西園寺家の末娘

明衣令央

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第6章:不和

24・小花の立場――東宮司家――

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「あなたも、亜紀さんに乱暴するのはやめてください!」

「乱暴ですと? 小花様、それは違いますな。これは、躾です」

「躾だなんて言わないでください! とにかく、もう亜紀さんに乱暴するのはやめてください!」

 私がそう言うと、裏東のおじいさんは、ふむ、と考え込む。そして、

「それは、わしに対する命令ですか?」

 と、聞いてきた。

「若の……東宮司家の時期当主である大樹様の奥方として、そして真中の姫君としての命令だと言うのなら、そこの小童と同じように、わしも小花様に従いましょう」

「え……と……」

 大樹さんの奥方とか言われて、少し胸がドキドキした。
 きっと顔も赤くなっているんじゃないかと思う。
 裏東のおじいさんを見ると、ニヤニヤと笑っていた。
 私の様子を見て楽しんでいるみたいで、少し腹が立ったけれど、「そうです」というと、嬉しそうに頷いて亜紀さんから手を放した。

「では、改めて自己紹介を致しましょう。わしは、裏東勇……東宮司家の筆頭分家で、裏東家の当主です。いやぁ、小花様と話せて大変嬉しいです。小花様は、本当に可愛らしい方ですなぁ。ご回復、心よりお祝い申し上げます」

 自分の足元に血だらけの亜紀さんが居ると言うのに、裏東のおじいさんは私に普通に話しかけてきた。
 異様な光景だと思うのは、私だけなのかな。
 この人も海斗も私にはとても優しいのに、分家に対してはとても厳しい考え方をしている。
 まるで自分たちをも含め、分家の人たちを人間だと思っていないみたいにも感じる。

「あの……賢さんや麗華さん……渚ちゃんや真紀ちゃんは、今どうしているんですか?」

 海斗と裏東のおじいさんが現れる前、七海さんと亜紀さんが私の前で土下座をしたとき、四人に大変なことが起きているのではないかと思った。
 それが、海斗と裏東のおじいさんの登場によって、より現実味を帯びてくる。

「賢と東野の娘ですか……まだ、処分はしておりませんな」

「こちらも、まだ渚の処分はしていない。馬鹿女の方も、な」

「に、兄さん! その言い方、やめて!」

 床に倒れた七海さんが必死に手をのばし、海斗の足首を掴む。
 海斗はため息をついて七海さんの手を振り払うと、

「あの人は、もう駄目だろう」

 と言い、私の後ろへと視線を向けた。
 私は振り返って、自分に後ろに居る人を確かめる。
 私の後ろに居たのは、将成さんだった。
 海斗が「馬鹿女」と言った後に将成さんを見たということは、馬鹿女って麗華さんのこと?
 もう駄目って、麗華さんが今、どんな状況下に居るの?
 海斗に麗華さんのことを聞こうと思ったんだけど、彼はぐったりした七海さんを小脇に抱えると、

「じゃあ、またな」

 と言って、この場から立ち去った。
 そして同じように裏東のおじいさんも、亜紀さんを連れて姿を消していた。

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