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第6章:不和
6・千隼の謝罪
しおりを挟むドアがノックされる音がした。
動けない私の替わりにおじいちゃんが返事をして、ドアを開ける。
「おお、来たか」
と言っておじいちゃんが私の部屋に招き入れたのは、ちい兄だった。
「ちい兄、来てくれたんだね! ありがとう! ねぇ、ちい兄、みんな大丈夫だった? あれからどうなった? あの妖魔は、みんなでやっつけたの?」
私がそう聞くと、ちい兄は泣き出す一歩手前のような表情になり、言った。
「小花、ごめんな。お前を、ひどい目にあわせて……」
「ちい兄?」
泣き出す一歩手前のようだったちい兄の目からは、涙が溢れていた。
「ちい兄、何言ってるの? 私のこの怪我は、ちい兄のせいじゃないでしょ!」
この怪我は、誰かのせいなどではなく、自業自得みたいなものだ。
だけど、ちい兄は首を横に振った。
「いや、俺のせいだ。俺がもっと、麗華や渚、真紀に気を付けていれば……少なくとも、あいつらをお前から遠ざけていれば、こんな事にはならなかったんだ!」
「ちい兄……」
「俺は今回の事で、自分の無力さを思い知った……。何が、楽しくやろうだ。力も無いくせにそんな事を言って、だから分家に舐められて、大事な妹を傷つけられてっ……。俺なんて、弱いくせに……本当に、俺は何やってたんだっ……」
俯いて、震えながら泣いているちい兄を抱きしめてあげたかったけれど、体を動かせない私には、どうする事もできなかった。
私の替わりにおじいちゃんが、ちい兄の背中を優しく撫でてあげてくれる。
ちい兄がこんなふうに泣くなんて、一体私が意識を失った後に、何があったんだろう?
「千隼、小花はまずは体を治さないといかん。今はあまり、あの日の事は言わんでくれ」
「あぁ、そうだな。悪い、じいちゃん……」
頷いたちい兄は、私を見ると、目が覚めて良かったって笑った。
ちい兄が帰った後、おじいちゃんは私に早く寝るように促した。
私は、あの日の事が知りたかったし、ちい兄だけでなく他のみんなとも会いたかったんだけど、少しでも早く体を治したいというのなら言う事を聞けと言われた。
「お前がもう少し回復したら、ちゃんと一つずつ教えてやる……。じいちゃんも、お前が寝ていた間にいろんな事がありすぎて、整理ができておらんのじゃ」
私が眠っている間に、本当に何があったんだろう。
ものすごく気になるけど……今の私には絶対に教えてくれないだろうから、仕方なしに私は眠る事にした。
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