53 / 115
第4章:不協和音
13・妖気浄化の仕組み
しおりを挟む「さて、西園寺小花さん。大樹さんからあなたをお預かりしたからには、あなたに妖気浄化の仕組みを教えようと思うのですが、それでよろしいですか?」
だいぶ落ち着いて涙が止まった頃、貴美さんが声をかけてくれた。
「はい、よろしくお願いします!」
「わかりました。まず、ここはモニタールームです。ここでは集めた妖気の管理や、妖気浄化量の分析を行っています」
貴美さんはそう言うと、コンピュータを操作して、大きなモニターに、円グラフと棒グラフを出してくれた。
「昨日の授業で、亘さんが、日本全国に仕掛けた術式で妖気が毎日集められ、ここに転送されている事を説明していましたが、覚えていますか?」
「はい」
「では、まずは円グラフをご覧ください。この円グラフは、現在の妖気量を現しています。六十パーセントが、まだ浄化されていない妖気量、そして四十パーセントが浄化された妖気量を示しています」
「へぇ……」
今、妖滅室では、大樹さん、将成さん、ちい兄が妖気浄化を行っていた。
大樹さんたちが妖気を浄化させるたびに、円グラフの割合は変化して、少しずつ減っていく。
だけど時折、妖気量が増えて元に戻る時があった。
どうしたのだろうと首を傾げると、今現在も日本中に仕掛けた術式で妖気が集まっているのだと貴美さんが説明してくれた。
「このフロアは二十四時間使用可能ですので、今は大樹さんたち若い方々が行っていますが、他の方々……彼らの親世代やそのさらに前の世代が行う時もあります。ここは多くの妖気を貯められるようにはなっていますが、九十パーセントを越えると危険なので、四家の皆さんには、妖気量を十パーセント以下とするのを目標にしていただいています」
常に増え続ける妖気を、常に浄化し続けなくてはいけないという事か。
改めて考えると、妖気浄化ってすごくハードだなと思う。
「そしてこちらが、各四家の妖気浄化量をグラフ化したものです。東西南北のどの家の妖気浄化量が多いかは、ご覧になればわかっていただけるかと思います」
棒グラフには、東、西、南、北と表示され、それぞれ棒のグラフが横に伸びていた。
東西南北の中で、西の棒グラフが圧倒的に短い。
それは、西の……西園寺家の妖気浄化量が圧倒的に少ない事を意味していた。
「今日、西が他家に迷惑をかけていると言われました。それは、これが原因って事ですか?」
私が聞くと、貴美さんは頷いた。
「妖気浄化は四家とその分家で分けて行っていますが、その妖滅量は見ての通りです。一日の妖気量を百とすると、東、南、北が三十強、西が十弱、といったところでしょうか。本来なら、各二十五ずつ行うべきところですが、西ができない分を、他家がカバーしている状態が続いています」
「十パーセントかぁ……」
これじゃあ真紀ちゃんが言っていたように、西が他家に迷惑をかけていると言われても仕方がないのかもしれない。
それに、渚ちゃんが早く四家の手伝いをしたいのだと言っていた意味も理解できた。
だけど、どうして西だけがこんなに妖滅量が少ないのかな?
「あの……どうして西だけが、こんなにも少ないんですか? もう少しできていてもいいと思うんですけど……」
疑問を口にすると、また貴美さんは少し困ったような表情をしたけれど、教えてくれた。
「一番の原因は、単純に、レベル不足、でしょうか……」
「え?」
「妖気浄化にはレベルがあると、昨日も説明したかと思います。東、南、北には高レベルの妖気浄化を行えるだけの人がいますが、西はまだそのレベルではないという事です。もちろん、低いレベルでも回数をこなせば多くの量の妖気浄化を行う事ができますが、それだけの時間も体力もないでしょう……」
「そうか……」
今朝、ちい兄の妖気浄化は、見せてもらえなかった。
レベルが違うというのなら、レベル10を軽々とこなす大樹さんたちの後に妖気浄化を行うのは、確かに嫌だろう。
「西園寺千隼さんも、頑張ってはいます……。彼は負けず嫌いで、責任感が強く、努力家です。だけど、妖滅に関わったのが遅かった。そのため、他の方々と比べると、今はまだ力不足なのです」
ちい兄は十二歳まで、私と一緒に真中家で育った。
そこから西園寺家に引き取られて、現在に至る。
西園寺家に引き取られる前のちい兄は、妖滅の事なんて何もしらなかったはずだから、ちい兄が妖滅に関わったのは、中学生の頃からという事になる。
他の四家や分家の人たちは、もっと子供の頃から妖滅に関わっていたという事らしい。
1
あなたにおすすめの小説
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる