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第拾陸話-愛猫
愛猫-4
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燐は当てもなくフラフラと外を歩いていた。
自責念に駆られ、何もできなかった自分を悔む。
あの時、何か悩みを抱えていた好江に寄り添えなかった自分が情けなかった。
何があったのか。聞き出しておけば未然に防げたかもしれない。
店を出てからも同じ事を延々と考える自分が居た。
「はぁ~」
好江がついていた溜息と同じ溜息をする燐。
このままじゃいけないと思い、燐は近くのコンビニでブランドの珈琲を買ってフードコートで少しの間、気持ちを整理する。
珈琲を飲みながら何とか気持ちを落ち着かせようと努力するのだが、やはり後悔の念は拭えない。
「そう言えば、あの時・・・・・・」
燐は好江のある言葉を思い出した。
「この店がどうこうなる訳でもないんだけどね。一番はこの子達が幸せに寿命を全うしてくれることが大事だから」
燐の中で何かが引っ掛かった。
そして、店を出る時に刑事の誰かが「強盗の線は薄い」と話していた事も思い出した。
「もしかして、犯人は店の運営に関わっている人物が犯人なのかもっ!」
燐は勢いよく椅子から立ち上がると、机に置いていた珈琲の入ったカップを倒してしまう。
「ああ! もうっ!!」
慌ててテーブルに置いてあったクロスでこぼした珈琲を拭き、店員にクロスを汚してしまった事を謝罪して店を出た。
その頃、長四郎は一川警部達と共に最寄りの所轄署で、現場周辺の防犯カメラ映像を確認していた。
「死亡推定時刻は、午後22時から午前0時までの間みたいですね」
長四郎は届いたばかりの死体検案書に目を通しながら、防犯カメラ映像をチェックする一川警部に話し掛ける。
「そういうことは、早く言ってほしいな」一川警部にチクリと嫌味を言われる長四郎。
しかし、そんなことお構いなしに長四郎は話を続ける。
「死因は当初の見解通り、脳挫傷ですね」
長四郎の発言を無視し、一川警部はチェックを続ける。
「でも、現場は争った形跡はなかったよなぁ~」
「・・・・・・」
「う~ん。参ったなぁ~」
「・・・・・・」
「どうです? 何か見つかりましたか?」
「あ~もうっ、長さん、うるさいっ!!」
「すいません」
「長さんは、絢ちゃんの所に行って! 何か見つけたら連絡するけん」
「分かりました。お願いしやぁ~す」
長四郎は一川警部の指示通り、会議室で夜田を聴取している絢巡査長の元へと向かった。
会議室に入ると、項垂れている夜田を一生懸命励ましながら話を聞く絢巡査長の姿があった。
長四郎は重い空気の中で、自分自身が軽い空気になりながら部屋を移動し絢巡査長の隣に座る。
座ったタイミングで、絢巡査長が今まで書き記したメモを長四郎に見せる。
名前 夜田 久
年齢 36歳
職業 ITベンチャー企業の代表取締役
被害者との関係 交際相手
箇条書きになっているメモに目を通し、絢巡査長に手帳を返した。
「犯人は。犯人は捕まるんですか?」
夜田の質問に「全力で捜査に当たっておりますので、逮捕を待っていてください」と絢巡査長は冷徹にもとれるような返事をする。
「あの僕からも質問良いでしょうか?」
「はい」目を腫らした夜田が長四郎を見る。
「猫谷さんとは、いつから交際を?」
「彼女と付き合い始めて4年です」そう答えると、夜田は俯き泣き始めた。
「一答する度にこの調子なんです」
絢巡査長は少し面倒くさそうに、長四郎に耳打ちをする。
「成程」と夜田と共に、絢巡査長への返事をする。
「すいません。辛くて」
「いえ、そんな事は」
「あの、猫は好きですか?」
「え?」
長四郎からの、いきなりの質問に戸惑う夜田。
「ですから、猫はお好きですか?」
「嫌いではないですけど」
「そうですか。ありがとうございます」
「それが何か事件と関係あるんですか?」
「いえ、個人的興味です。気にしないでください」
それまで、しおらしかった夜田がムッとした表情を見せた。
