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第3章:四家と妖滅
11・妖気浄化
しおりを挟む「A班、これより、妖気浄化の訓練を行う! 」
そう言った亘先生が私たちを連れて行ったのは、転送先の廊下の突き当りにある階段を二階分降りた、広いフロアだった。
そこにはガラス張りの正方形の部屋が六つ、三つずつくっついて二列に並んでいて、その間にたくさんの機械類が設置されていた。
このフロアの名前は妖滅フロア、部屋の名前は妖滅室って言って、ガラスには特殊な術式がかけられているらしい。そして、一つの部屋の大きさは、一辺が三十メートルなのだそうだ。かなり広い。
「俺たちA班は、ここでひたすら妖気浄化の訓練だ。このガラスの部屋――妖滅室の中に集めた妖気を放出して、ひたすら浄化していく。三つ並んだ真ん中の部屋がフリーだから、訓練にはそこを使う。とりあえず妖気レベル1からやってみようか」
「妖気レベル? そんなのがあるの?」
「あぁ。妖気の放出量って考えたらわかりやすいんじゃないかな。レベル1からレベル10まである。体力測定の時は、危険でないように、レベル1の量のさらに20パーセントの放出量でやってもらってたよ」
なるほど。体力測定の時はすごく簡単で楽しいと思ったけど、レベル1の五分の一の放出量だったのか。だから簡単で楽しかったのかもしれない。
「妖気は、毎日溜まってる。日本全国に仕掛けた術式で集められて、ここに転送されてくる仕組みになっているんだ。それを浄化し続けるのが、A班の役目だから、頑張ろうな」
日本全国から集められて、転送……亘先生はすごく簡単そう説明してくれたけど、きっとすごい仕組みなんだろうなぁ。
そんな事をぼんやり考えていると、
「じゃあ、今日のところは、お前ら一年は、コレでひたすら妖気浄化な」
と言ったちい兄が、体力測定の時に使った水鉄砲を渡してくれた。
「これ、体力測定の時は、すごく楽しかったんだよね。でも、なんでこの水鉄砲で、あの妖気っていうのが消えるの?」
「その水は、簡単に言うと、聖水、いや、霊水って言う方がわかりやすいか。他の班が頑張って作ってくれてるぞ。それを俺たちが吹き掛ける事によって、妖気を浄化する事ができるんだ」
「それって、他の子たちでもできるの?」
そう尋ねると、ちい兄は少し考え込んで、言った。
「できない事もないと思が、俺たちほどの効果はないはずだ。俺らには他の班の奴にない、妖気浄化の霊力があるらしいからな」
「なるほど」
「とにかく、A班の役目は、さっきわたるんも言ってたけど、妖気を浄化しまくる事だから、やってみな。でも、今回は前にやった時の五倍だから、なめてかかるんじゃじゃないぞ。まぁ、危なくなったら、助けに行ってやるけどさ」
「うん、わかった」
私は頷くと、周りの仲間たちへと目を向けた。
渚ちゃん、真紀ちゃん、茉莉花ちゃん、厚くん、武くん――。
みんな私と同じように、水鉄砲を握っている。
「では、一年A組、レベル1妖気浄化開始!」
「はい!」
亘先生の声に返事をした私たち一年A組A班は、黒いモヤモヤ――妖気に満たされていくフリーの妖滅室に向かった。
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