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第3章:四家と妖滅
8・真中の力
しおりを挟む「さてと、ちょっと話すかのう」
おじいちゃんがそう言うと、頷いた叔父さんが、店の入り口にかけてある札を、『準備中』に引っ繰り返した。
それからみんなで四人掛けの席に腰を下ろして、
「周央学園に通うのも、大変じゃな」
と、おじいちゃんは苦笑いした。
「千隼、小花、いいか、人はな、必ず死ぬもんじゃ。これは、生き物みんなに平等に訪れる事なんじゃ」
そんなふうに話し始めたおじいちゃんに、私はまた泣いてしまった。
「おじいちゃんの馬鹿……長生きしてほしいのに、なんでそんな事を言うのぉ……」
べそをかく私を優しく見つめて、おじいちゃんは続ける。
「でもな、小花。これは現実じゃ。小花だって、わかってるだろう?」
そりゃあわかっているけど。でも、今それを言われたくなかったなぁ。
私は叔父さんが渡してくれたおしぼりで涙を拭うと、はぁ、と深呼吸した。
「小花、じいちゃんだって、もちろん長生きしたいと思っているし、するつもりだ。いつまでも健康で、千隼や小花、昌央の成長を見ていたいしな。でも、死というものは、いつか必ずやってくる。それが早いか遅いかっていうだけ。この話をしたのは、そういう考え方を、じいちゃんたち真中の人間はしているっていう事を、わかってほしかったからじゃ。まぁ、妖魔から守ってもらっている事は、ありがたいって思っているがな」
おじいちゃんはそう言うと苦笑した。
妖魔、という言葉が出て、私は本当におじいちゃんたちが、妖魔っていうわけのわからないものに狙われているという事を、再認識した。
「ねぇ、どうしておじいちゃんたちが、そんな妖魔とかいう変なのに狙われるの?」
私がそう尋ねると、おじいちゃんは叔父さんと顔を見合わし、
「それは多分……不思議な事ができるからじゃろうな」
と呟くと、爪楊枝を一本手に取り、自分の左の手の甲に、ぷつっと突き刺した。じわりと血が出てくる。
「な、何してるの、おじいちゃんっ」
「そうだぜ、何やってんだよ! 痛いだろっ!」
驚く私とちい兄の前で、おじいちゃんは、
「まぁ、見てろ」
と言うと、爪楊枝で傷つけた左の手の甲に、右手をかざした。
すると、右手がなんとなく淡く光って――おじいちゃんが右手を左手から離すと、そこには先程の爪楊枝で突き刺した傷がなくなっていた。
「どういう事? 傷が消えたよ? 手品? ねぇ、ちい兄、どういう事?」
「あぁ、そういう事か……」
「え?」
驚く私に対し、ちい兄は冷静だった。ちい兄はちらりと叔父さんを見ると、
「叔父さんも、できるのか?」
と問う。
「うん、できるよ。やって見せようか?」
叔父さんはちい兄の問いに笑って頷いて、それから爪楊枝へと手を伸ばそうとするから、私は慌てて止めた。
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