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第二章:ベル・ガンドール
28・花婿の本性
しおりを挟む結婚式が終わって着替えが終わると、私はすぐにトマスさんと一緒に、王都オフレンドへと向かう事になった。
安全のため、少しでも日のあるうちに王都へ向かった方がいいからだ。
「ベル、幸せになりなさい」
「はい」
私はギルベルトお父さんや親友たち、そして砦のみんなに別れを告げて、トマスさんが乗ってきた馬車に乗り込んだ。
別れは辛いし、とても悲しい。
だけど、私は王都オフレンドから広範囲の防御魔法を使って結界を張って、ギルベルトお父さんたちを守るんだと思い直し、無理矢理笑顔を作ってみんなに手を振った。
「あら?」
おかしな事が起こったのは、東の森の第一砦を出発して、東と西の森の間にある街道に出てからしばらくした時の事だった。
ぼんやりと窓の外を見ていた私は、王都オフレンドに向かっているはずの馬車が、突然方向を変えて森の中へと入って行った事に気づき、首を傾げた。
東と西の森の間にある街道は、まっすぐに王都オフレンドへと向かっている。
だから、道を間違うという事はあり得ないと思うのだけど、どうしたのだろう?
「あの、どうかしたんですか? 馬車、森の中に入ったみたいですけど……」
トマスさんに聞いてみたけれど、彼はメイドの女性と視線を合わせただけで、私の事を無視した。
東の森の第一砦に居た時と、ずいぶん感じが違う。
彼らの冷たい雰囲気が怖くなってきて、私は自分で自分を抱きしめた。
なんだろう、すごく嫌な予感がした。
馬車は森の中を進んでいる。東の森じゃなく、西の森だ。
「あの、森の中は危険です! 街道に戻った方が……」
そう言ったとき、馬車が止まった。
ほっと息をつくと、目の前に座っていたトマスさんが、ゆっくりと立ち上がる。
どうしたのだろうと首を傾げると、彼は上着の内ポケットから、何かを取り出した。
「え?」
トマスさんが上着の内ポケットから取り出したのは、折り畳み式のナイフだった。
彼はパチンと小さな音を立ててナイフを広げると、私の目の前で薙ぎ払った。
「きゃあっ!」
とっさに体を引いたから眼球が傷つく事はなかったけれど、トマスさんのナイフは、私の右頬から左目の下あたりまでを切りつけた。
「え? ど、どうして?」
わけがわからなかった。
今日は私とトマスさんの結婚式だったというのに。
そして、結婚式を終えて、王都オフレンドに向かっている最中だというのに。
「どうしてって? そんなの、お前に教えてやる必要もないけど、簡単に言うなら、僕と僕の愛する女性のために、お前には消えてもらう必要があるんだよ」
トマスさんーーいや、トマスは、唇の端を釣り上げて醜く笑うと、メイドだと思っていた女性を引き寄せ、口づけた。
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