君と見た空は一つの星しか見えなくて

黒百合

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第ニ章: 生徒会選挙

第21話: 和解と疑念

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 プリントの束を職員室の女子バスケ部の顧問の机に置いて、彼女は用意しておいたのか退部届をついでに添えて置く。千夏ちゃんは職員室を出ると私に軽く一礼して足早にその場から立ち去ってしまう。
 すごい可愛い子で素直そうなのに全然心を開いてくれないな。ちょっとは仲良くなれたと思ったんだけど少し残念。
彼女の姿が見えなくなるまで背中を見守り、自分も当初の目的に戻ることにする。

「柏崎さんのいつものメンバーは調べたし…何か盲点があるのかな?」

 とりあえず乃愛ちゃんと合流して情報交換したほうがいいかな。と時計を見るともうそろそろ午後五時を回りそうだった。さすがにそこまで乃愛ちゃんも時間は掛けていないよね…。
 一旦、部室に荷物を取りに戻るとそこには恭介くんと共に騒ぎ立てる部長の姿がそこにはあった。乃愛ちゃんの姿はそこには無かった。まだ戻ってきてないのかな?

「あっ紫ノ宮ちゃん聞いてよ。永峰くん酷いんだよ!私が楽しみにして部室用冷蔵庫に入れておいた限定販売のシュークリーム食べちゃったんだよ?あれなかなか買えないんだからー!」

 なんて可愛い理由で騒いでいるのだろうかこの先輩。そしていつのまに部室用冷蔵庫なんて買ったのだろう。恐らく私が入部して部活に昇格したから部費が出たのだろう。どうやって活動に関係ないものを購入したのかは聞かないでおこう。きっと知らないほうが幸せそう。
 そして先輩のシュークリームを食べてしまった恭介くんは必死に土下座をしたり、ご機嫌取りのために慌ただしい動きをしている。若干、先輩にからかわれてるのが分かるから特に助けなくても良いよね。
 それより乃愛ちゃんはどこにいるのだろう。

「あの…部長さん、乃愛ちゃん知らないですか?」
「神崎さんなら見てないかな。なんで?」
「ちょっと用事があったんですけど居ないなら仕方ないですね。ちょっと探してくるので乃愛ちゃん戻って来たら探しに行ったと伝えてください。」
「はーい。いってらっしゃい。永峰くんはダメだよ。」
「あー逃げられると思ってたんですけどねー。」

 どさくさ紛れに逃げようとした恭介くんは部長に腕を引かれて部室へと戻される。可哀想だけど強く生きてね恭介くん。
 乃愛ちゃんの行ったのは生徒会の方がいるところだ。まずは生徒会室の前まで来て中の様子を外からうかがうがどうにも活動している様子はなく、部屋の照明は消されている。さすがにここから彼女が出てくるなんてことはないだろう。
 柊くんはそう言えば今日は生徒会選挙の顔合わせって言ってたっけ?それは空き教室でやるって言ってた気がするからもしかすると乃愛ちゃんもそこに居るのかもしれない。そう思って手当たり次第に空き教室を覗いていくがどうやらこの階の教室ではないみたいだった。
 捜索場所を下駄箱のある一階にしぼって階段を降りて、とりあえず下駄箱を目指す。もしかしたら彼女は帰ってるかもしれないからついでにチェックしておく価値はある。
時間も時間だからか、ちらほら部活終わりの生徒が下駄箱に向かってきている。乃愛ちゃんの靴がまだあることを確認した私はその場を後にしようと振り返るとそこには一つの人影があった。
 聴きなれていたその声は最近は避けていたもので…。思わず足を半歩引いてしまう。

「溝口さん…。」
「そんな怯えた顔しなくていいから。別に何もしないし。」

 彼女は若干不機嫌そうに自分の下駄箱に手をかけると上履きを脱いでしばらく沈黙が流れる。部活終わりなのか表情に少し疲れが見える。そしてそっと口を開いた彼女は静かな口調で話を振ってくる。彼女から話しかけてくるのは予定外で少し動揺してしまう。

「莉奈…ありがとう。こんな面倒な委員会を泣き言言わずに今までやっててくれたんでしょ?」
「え…。」

 さらに彼女の口から漏れた感謝の言葉を私は聞き間違いじゃないよね?と自問自答を繰り返す。続けられる彼女の言葉でそれが聞き間違い出ないことが分かる。

「最近の莉奈生き生きして見えるよ。正直見ててウザいし、やっぱりアンタは好きになれない。でもお礼すら言えない私はもっと好きになれない。だから…今までありがとう。」
「溝口さん…。」

 思わず頰が緩んで笑みが溢れてしまう。ハッとして溝口さんに視線を送るとそっと優しい表情で彼女は意地悪く笑い返して言葉を口にする。

「うっざ…何よその笑顔。はは…まぁそれもアンタらしいか。」
「そんなことわざわざ言うために来てくれたの?」
「アンタの彼氏と約束したから…ちゃんと莉奈に謝れって。」
「柊くんが…?」
「てかアイツ結構モテるんだね。私には何がいいのか分からないけど。」
「それ私に言う?」
「確かにそれもそうね。」

 数秒黙ったあと溝口さんはプッと吹き出す。それを見た私も自然に笑いが込み上げてくる。こうして自然に笑い合うことが出来てたら溝口さんと私は最初から仲良くなれてたのかな?
それでも私は今の生活に後悔はしていない。いじめが無かったら今の生活は無かったから。いじめが苦しかったのは確かだけどそれでも今の幸せが続いてさえくれれば今はいい。
 そういえば溝口さんモテるって言ってたよね。言うことを言い終わったのか溝口さんはローファーを履いて校門に向かおうとしている。そんな彼女の腕を引っ張って引き止める。

「何よ莉奈。」
「柊くんがモテるってどういうこと?」
「ああ。昨日一年の女子に引き止められてさ。『柊先輩の下駄箱…どこ?』って聞かれてね。まだそんなに下級生と交流ないはずなのに怪しいなって思っただけ。まぁアンタの彼氏はアンタにぞっこんだろうし心配無いとは思うけど。」
「一年の女の子?」

 同学年があの手紙を出したと考えていたが後輩かもしれない可能性が浮上して来た。でもその子が差出人とすると繋がりがますます見えない。柊くんが下級生と絡んでいるのも無さそうだし、それ以前に柏崎さんと一年生との繋がりも薄いのではないかと思う。
さすがに一年生は学校に入って間もないし…そこまで適応力が高い子が差出人?柏崎さんを心配する理由は?

「ねぇ莉奈。腕離してくれる?」
「あっごめん!えっと…もう少し話聞かせてくれないかな?」

彼女はため息をつくと私のほうを向いて呆れた表情で笑いかける。

「良いけど。アンタとそんな長く話したくないから手短にね。」
「ありがとう…どんな子だったか覚えてる?」
「確かフードパーカー着てて、前髪は柏崎みたいなパッツンで髪色は黒だったよ。まぁあんな猫耳ついたパーカー着てるような子なかなか校内に居ないでしょうし調べられるんじゃない?」
「それ…。」
「もういい?私行くからね。」
「うん。…ありがとう溝口さん。」

 溝口さんの言う特徴。それは先ほど出会った一年生の女の子『御子柴 千夏』に類似…いや恐らくは同一の人物だと思う。ただそれだとますます分からない。柊くんとの接点は分からないし、彼女が柏崎さんを心配する理由も分からない。
思わぬ形で差出人と思わしき人は掴んだが疑問は増えるばっかりだった。

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