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第二章:ベル・ガンドール
27・結婚式
しおりを挟むギルベルトお父さんの腕の中で眠り、目覚めた朝は、私の結婚式の日だけど、この砦から離れなければならない日でもあった。
だから、普通の女の子なら結婚ってすごく嬉しいものなのかもしれないけれど、私には辛いだけしかない。
だけど……。
「ベル、とても綺麗だよ。お前は私の自慢の娘だ」
「ありがとう、ギルベルトお父さん……」
花嫁衣裳を着た私を見て、ギルベルトお父さんがとても嬉しそうだったから、良かったと思った。
「初めまして、ベルさん」
「初めまして、トマスさん。これから、よろしくお願いします」
「うん、こちらこそ、よろしくお願いします」
私の結婚相手の人は、オウンドーラ王国の名門、コールド伯爵家の三男の、トマスという人だった。
私は以前、コールド伯爵家の人に、会った事があった。
確か名前はアランさんと言って、自分は次男と言っていたから、このトマスさんのすぐ上のお兄さんという事になる。
王立騎士団に所属していて、東の第二砦を守っていると言っていた。
アランさんはギルベルトお父さんほどではないけれど、王立騎士団に所属しているだけあって、逞しい感じの人だったけれど、弟のトマスさんは身長も低く痩せていて、とても頼りない印象を受けた。
緊張しているのもあるかもしれないけれど、何かあるたびに、連れてきたメイドと思われる女性に視線を送っているのだ。
結婚式の日に、花嫁ではない別の女性を見つめるというのは、どういう事なのだろうと思わなくもないけれど、でも、トマスさんも今回の結婚について、私と同じように戸惑っているのだろうと思うと、仕方ないのかもしれないとも思えた。
ふと、こんなふうに始まる私たちは、今後上手くやっていけるのだろうかと不安になった。
だけど、この結婚はもう決められてしまった事。
今さら取り止めにする事は、多分トマスさんにもできないはずだ。
「トマスさん……この砦で結婚式のお祝いをさせていただき、ありがとうございます」
私はそう言うと、トマスさんに頭を下げた。
砦のみんなの希望で、結婚式はこの砦と王都オフレンドの両方で行う事になっていた。
こちらで結婚式をした後、王都オフレンドの方に移動して、もう一度結婚式を行うのだ。
だから、トマスさんはメイドの女性と馬車の馭者の男性の三人だけで、この砦まで来てくれた
この東の森の第一砦は、魔物の居る東の森の中にある砦だ。
強い傭兵が守っているとはいえ危険な場所なのに、トマスさんはここで結婚式を挙げる事を了承してくれた。
見かけは頼りなさそうに見えるだけで、本当は勇気があってとても優しい人なのかもしれない。
今はまだ私たちは互いにぎこちないけれど、少しずつ距離を縮めていければいいな、と……この時の私は思っていた。
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