コールド伯爵令息の身勝手な愛は、一国を滅ぼす

明衣令央

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第三章:それぞれの思惑

61・選択

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 東と西の森の砦を守っていた傭兵たちが、オウンドーラ王国から手を引くという噂は、瞬く間に広がった。
 それと同時に、コールド伯爵の三男であるトマスが、ギルベルト・ガンドールの娘を陥れ、花嫁をすり替えて王都オフレンドで暮らしていた事、オウンドーラ王が娘を手に入れてギルベルトたちを脅そうとした事などが、尾ひれがついて広がった。

「ギルベルトさんが居なくなるなんて、今後この王都はどうなるんだ!」

「コールド伯爵のところの息子は、なんて事をしてくれたんだ!」

「オウンドーラ王は一体何をしているんだ!」

「森の中の傭兵が居ないと、どうなるの? 王立騎士団が居るのに、何の問題があるの?」

「みんな、王様と傭兵と、どっちを信用しているんだ!」

「この国がどうなるのか、王様に聞けばいいんじゃないか?」

 国民たちの反応は様々で、全く心配していない者も居たが、多くの国民たちは王宮とコールド伯爵家に押しかけた。

「オウンドーラ王、ギルベルトさんたち傭兵が居なくなったとしても、この国は大丈夫なのか? 本当の事を聞かせてください!」

 押し寄せる国民たちに、王は問いに答えるしかなかった。

「私の国民たちよ! 傭兵たちが何を言ったかは知らんが、全て奴らがついた嘘だ! 惑わされてはいけない! そして、何も心配する事はない! 嘘つきな傭兵たちが居なくても、この国は大丈夫だ! 何故なら、私たちには、王立騎士団が居るからだ!」

 オウンドーラ王は、王宮のバルコニーから、高らかに言い放った。

「傭兵の代わりは、いくらでも居る! 我こそはと思う者は、王宮へと来い! 多額の給金で雇ってやろう!」

 王の話を信じた国民から、わぁ、と歓声が上がる。
 彼らは、何も心配する事はないのだと安心し、自分たちを安心させてくれたオウンドーラ王を尊敬し、彼に感謝した。

 だがその一方で、オウンドーラ王の言葉を信じられない者たちは、今後自分たちがどうするべきかを真剣に考えていた。

 ギルベルトたちが居れば、魔の森を抜けて森の向こう側に出る事はできるだろう。
 だが、今の生活を捨てて森の向こうに出て、どうすればいいのか?
 新たな土地を求めてさ迷い歩くのか?
 新たな土地での生活は、どう暮らしていけばいいのか? 不自由な生活で苦労するのではないのか?
 それなら、このまま王都で暮らしていけばいいのではないか?

 盲目的に王を信じられる者たちは、良かった。
 だが、古くからこの地に居る者は、東と西の森にある砦の重大さを理解していた。

「このままこの国に居れば、間違いなく死んでしまう!」

 何があっても生きていこうと思い切った者たちは、二日後の傭兵たちの出立に合わせて、王都オフレンドを出る用意を始めた。
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