西園寺家の末娘

明衣令央

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第6章:不和

23・小花の立場――西園寺家――

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「ひどい……ひどいよっ……」

 私はもう、何が何だかわからなくなっていた。
 ただひどいと……それしか思えない。
 七海さんと亜紀さんが目の前で乱暴されているというのに、誰も助けようとしないこともひどいと思う。
 これが他家のことには口を出せないっていうことなのかもしれないけれど、それにしてもひど過ぎるよ!

「もう、本当にやめてってば!」

 思い切り暴れて将成さんの腕を振り払うと、私は海斗の元へと駆け寄り、彼の頬を打った。
 頬を打たれた海斗は、絶対に避けることができたはずなのに、避けずに私に殴られ、何故か嬉しそうに笑う。

「なぁ、そのやめてって言うのは、西園寺家の末娘であり、真中の姫と判明した小花様からの命令か?」

「え? 何、それ……」

 西園寺家の末娘っていうのはともかく、真中の姫って呼び名は何なのって思う。
 西園寺家の水の力とは別に、真中の治癒の力に目覚めたからってことなのかな?

「命令って言ったら、七海さんに乱暴するのをやめてくれるの?」

「あぁ、俺は小花様のボディーガードになるからな。小花様の命令に従う」

 海斗はニヤニヤ笑いながら頷いた。

「じゃあ、ボディーガードなんて要らないけど、もう七海さんにひどいことをするのを止めて! これは命令だよ!」

 私がそう言うと、海斗は頷きその命令を素直に聞いてくれた。
 だけど私が七海さんの傷を治そうと手を伸ばすと、

「小花様、それは駄目だ」

 と言い、遮る。

「どうして邪魔をするの? 邪魔しないでよ! これも命令だよ!」

「いくら命令でも聞けないことはある。小花様は真中の治癒の力を使うとき、相手の傷を自分の体に移して治すだろう。小花様が再び傷を負うなど、許されることではない。これだけは、どんなに命令されても従うことはできない」

 どうやら海斗は私の体のことを心配してくれているらしい。

「それに、分家にそんな優しさは要らない。その優しさは、分家に勘違いをさせ、つけ上がらせる。そして分家をつけ上がらせた結果が、今の小花様だ」

「え?」

 分家をつけ上がらせた結果が、今の私--。
 私はみんなと仲良くしたかっただけなのに、どうして上手くいかないんだろうな。
 本家と分家の溝って、埋められないのかな?
 いや、埋めちゃいけないものなのかな?

「そんなに心配しなくても、これ以上こいつには手を上げないから安心しろ」

 安心しろと言われても、七海さんはボロボロだ。
 だけど、どうしても海斗は七海さんの治療をさせてくれなかった。
 でも、これ以上は七海さんの手を上げないと言っているから、海斗のことを少しは信じていいのではないかと思う。
 じゃあ、次は亜紀さんの方だと、私は裏東家のおじいさんを睨みつけた。

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