君と見た空は一つの星しか見えなくて

黒百合

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第一章: 天文部

第3話: 詮索

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部室に戻るとどうやら俺が最後のようで全員戻っていた。相変わらず今日も新入生の来場者数はゼロ。断じて俺が呼びこみサボったからでは無い。たぶん。
 部室の空いてる椅子に腰をかけると部長は相変わらず元気そうにミーティングの準備を進める。ポスターの件バレてないよな?

「柊君も戻ったことだし。ミーティング始めるよ。」

 先輩はホワイトボードにでかでかと"流星群"と書き込み、どや顔でこちらを見るなり説明を始める。毎回思うけどホワイトボード使う意味はあるのだろうか。

「まずは流星群の到来に備えて天体観測の準備を今日から本格的に行います。望遠鏡の設置とかたぶん私しか知らないと思うから君たちにレクチャーします!」
「だったら先輩。俺と柊で屋上の使用許可取ってきます。」
「一人で行けよ。なんで俺なの。」
「だってお前サボってただろ?」

なんでバレてん。なんなん。

「うん。よろしくね。柊君、永峰君。」

さらに部長からのトドメである。凛音のヒットポイントはもうゼロっすよ。
 半ば強引に部室から引っ張り出された俺は、前を先導する恭介の後を追う。部活勧誘で先程まで騒がしかった下駄箱も今は嘘のように静寂が広がっている。
 しかし、二日連続でお供にされるのも少々辛いものがある。まぁ部長の相手を押し付けられるよりは疲れないけれどもね。こっちだってサボりたくてサボっているわけではないのだ。

「柊。お前、紫ノ宮さんといい感じなんだって?」
「は?」

 突然恭介が言い出したことの意味が分からず思わず聞き返してしまう。焦って何もないところでつまづいてしまった。紫ノ宮さんといい感じ。いい感じって?

「同じクラスの紫ノ宮さん。とぼけなくていいって柊の恋事情とか気になるしな。」
「いや俺それ以外の紫ノ宮さん知らないから。恋事情ってなんだよ。」
「先輩から聞いたぞ。昨日図書館でイチャイチャしてたと。」

初めて話したに等しい女の子とイチャイチャできる訳ないだろ。なんだその事情に足が生えたみたいなウワサ。やめてよね?それで迷惑被るの俺だけじゃ無いからね。

「お前が色恋沙汰なんて珍しいにも程があるよなぁ。」
「人に恋心が無いみたいな言い方するな。」

そりゃ恋だってしてみたい。足りないものはコミュ力だ。うん。お先真っ暗。

「でも柊よぉ。あの紫ノ宮さんだよな?」
「だからそれ以外の紫ノ宮さん知らないって言ってんだろ。」
「なんかお前のコミュ力心配だよ。紫ノ宮さんあんまり俺はオススメ出来ないけどな。関わってるのがクラスのカーストトップの溝口だぞ?」
「よく見てるな。恭介が紫ノ宮さん好きなんじゃねぇの。」
「確かに可愛いけどなんか裏があるんだよな。第一に俺は溝口が嫌いだ。なんか教師共にヘコヘコして媚び売ったりしてる癖にクラスじゃでかい顔だろ?それとつるんでる時点で少し怪しんだ方がいい。」

 あまり紫ノ宮さんを意識して見たことはないが人と話すのが苦手と先程は言っていた。でもカーストトップと関わっているのにそんなことってあるのだろうか。おしとやかで優しい笑顔の彼女が果たしてホントに裏があるのだろうか。俺にはとてもそんな風には思えなかったのだ。



 職員室まで来ると恭介は慣れた手つきで屋上使用許可申請を済ませてくる。天文部の天体観測は夜であるため、なおのこと申請は大切なのだ。そして俺がついてきた意味は無い。間違いなく無い。そうただのお供だ。
 屋上の使用許可を取った天文部は部室から屋上に活動スペースを移して活動を再開する。部長は俺と恭介に指示を飛ばしながら天体望遠鏡の運搬をさせる。段差の多い階段が荷物の運搬の邪魔をするのがもどかしい。俺と恭介がやっとの末、天体望遠鏡のパーツを運び込むと部長と乃愛はテントの設営をしていた。

「先輩…なんでテントなんすか?」

同じ疑問を持った恭介が部長にテントを設営している理由をたずねる。

「春だけどまだ風が冷たいでしょ?だからせっかくなので天文部の親睦会もついでにやろうと思って!私が思い付いたのだよ。名案でしょ?」

この人自分で名案って言ってる…でも風が冷たいのも事実。暖まる場所があるのはこの上なくありがたい。テントの中は部長が用意した小さなテーブルと座布団が数枚用意されていた。

