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第拾壱話-仲間

仲間-9

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 長四郎と燐は、再び夏月産業本社ビルを訪れ向かった先は、売店であった。
「おばちゃん、居る?」
 レジにおばちゃんの姿が見えなかったので、長四郎はレジの休憩室に向けて声を掛ける。
 すると、休憩室から喪服姿のおばちゃんが出てきた。
「今日はもう、店じまいだよ」
「いや、買いものしに来たんじゃなくて、おばちゃんに聞きたいことがあってさ」
「私に?」
「そう。新垣さんとか言う社員さんについて聞きたいんだよ」
「あんた、そこまで調べたのか?」
 おばちゃんは少し驚いた感じで、長四郎と燐を見る。
「ここで話しにくい内容そうだから、ここ出て喋りましょうか」
 長四郎の提案に「分かった。店閉めるの手伝ってくれ」と言われ長四郎は燐におばちゃんの手伝いをするよう首で合図する。
 燐は黙ったままおばちゃんの指示通りに閉店準備を手伝ったおかげか、5分もかからず売店を閉店する事ができた。
「ありがとう」おばちゃんは燐に礼を言い、店の照明の明かりを落とした。
 そして、本社ビルを出てからすぐ長四郎は話を切り出した。
「その新垣さんって言う社員の人は死んでるの?」
「あんたの推理通り、死んでるよ。5年前に」
「自殺ですか?」燐は声を小さくしながら質問する。
「自殺とは報道されていたけど、あの事を知っている社員は消されたと思っているはずだよ」
「5年前って。確かぁ~贈収賄の事件があった時だよな」
「そう。その事件に新垣君は関わっていたらしいのよ」
「新垣さんは、どこの部署に属していたんですか?」
「営業部」
 おばちゃんはそう答えて、タクシーを呼ぶ。
「私、これから長部さんの通夜に行かなきゃだから」
「お忙しい中、付き合って頂きありがとうございます」
 長四郎はそう言って、燐と共に頭を下げる。
「良いのよ。私も探りを入れてみるから。じゃ」
 おばちゃんは二人にそう告げ、止まったタクシーに乗り込んで通夜会場に向かった。
「営業部だって、言ってたね」燐はタクシーを見送りながら話しかける。
「そうだな」
 長四郎はそれだけ答えると一人どこかへ向かって歩き始めた。
「どこ行くのよ」
「どこって、秘密。それよりさ、ラモちゃんはもう帰りな」
「まだ17時じゃん」
 スマホの時計を見て燐は、憤慨する。
「ラモちゃん。男の子には一人にして欲しい時があるの。それくらい察してよっ!!」
 女の子風な喋り方で燐に反論する長四郎。
「分かった。私、帰るから」
「そうして頂戴っ!!」
 長四郎のその発言に、燐は肩をすくめると反対方向に歩き出した。
「行ったか」
 燐の寂しそうな背中を見ながら長四郎は目的の場所に向かう為、手を挙げてタクシーを呼ぶ。
 タクシーに乗り込むと「行き先はどこまで?」と運転手に聞かれたので「警視庁まで」目的地を伝えるとタクシーは走り出した。
 走り始めてすぐに、長四郎のスマホにメッセージが入る。
 絢巡査長からのメッセージで「紋章の正体が掴めた」と書かれていた為、「了解、すぐに向かう」と返信しタクシーに揺られながら、警視庁へと向かうのであった。
 長四郎と別行動を取ることになった燐はというと、帰路に着いていた。
 その道中、自分に出来ることはないか、その事だけを考えながら帰宅ラッシュの満員電車の中で考えを張り巡らせていた。
 新垣という社員について調べると言っても、触れてはいけない禁忌といった感じで協力してくれるであろう静も新垣の事を聞くと怒る始末。
 勇逸、話を聞き出せた売店のおばちゃんも新垣に贈収賄事件に関わっていた所までは知っていたようだが、詳しいことは知らない感じだった。
 人伝に調べても大した情報は得られないという結論に至った燐は、自分で贈収賄事件を調べる事にした。
 家に帰りつくと、普段使いしていないノートパソコンの電源を入れる。
 パソコンが立ち上がると、すぐさまインターネット検索の画面を開き「夏月産業贈収賄事件」と入力し、検索をかけた。
 検索トップに出て来たのは、自殺した社員を書類送検という見出し記事であった。
 燐はその記事から検める事にした。
 事件は、5年前の8月に発覚。
 夏月産業が経済産業省の官僚に、新型火力発電に使うタービンの選定を優位にしてもらう為に多額の賄賂を支払ったらしい。
 その担当者が新垣とのことで、検察特捜部が取り調べを行う前に新垣は自殺したのだった。
 人気のない廃工場で首をくくって。
 その後の検察特捜部の調べで、新垣が官僚と接触していた事実が発覚し被疑者死亡という形ではあるが起訴されたとのことであった。
「なんか、ざっつい捜査してるなぁ~」
 燐はそう呟きながらタッチパッドを操作し、別の記事を開く。
「う~ん」
 燐は背伸びをしながら時計を見ると、午前0時を示していた。
「もう、こんな時間か。何か食べて寝よ」
 燐は椅子から立ち上がると、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。
 だが、普段料理をしない燐の冷蔵庫は空であったので仕方なく、買いだめしているカップ麵を食べる事にした。
 燐は鼻歌を歌いながら、瞬間湯沸かし器に水を注ぎ入れていると燐のスマホにメッセージの着信が入るがそれに気づくこともなくカップ麵の準備をするのだった。
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