西園寺家の末娘

明衣令央

文字の大きさ
105 / 115
第6章:不和

8・大樹さんとの再会

しおりを挟む

 みんなは学校に行っているらしく、暇な私は自分の部屋で昌央と遊んでいた。
 私も学校に行きたいけど、まだ包帯だらけミイラみたいだから、しばらくの間はお休みだ。
 私の体は、痛みはなくなって動けるようになったけれど、包帯を解いた下には、まだひび割れたような傷が残っていた。
 痛みがなくなっていたから治ったんだ思っていたんだけど、そう簡単にはいかないみたい。
 おじいちゃんがちょっと泣きそうになりながらも、必ず治してやる、と何度も繰り返してくれた。

「こはな、しゃお、なおす?」

「うーん、おじいちゃんにしてもらおうかなぁ~」

 昌央の申し出を、丁重にお断りする。
 だってね、昌央の治癒は相手に痛みを与えて治すんだよ。
 びちびちと叩かれるくらいならいいんだけど、傷に爪が食い込んだりすると、痛いんだよね。

「こはな、いいの?」

「うん、いいの。ありがとうね」

 昌央はちょっと不服そうだけど、今日のところは諦めてもらった。
 おじいちゃんや叔父さんでも治せそうにければ……最終手段で昌央にお願いしようかな。

「こはな、コンコンしてる」

「え? 本当だね。誰だろう……」

 ドアがノックされている。私がドアを開けると、そこに居たのは大樹さんだった。

「小花っ……目が覚めたんだなっ」

「大樹さんっ!」

「小花、すまなかった……俺のせいで、お前にひどい怪我を……」

 大樹さんは勢いよく頭を下げた。
 それに、俺のせいって何! 私の怪我は、大樹さんのせいじゃないのに!

「だ、大樹さんのせいじゃないでしょ! 頭を上げてください!」

「小花……」

 頭を上げた大樹さんは、首を横に振り、真剣な表情で私を見つめた。

「いや、俺のせいだ。だから小花、俺と結婚してほしい!」

「へっ?」

 今、大樹さんはなんて言った?
 私の聞き間違いでなければ、結婚って言った?

「え? あ、あのっ……どうしてっ……えっと、あのっ……」

 もしかして、大樹さんは私の怪我を自分のせいだって言ってたから、責任を取ろうとしてくれているのかも。
 真面目な人だから、すごく気にしていたのかもしれない。

「私の怪我は、大樹さんのせいじゃないです。だからその……」

 気にしないでください、と続けると、大樹さんは私の手を掴み、首を横に振った。

「小花、誤解をしないでほしいのだが、もちろん、怪我をさせたから責任を取ると言う意味もあるが、俺はお前の事が好きなんだ。その……あの時の事は、覚えていないか?」

「あの時? あ……」

 そうだ、あの日、私は大樹さんに好きだって……愛しているって言われたんだった。
 あの日の大樹さんの告白を思い出すと、また顔がにやけてしまった。
 私の気持ちも大樹さんに伝えたつもりなんだけど……大樹さんにちゃんと伝わっていたかな。

「私の気持ち、あの日、言ったんだよ?」

「あぁ、聞いた……。すごく嬉しかった……だけど、小花があんな事になって……気が狂いそうだった……」

 大樹さんは掴んだ私の手を引いて、私は大樹さんの胸にぽすんと収まった。
 それから、ぎゅっと抱きしめられる。

「小花が生きていてくれて良かった……俺は小花を誰にも渡したくない……例え、真中家や西園寺家が反対したとしても、絶対に認めさせてみせる……。だから……俺と結婚してほしい……」

 大樹さんに抱きしめられながら、真剣なプロポーズにドキドキした。
 嬉しくて……本当に大樹さんのお嫁さんになれたら幸せだなって思って……私は大樹さんを見上げ、よろしくお願いします、と返事をした。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...