌で細かく舐めて刺激を与える。

 ちゅぱ、ちゅぱ

 吸い、舐め、喰み、反対の胸に頬を押し付け感触を味わう。
 薄いマリエナの腹を撫ぜる。
 あの男は、ここに孕めと出していた。
 中にいるのか。
 絶望の中、マリエナの皮膚を撫でてその上質な感触を味わう。
 ネグリジェのボタンを一番下まで外し切り、前を完全に開けた。

 そこには月明かりに照らされた女神が横たわっていた。
 清楚なのに淫ら。
 己の唾液でてらてらと胸が光っている。

 足を。
 マリエナの足の間に入り、太ももの味を確かめる。
 そのまま中央へ向かって、つつつ、と舐め進める。

「ああ……」

 あまりの美しさに言葉が出た。
 数日前に見た時はぴったりと閉じていたマリエナの性器は今はアデラールのせいで少しだけ開いている。
 指で広げてみるとクリトリスが可愛くそこにある。
 舌で舐めると、マリエナの身体がその舌に合わせてぴくりぴくりと痙攣した。

 
 
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