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第3章:四家と妖滅
10・新たな決意
しおりを挟むおじいちゃんや叔父さんの気持ちはわかったけれど、私はやっぱり妖気を少しでも減らし、妖魔を倒して、おじいちゃんたちに安全に暮らしてほしいと考えていた。
そのためには、妖滅の授業をしっかり受けて、そうできるように私が力をつけなければならない。
そして迎えた、妖滅の授業の二回目。
私たち一年A組は、全員ジャージに着替えて、体育館に集まっていた。
「はーい、注目―! じゃあ今からA組特別授業の特別教室に案内するからねー! みんな、学生証を用意してー!」
亘先生にそう言われ、私たちは全員、学生証を取り出した。
「これはB組の生徒には絶対内緒なんだけど、実はこのA組の学生証、特別教室に入るためのパスになっているから、絶対に無くさないようにね! じゃあ、ついてきて!」
一体どういう仕組みになっているんだろうと思いながら、私は自分の学生証を見つめた。
妖滅の授業が始まってから、驚く事ばかりだ。
「この周央学園は、A組用の特別教室に入るための入り口が、いくつか隠されているんだ。この体育館にも、その入り口がある」
亘先生はそう言うと、ステージに向かって歩いて行った。
「この体育館は、ステージに上がる右の階段の下が入り口になってるんだ。ステージと階段の継ぎ目が目印って覚えておいて。で、そこに学生証を当てたら、中に入れるようになるから。ちなみこれは、このパスを持っている子じゃないと入れない術式が組まれているから、別の奴のパスじゃあ中に入れないから、絶対に学生証を失くしちゃ駄目だからね」
亘先生は、自分のカードを私たちに見せながら説明してくれた。
ちなみに教師陣のカードは、職員証らしい。
「じゃあ、俺がやる事を見て、みんなも続いてね~。よっ、と」
亘先生は自分のカードを、体育館のステージに上がる右側の階段の継ぎ目に当てて、消えた。
「え? き、消えたっ!」
驚く私に、
「さぁ、小花ちゃん、私たちも行きましょう」
と渚ちゃんが促す。
どうやら派手に驚いているのは、クラスの中で私だけのようだった。
他のみんなは、この体育館のシステムを知っているみたいだ。
「では、小花ちゃん、お先に行かせていただきますね」
渚ちゃんがそう言って、学生証をステージと階段の継ぎ目にあて、消えた。
どういう仕組みになっているのかはわからないけど、クラスメイトがどんどん先に消えていく。
私も行かなければと、みんなと同じように、ステージと階段の継ぎ目に学生証をあてて……。
「わ」
次の瞬間、私は大人が並んで三人は楽に歩けるような通路に立っていた。
「ここ、どこっ!」
思わず叫んだ私に、
「学園の敷地内のどこかだよ」
と、そばに立っていた亘先生が教えてくれた。
秘密基地みたいだね、と言うと、
「小花さ、ちょっとわくわくしてるんじゃない?」
今の私の気持ちを言い当てられてしまった。
そうなのだ。今の私は、ちょっと楽しいって思ってしまっている。
つい数日前は、衝撃事実を知ってしまい、涙したものの、ちょっと楽しくなってきてしまったのだ。
「遊びじゃないんだけど、楽しめるならそれもいいかもね。同じ事をするのに、辛いよりも楽しい方がいいからさ。でも、怪我をしないように、気を付けて」
亘先生はそう言って私の頭をくしゃくしゃと撫でると、言った。
「さぁて、A班、集合!」
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