探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

文字の大きさ
655 / 770
第参拾参話-幻想

幻想-4

しおりを挟む
「AED持ってきてください!!」
 明野巡査がそう客に指示を出し、その間も一生懸命に心臓マッサージを続ける。
「はい。秋葉原のライブハウスです」
 絢巡査長はその傍らで、消防に通報している。
「ちょっと、どいて!!」
 客を押しのけ燐はステージから降りて、倒れた金田に近づき疲れを見せ始める明野巡査に「変わる」と心臓マッサージを変わって行い始める。
 すると、客達は「うぉぉぉぉぉ」と感嘆の声を出す。
「うぉぉぉぉぉじゃねぇよ!! てめぇらも手伝え!!」
 燐にそうしかりつけられてた客達は、大慌てで通報しようとし始める。
「違う。違う」
 長四郎はそう言って、割って入り燐から心臓マッサージを変わる。
「あ、あんた!? なんで」
「その質問はもういい。それより、息しているか確認してくれ」
「分かった」長四郎の指示を受けて燐は金田の口元に耳を当てるとまたオタク達が「うぉぉぉぉぉ」と声を上げる。
「ダメ。息してない」
 それでも、長四郎は心臓マッサージをリズムよく行い、心臓が動いたか定期的に確認しては再びマッサージを続ける。
「救急隊員が来ました!」
 スタッフの一人が救急隊員を案内しながら、客達をどかしていく。
「今の状況は?」
 救急隊員は金田の状態を確認する。そして、明野巡査がこれまでの経緯を救急隊員に説明し、そのまま搬送されていった。
「え~ お客様に申し上げます。本日のライブは中止とさせて頂きます」
 運営スタッフの案内の通り、公演は中止となり客達は残念だという声を出しながら帰路につくのだった。
 長四郎もそれに続こうとするが、がっと首根っこを掴まれそれを阻まれる。
「どこ行くのかなぁ~」燐はそう言いながら、ジタバタとあがく長四郎を逃がさまいと鳩尾に軽いパンチをする。
「痛っ! ファンの目の前でそんなことして良いと思ってるのか?」
「ふっ、甘い。もう客は一人も居ない」
 燐にそう言われた長四郎は周囲を見渡すと、運営スタッフが片づけを始めていた。
「マジか」
「マジよ。それより、気にならなかった?」
「気になるって。ああ、ラモちゃんがアイドルやっていること」
「そっちじゃない。倒れたファンのこと」
「気にならないね」と答えつつ、長四郎は客を早々に帰して良かったのか。と少し思っていた。
「あの人、病気な感じじゃなかったよね?」
「そうなんだ。俺、仕事があるから帰る」
「何が仕事よ。絢さんか泉ちゃんに聞きつけて私を見に来たくせに」
「たっかい金払ってラモちゃん見るほど、俺は暇じゃないの」
「なんか、ムカつく。な!」燐は長四郎の脛を蹴る。
「ほぶっしっ!!」
 突然の痛みに変な声を出して、長四郎はその場に崩れ落ちる。
「茜ちゃ~ん、着替えよう」舞台袖の入り口から、ひょっこり顔を出した春恵が燐に声を掛ける。
「分かったぁ~ 今、行く。良いか、逃げんなよ」
「は、はい」
 痛みに耐えながら長四郎は今できる精一杯の返事をするのだった。

 病院に搬送された金田は死亡が確認された。
 あれだけ、救護処置をしたのにも関わらず救命できなかったことに悔しがる明野巡査に絢巡査長は声を掛けた。
「泉ちゃんのせいじゃないよ。それに、救急隊員の人はもっと辛い経験をしてきているんだから。それにこれからもっと辛い経験が降りかかってくるかもだよ。こんな所で凹んでいたらやってけないよ」と。
「そう。ですよね。私、警官向いてないのかな」涙を滲ませながら明野巡査はボソッと呟いた。
「そんなことないよ」と言いつつ、絢巡査長は失敗したそう思った。
「すいません。警察の方ですか?」そう看護師に声を掛けられる二人。
「はい。そうですけど」絢巡査長より先に明野巡査が答えた。
「実は先生からお話があるとのことで、少し宜しいでしょうか?」
「はい。分かりました」女刑事二人は声を揃えて快諾した。
 二人は診察室に通され、そこに救急外来を担当する医師の意思いしが待っていた。
「どうも、ここで救急を担当している意思と申します」
「警視庁の明野とこちらは絢です」と明野巡査が二人分の自己紹介をした。
「お二人をお呼びしたのには、先程、運び込まれた患者さんについて事件性が疑われるからでして」という言葉に二人は顔を見合わせて驚くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...