婿入り志願の王子さま

真山マロウ

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トラブルメーカー

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 ライゴに頼んでミヤ姫たちとの約束をとりつけてもらったロラン王子は、翌々日、アルマンとコルトを連れて城に向かいました。
 チトセ女王は先約が入っているとのことで、まずはミヤ姫と会うことに。
 ライゴに用事があるアルマンらが別行動となったおかげで、侍女がいて二人きりはかなわなくとも、ロラン王子はミヤ姫との会話をひとりじめです。
 モモに教わった手土産を渡すと、ミヤ姫は好物だと大喜びしました。幸先のいい出だしに、ロラン王子の口もなめらかです。
「本当にありがと、助かったよ」
「もとはといえば私が悪いのです。いたずらに動転しなければ、お姉さまも躍起になって犯人探しをしなかったはずです。ロランさんたちに、つらい思いをさせることもなかったでしょう。申し訳ありません」
「ミヤ姫が責任を感じることないよ。俺とトウヤが捕まったのは自業自得だし。それに、そもそも桜が折られなければよかった話だから」
 明るく返すロラン王子。ミヤ姫の表情も柔らかくなります。
「トウヤさんにもお詫びをしていただきました。おばあさま思いのお優しい方ですね」
「うん、素直ないい子だよね。ただ俺が言うのもだけど、知識が足りなかったりするせいでムチャなことしちゃうっていうか。学ぶ環境とかあれば、また違ってくるんじゃないかな。そのためには、どんな身分でも平等に勉強できるような制度が……」
「あの、すみません、私はまつりごとに口をだすことができなくて」
「そうなんだ。じゃあ、あとでチトセ女王に言ってみるよ」
「お姉さまに?」
 瞠目どうもくされ平民の立場を思いだしたロラン王子は「ダメもとのライゴ経由で」とつけ加えてみましたが、ミヤ姫は感嘆します。
「すごいですね。大抵の方はお姉さまに意見なんてとても」
「あー、だからあんなふうになっちゃったのかな」
 独裁的だったのを回想しゲンナリしてしまったロラン王子に、ミヤ姫の眉が悲しげな形になります。
「お姉さまは誤解されやすいだけで、けして意地悪な方ではないのです。国をおさめる立場にあっては、どうしても厳しくならざるをえなくて……」
 消えいりそうな言葉尻と沈痛の面持ち。彼女が傷ついていたことを知り、その原因の一端が自分にもあると気がついたロラン王子は、考えを改める努力をしようと思いました。
「そうだよね、ごめん。ミヤ姫のお姉ちゃんだもん、悪い人なわけないよね」
「そんなふうに思っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。ロランさんもお優しい方でよかったです」
 ロラン王子の真心により、ミヤ姫の憂いが晴れていきます。見る者すべてを魅了する彼女の笑顔は効果絶大です。
「いやぁ、それほどでも」
 思わず顔がゆるみそうになりましたが、デレデレしたときはひときわ気色悪い、と常日頃アルマンに注意されていたので全力でひきしめます。
 と、そこにタイミングよく、チトセ女王からお呼びがかかったことを告げる臣下が。
 耐えた。耐えきった。これなら絶対キモイとか思われてない。大丈夫。会話もいいかんじだった。イケる。このまま油断しなければ……!
 手応えを胸に、謁見の間へ到着。アルマンとコルトは先に入室しており、ライゴとハクレンもいます。ロラン王子は、みなの見守るなかでの挨拶となりました。
「おかげで俺もトウヤも助かりました。ありがとうございました」
 ミヤ姫のため、と自分に言いきかせ謝辞をのべると、チトセ女王の口角がやんわりと持ちあがります。
「そんなにかしこまっていただかなくても結構ですよ、ロラン王子・・
 予想外の呼ばれ方をされ困惑。チトセ女王の双眸そうぼうは、なお楽しそうにひかめきます。
「あなたのことは話に聞いていました。以前、レオンさんに相談をうけて」
「兄上に? えっ、どゆこと?」
 理解が追いつかないロラン王子に、アルマンが補足説明をかってでます。
「つまり、この旅は最初から仕組まれていたんです。内密に、しばらくロラン様を国外へ連れだしてほしいと、俺がレオン王太子殿下に頼まれて」
「いや、違うでしょ。旅をすることになったのはアルマンの助言があってだけど、言いだしっぺは俺だよね」
「ええ、おかげで策を弄する手間がへりました」
 アルマンの瞳に揺らぎはありません。嘘じゃないと確信したロラン王子の顔が、だんだんと引きつります。
「まさかコルトも……?」
「……申し訳ございません」
 ロラン王子がミヤ姫と会っていたあいだのチトセ女王の先客は、アルマンとコルトでした。相談のすえ、彼らはチトセ女王たちに、この旅の本当の理由を打ちあけることにしたのです。
 いずれ弟がニリオンを訪れるやも、とレオン王太子に聞かされていたチトセ女王は、しばらく自国で暮らすことを許してくれました。
「お好きなだけ滞在していただいて結構ですが、非公式とのことなので客人としてもてなすことはできません。どうかご了承を」
 チトセ女王の声が形を崩し、ぐわんぐわんと耳奥に響きます。足元がなくなるような錯覚におそわれ、ロラン王子はそれどころではありませんでした。

 みくも屋に帰り、ようやくロラン王子が事態を把握。アルマンとコルトが真摯に詫びるも空気は険悪です。
「信じられないよ、実の弟を追いだすなんて!」
 チヨとモモが座敷を覗くなか、ロラン王子が感情を爆発させます。コルトは小さくなり俯いているため、うけ答えは必然アルマンです。
「追いだしたわけじゃありません。一時的ですから」
「それでもありえない! 国外追放じゃん!」
「少し落ちついてください。王太子殿下にもお考えがあってのことでしょう」
「ないよ! どうせ俺のことが邪魔になっただけだよ!」
「……そう思いたいのでしたら、どうぞご勝手に。ですが、怒鳴りちらすのはやめてください。みんな迷惑です」
 アルマンがレオン王太子の肩をもっているのは確かでした。ロラン王子はそれが悔しくてなりません。
「城の人たちがみんな兄上派なのは知ってたけど、そんなのどうだってよかった。アルマンだけは、俺の味方だと思ってたから……!」
 ぐっと拳を握りしめ、唇をひき結ぶロラン王子。
「出てく。二人とも俺のこと騙してたんでしょ。そんなの聞かされて、今までどおりなんて無理だよ。どこか別に宿をとって……」
「わかりました。俺とコルトが出ていきます」
 すっくと立ちあがったアルマンが、座敷を出がけにチヨとモモに頭をさげます。
「ロラン様をよろしくお願いします」
 そうして有言実行。手早く荷物をまとめると、その日のうちにコルトをひき連れ、後腐れなくみくも屋を去っていってしまいました。
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