探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第弐拾捌話-御祭

御祭-19

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 佐藤田警部補と遊原巡査は、深中都姫が入院していた大学病院へと来ていた。
「すいません」と佐藤田警部補は近くを通りがかった看護師に声を掛けた。
「はい。何でしょう?」看護師は笑顔で答える。
「看護師長さんは、出勤されているでしょうか?」
「師長ですか? あの、どう言った御用件でしょうか?」
 入院患者ではなく看護師長に用がある目の前の男を少し怪しむ看護師。
「ああ、すいません。俺たち刑事です」遊原巡査が警察手帳を提示し、身分を明かす。
「刑事さんですか。今、呼んできますので少々お待ちください」と言う看護師に遊原巡査は「ナースステーションまでご一緒しますよ」と付いて行く旨を伝える。
「驚かしてすいませんね」遊原巡査が世間話の感覚でナースステーションに案内する看護師に話を切り出した。
「いえ。何かの事件の捜査ですか?」
「ええ、まぁ。そんなところです」
「なんの事件かって、教えてもらえないですよね?」
 こういった話が好きな看護師なのか。興味津々といった顔で遊原巡査に質問した。
「事件にはなってないんですけどね。深中都姫っていう女子高生の子知ってます?」
「ああ」と答えた看護師の顔が曇る。
 刑事二人はそれを見逃さなかった。
「やっぱり、医療事故なんですか?」遊原巡査がストレートな質問をぶつけると「おい」と佐藤田警部補が窘めるように注意する。
「あ、すいません」
 遊原巡査は少し喋りすぎたかと反省する。
「で、深中都姫さんって医療事故で亡くなったんですか?」
 佐藤田警部補は何食わぬ顔で、遊原巡査の質問を再度して見せる。
「それは・・・・・・分かりません」看護師はそう答えてナースステーションへ小走りで向かって行った。
「班長。怒らせちゃったじゃないですか」
「え? あ、本当に。困ったねぇ~」
 とぼけて見せる佐藤田警部補に、少しムカつく遊原巡査であった。
 ナースステーションへ来たと同時に「私が看護師長の茂気もげです」とベテラン看護師といった風格の茂気看護師長が刑事二人に挨拶した。
「あ、どうも。我々は警視庁捜査一課命捜班の遊原。こちらは佐藤田です」
 遊原巡査が警察手帳を提示して、自分と佐藤田警部補の自己紹介をする。
「深中都姫さんの件ですよね?」不機嫌そうに用件を聞いてきた。
「あ、そうです」と佐藤田警部補は不機嫌な態度も気にしないといった感じで返答する。
「どうぞ。こちらへ」
 茂気は二人の刑事を病院の応接室へと案内した。
 応接室に通された二人は、三人掛けのソファーに並んで腰を下ろした。
 茂気が飲み物を取りに行き待ちぼうけをくらう中で遊原巡査が口を開いた。
「班長。やっぱり事故なんですかね?」
「なんで、そう思うの?」
「あの反応見たら、誰だって疑ってかかりますよ」
「そうだなぁ~」
「そうだなぁって」
 ここ数日、このおっさんと捜査をしていてずっと疑問に思っていたことがある。
 やる気があるのか、それとも、やる気がないのか。それを聞いてもはぐらかされる気がして聞くに聞けないので歯がゆかった。
「お待たせ致しました」
 茂気は人数分の珈琲が入った紙コップを持って戻ってきた。
「どうぞ」そう言いながら、二人の前に紙コップを置くと「頂きます」と言って佐藤田警部補はすぐに口をつける。
「深中都姫さんについては、とても残念です」茂気から話を切り出した。
「ご両親は医療事故を疑っているようですが、何があったんですか?」
 遊原巡査の質問に少しの間を置き、茂気は答え始めた。
「最初に断っておきますが、事故ではないと思います。ですが、彼女への酸素吸入が行き届いていなかったのは事実ですしね」
「行き届いていなかった? どういう事です?」
「はい。酸素のチューブが抜けていたんです」
「それって、事故じゃないですか!!」
「遊原、落ち着け。普通に考えたら事故って言っちゃいたくなる話だと思うんですけど」
「はい。ですが、我々もそういった事が無いように二重チェックをしているんです。キチンとチェック表にも記載しています。私も目を光らせておりますので、絶対はないとはいえその可能性はかなり低いです」
「そうですか」
 佐藤田警部補は自身満々に答える茂気を見て、納得した素振りを見せる。
「班長」
 納得がいかないといった感じの遊原を無視して、佐藤田警部補は話を続ける。
「師長さんの言い分は病院側の言い分として捉えて良いんですね?」
「はい」
「分かりました。でしたら、彼女のカルテ、看護記録、防犯カメラ映像を提出して頂けませんか?」
「何故ですか? 事故じゃないと」
「まぁまぁ。我々も事件にしようとしているわけじゃないんですよ。ね、ここで事故じゃないと証明出来たら病院側としても安泰ですよね?」
 その発言を受け、茂気は佐藤田警部補に言われた物を提出した。
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