「枳殻先輩ー。」
「神崎さんどうかした?」
「座布団数枚で部員増えたら足りなくないですか?」
「落語研から借りてくればいいんじゃない?」

そうですねと乃愛は軽くため息をつくと天体望遠鏡の設置の手伝いをしにこちらの方へ来る。いいの?落語研究会の許可は取ったの?あとで迷惑かけてないか謝罪に行かなきゃ。
 乃愛は先に部長から組み立て方などを教わっていたらしく、スムーズに組み立て作業を進めていく。
 こうして流星群の観測に備えたセットをある程度設置し終えた。俺たちは望遠鏡のテストとして天体観測をするために屋上にて辺りが暗くなるまで待機することになった。
 部長は久しぶりに自分以外の部員たちと活動が出来ることが嬉しいらしく、何もない待ち時間ですら楽しそうに望遠鏡を覗いている。部長。たぶん今は青空しか見えないですよ。
 恭介は一回家に戻って、お菓子などの物を持ってくると自転車で家まで帰っていった。
 俺もすること無いし、自販機で飲み物でも買いにいこうかと屋上を後にする。自販機は下駄箱周辺にあるため、屋上からの距離はすこしある。
自販機で炭酸飲料を購入して、ボーッとしていると後ろから軽く肩を叩かれる。

「痛っ…骨折れた。」
「あたしはそんな強く叩いてないけど?」

叩いた本人は気持ち不機嫌そうにする。

「乃愛も暇なん?」
「そうだね暇。同じく暇そうな柊と話をしに来たってところかな。」
「何それ可愛い。いきなりヒロイン力高い。」
「キモい。思ってもないこと言うなバカ。」

これがツンデレか。と思いながら乃愛に炭酸飲料を投げて渡す。

「それ百二十円。」
「奢りじゃねぇのかよ。」

軽く肩にパンチを食らう。乃愛は炭酸を開けて一口飲むと静かな口調で話を進める。

「紫ノ宮さんといい感じ…なの?」
「全然。初めて話したに等しいくらい。」
「あの紫ノ宮さんでしょ?」
「おしとやかな紫ノ宮さんですよ。」
「棘のある言い方ね。あたしはおしとやかじゃなくてごめんね。」

やべぇ地雷踏んだ。

「冗談です。紫ノ宮さんについて教えてください。乃愛様。」

ため息を一つすると乃愛は語り出す。

「いいよ。紫ノ宮さんね。クラスで結構発言力がある女の子たちと一緒にいるよ?まぁあたしはアイツらあんまり波長が合わないから関わらないけど。」
「恭介も言ってたけど溝口ってやつ?」
「そう。溝口。でも意外。柊があたしたち以外にも関心持つんだね。」
「ちょっと恭介が溝口と関わってる紫ノ宮さんのことあまりいい印象持ってなかったみたいだったから気になっただけだよ。」
「恭ちゃん言いたいことは分かる。女子のほとんどが溝口のご機嫌取りに必死なんだよ。あたしはそういうのは関わりたくない。くだらないマウント取って自分がトップだと思っていたいのか知らないけど紫ノ宮さんみたいな大人しい女の子は格好のカモなんだろうね。」

 大人しいから言いなりにされているといった口ぶりの乃愛の発言に若干の疑問を覚える。女子の世界はよく分からないが周りに合わせないとハブられたり、いじめにあったりと理不尽な扱いを受けると聞いたことがある。
だとするなら現状維持が溝口の周りの女子にとっては賢い選択だろう。誰だってそんな理不尽な扱いは受けたくないだろうし、そんな面倒ごとには周りも関わらないのが吉だろう。
 もしもの話を考えても仕方のないことだと思い、乃愛と共に屋上へと戻る。部長はテントの中で寝転がりながらスマホを触ってダラダラしている。望遠鏡は部長の暇をそこまで埋めてくれなかったようだ。
 数時間後、家から戻ってきた恭介の持ってきたお菓子を摘みながら天体観測会が始まる。望遠鏡を覗きながら解説を始める部長の説明を横に一つのことを考え込んでいた。
 紫ノ宮さんのことだ。溝口の話を二人から聞いたときから若干何か引っかかる。言いなりに動くっていつか限界が来るんじゃないかと。もしものことを考えてもしょうがないと思っても結局このことを考えてしまう。仮にいじめにあってたとして俺が出来ることはない。最悪の事態に発展しないことをただただ祈ることしか出来なかった。

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