長四郎はそこから、当たり障りのない話をして聴取を終了したのであった。
自責念に駆られ、何もできなかった自分を悔む。
あの時、何か悩みを抱えていた好江に寄り添えなかった自分が情けなかった。
何があったのか。聞き出しておけば未然に防げたかもしれない。
店を出てからも同じ事を延々と考える自分が居た。
「はぁ~」
好江がついていた溜息と同じ溜息をする燐。
このままじゃいけないと思い、燐は近くのコンビニでブランドの珈琲を買ってフードコートで少しの間、気持ちを整理する。
珈琲を飲みながら何とか気持ちを落ち着かせようと努力するのだが、やはり後悔の念は拭えない。
「そう言えば、あの時・・・・・・」
燐は好江のある言葉を思い出した。
「この店がどうこうなる訳でもないんだけどね。一番はこの子達が幸せに寿命を全うしてくれることが大事だから」
燐の中で何かが引っ掛かった。
そして、店を出る時に刑事の誰かが「強盗の線は薄い」と話していた事も思い出した。
「もしかして、犯人は店の運営に関わっている人物が犯人なのかもっ!」
燐は勢いよく椅子から立ち上がると、机に置いていた珈琲の入ったカップを倒してしまう。
「ああ! もうっ!!」
慌ててテーブルに置いてあったクロスでこぼした珈琲を拭き、店員にクロスを汚してしまった事を謝罪して店を出た。
その頃、長四郎は一川警部達と共に最寄りの所轄署で、現場周辺の防犯カメラ映像を確認していた。
「死亡推定時刻は、午後22時から午前0時までの間みたいですね」
長四郎は届いたばかりの死体検案書に目を通しながら、防犯カメラ映像をチェックする一川警部に話し掛ける。
「そういうことは、早く言ってほしいな」一川警部にチクリと嫌味を言われる長四郎。
しかし、そんなことお構いなしに長四郎は話を続ける。
「死因は当初の見解通り、脳挫傷ですね」
長四郎の発言を無視し、一川警部はチェックを続ける。
「でも、現場は争った形跡はなかったよなぁ~」
「・・・・・・」
「う~ん。参ったなぁ~」
「・・・・・・」
「どうです? 何か見つかりましたか?」
「あ~もうっ、長さん、うるさいっ!!」
「すいません」
「長さんは、絢ちゃんの所に行って! 何か見つけたら連絡するけん」
「分かりました。お願いしやぁ~す」
長四郎は一川警部の指示通り、会議室で夜田を聴取している絢巡査長の元へと向かった。
会議室に入ると、項垂れている夜田を一生懸命励ましながら話を聞く絢巡査長の姿があった。
長四郎は重い空気の中で、自分自身が軽い空気になりながら部屋を移動し絢巡査長の隣に座る。
座ったタイミングで、絢巡査長が今まで書き記したメモを長四郎に見せる。
名前 夜田 久
年齢 36歳
職業 ITベンチャー企業の代表取締役
被害者との関係 交際相手
箇条書きになっているメモに目を通し、絢巡査長に手帳を返した。
「犯人は。犯人は捕まるんですか?」
夜田の質問に「全力で捜査に当たっておりますので、逮捕を待っていてください」と絢巡査長は冷徹にもとれるような返事をする。
「あの僕からも質問良いでしょうか?」
「はい」目を腫らした夜田が長四郎を見る。
「猫谷さんとは、いつから交際を?」
「彼女と付き合い始めて4年です」そう答えると、夜田は俯き泣き始めた。
「一答する度にこの調子なんです」
絢巡査長は少し面倒くさそうに、長四郎に耳打ちをする。
「成程」と夜田と共に、絢巡査長への返事をする。
「すいません。辛くて」
「いえ、そんな事は」
「あの、猫は好きですか?」
「え?」
長四郎からの、いきなりの質問に戸惑う夜田。
「ですから、猫はお好きですか?」
「嫌いではないですけど」
「そうですか。ありがとうございます」
「それが何か事件と関係あるんですか?」
「いえ、個人的興味です。気にしないでください」
それまで、しおらしかった夜田がムッとした表情を見せた。
長四郎はそこから、当たり障りのない話をして聴取を終了したのであった。
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