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第三章:それぞれの思惑
62・逆恨み
しおりを挟むオウンドーラ王の元に国民たちが押しかけていた頃、コールド伯爵家にも、国民たちが押しかけていた。
オウンドーラ王の元に向かったのは、王の言葉を聞いて安心したいと考えていたものが大半だったが、コールド伯爵家へと向かった者たちは、違っていた。
彼らは東と西の森の砦を守っていた傭兵たちの大切さを理解し、そしてギルベルト・ガンドールに感謝していた者たちだったのだ。
「コールド伯爵! あんたの息子は、ギルベルトさんの娘さんに、なんてひどい事をしたんだ! あんたの息子のせいで、ギルベルトさんたちがこの国から手を引くんだ! 一体どうしてくれるんだ!」
「そうだ、あんたたちは息子を、どんな育て方をしたんだ! 可哀想に、ギルベルトさんの娘さんには、ひどい傷が残っているそうじゃないか! ギルベルトさんが怒るのも無理はない! 全部あんたたちのせいだ!」
コールド伯爵家は、明け方近くまで国民たちから罵声を浴びせられていた。
トマスの父親であるエドモントは、屋敷の扉を閉め、窓を閉め、カーテンを閉めて、体調を崩した妻をベッドに寝かせ、自分は固く目を閉じて耳を塞ぎ、この嵐のような夜が過ぎ去るのを待った。
長男であるウォルトは、三男のトマスにずっと説教をしていた。
お前が全て悪いのだ、お前が花嫁のすり替えなんてするからこんな事になったのだと、トマスは一晩中説教をされ、責められ続けた。
朝を迎え、屋敷を囲んでいた国民たちが居なくなり、ウォルトの説教はやっと終わった。
トマスは解放されて息をついたが、自分だけが責められ続けた事に、納得ができなかった。
昨日の王宮でのやり取りを思い出す限り、最終的にギルベルトたちを怒らせたのは、自分ではなくオウンドーラ王の方だと思うし、自分とベル・ガンドールとの結婚を決めたのは、父親であるエドモンドだった。
確かに、ベル・ガンドールを殺そうとして花嫁のすり替えを行い、ギルベルトを騙して金を騙し取り続けていたのはトマスだが、今回の件は自分だけが悪いわけではないと彼は思っていた。
「あぁ、イライラする! どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!」
一方的に責められ続けたトマスのストレスは、相当なものだった。
「そうだ、僕がこんな目に遭うのは、あいつのせいだ! ギルベルト・ガンドールの娘の、ベル・ガンドールのせいだ! あの女に復讐しなければ気が済まない!」
ストレスの溜まったトマスは、怒りの矛先をベル・ガンドールへと向けた。
屋敷を囲んでいた国民たちの話では、彼女はまだこの王都に居るらしい。
トマスは変装すると屋敷の裏口から抜け出し、ベルが滞在している宿へと向かった。
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