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第1章:二度目の恋と初恋と
5・今はまだ好きって言えない
しおりを挟むもしも自分と彼女が同級生であったなら、尊はすぐにでも彼女に告白していた事だろう。
だが、自分は教師であり、彼女は自分の生徒だった。
尊は彼女に恋する一人の男ではあるが、彼女を導く教師でもあるのだ。
灯里の事を好きだが、今はそれを彼女に告げるわけにはいかない。
自分の教師という立場と彼女の将来を考え、尊はそう結論づけた。
そして、それからはずっとただの担任の教師として彼女に接し続けているのだが、内心は毎日ヒヤヒヤしていた。
もしも、灯里の前に誰かいい男が現れたらどうしよう、今は自分を好きで居てくれているものの、彼女が別の男を好きになったらどうしようと。
それに、おっとりとしていて自己評価の低い灯里は自分の魅力に気付いていないようだが、彼女は非常に高いスペックを兼ね備えているため、非常にモテるのだ。
彼女の周りには、彼女に告白しようとその時を狙っている男子生徒が大勢居るのを尊は知っている。
彼女にその告白がなされないのは、小学校から灯里と仲が良い大塚正志と岸本卓也が灯里の近くに居るからだった。
二人は尊のクラスの生徒ではないのだが、まるで無防備な灯里を守る親鳥のように、彼女を狙う男共から灯里を守ってくれている。
まぁそれは、時には尊にも適用され、尊をイラッとさせる事にもなるのだが、正直な話、尊には自分の目が届かないところで灯里を守ってくれる正志と卓也の存在は、とてもありがたいものだった。
だが、正志や卓也でも太刀打ち出来ない相手というのも、灯里の周りには存在している。
灯里の父親が経営する会社と並ぶ大会社の御曹司が、灯里の父親に彼女との結婚を申し込んでいるのだと、聡が言っていた。
もちろん灯里は嫌がり、灯里の父親も灯里に負い目があるからか断ったらしいのだが、パーティなどのイベント事で灯里が呼び出されると必ず口説きに来るだけでなく、最近では家の近くや学園の周りにも姿を現すようになっているらしい。
問題の男は聡と同じ年で、見かけはスラリとした美青年らしいが、彼の灯里に対する執着心が普通ではないようなのだと聡は続け、尊は聡に自分も気をつけておくと約束した。
子供の頃から一途に健気に自分を想ってくれている可愛い灯里に、おかしな奴を近づけてなるものかと思う。
「素敵な女の子に育っちまうから、変な奴に目ぇ付けられるんだよ……」
だけど、彼女は自分の言葉のまま、尊の理想を目指して成長した。
「今はまだ、好きって言えねぇけどさ……」
自分が彼女の先生でなくなったら、彼女が自分の生徒でなくなったら。
「好きって、必ず言うから……」
そう呟き、尊は苦笑した。
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