西園寺家の末娘

明衣令央

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第5章:闇

25・夢みたいな事

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 泊まっていったらと、みんなでゆう兄に何度も言ったんだけど、晩御飯を食べた後、ゆう兄は西園寺の家に帰ると言い出した。
 私はゆう兄の腕を掴み、頬を膨らませて、行かないでほしいとアピールをする。
 もっともっとゆう兄と話したかったし、泊まっていってほしいというか、もうここに住んでほしいくらいだった。
 それなのにゆう兄は、どうしても帰るという。

「ごめんね、小花ちゃん。今日、小花ちゃんに真中の家に連れて来てもらえて、おじいちゃんやおばあちゃん、叔父さんや茜さん、それから昌央くんに会えて、僕は本当に嬉しかったよ。しかも泊まっていったらって言ってもらえて、夢みたいだよ。だけどね、僕は今日、西園寺の家に帰ろうと思うんだ」

「どうして?」

「それはね、明日は日曜日だから、麗華と千隼と、三人でここに来たいなぁって思ったからだよ。僕ら四人兄弟で、おじいちゃんたちの料理をわいわい言いながら食べたら幸せだろうなぁって思ったから……だから僕は西園寺家に戻る事にするよ。そして明日、麗華と千隼と三人でここに戻って来るよ」

 ゆう兄は目をキラキラさせてそう言った。

「まぁ、優ちゃん、それはとても素敵な事ね。おばあちゃん、とても楽しみだわ」

 おばあちゃんは大喜びで、おじいちゃんも嬉しそうに頷いている。
 だけど私は、本当にそんな事ができるのか、と考えてしまった。
 ちい兄はともかく、私を嫌っている麗華さんが、ゆう兄とちい兄と一緒にここに来るだろうか?

「大丈夫だよ、小花ちゃん。そんなに不安そうな顔をしないで。僕はちゃんと、麗華と千隼と一緒に、明日ここに来るよ。お兄ちゃんを、信じなさい」

 不安そうにゆう兄を見つめる私の頭を優しく撫でて、ゆう兄は西園寺家に帰って行った。

 だけど、結果としては、ゆう兄たちは翌日の日曜日、真中家に来る事はなかった。
 私もおじいちゃんたちも、みんな楽しみにしていたのだけれど、ゆう兄からもちい兄からも、連絡すらなかったのだ。

「何かあったのかしらねぇ」

 心配そうなおばあちゃんに、私はきっと忙しいんだろうと言っておいた。
 実際、ちい兄は日曜日にも妖気浄化を行っているだろうし、ゆう兄もまた訓練を始めると言っていたから、忙しいのだと思う。
 だけど、あんなに必ずみんなでここに来るって言っていたのに、連絡もない事が、気にかかった。

 ねぇゆう兄、どうして連絡をくれないの?

 私たち兄弟が仲良くするのは、夢みたいな事なのかな?


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