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第1章:二度目の恋と初恋と
4・過去の出会いと恋の始まり
しおりを挟む「俺、なんかそういう話を知ってるっつうか……覚えがある、かも……」
そう呟き、尊は聡の顔を見つめた。
「俺、十年くらい前に、この辺りで女の子に会った事がある。もしかしてそれって……」
「灯里様か? 本当に? 尊、お前、その時に灯里様に何と声をかけてくれたのだ?」
聡は喜んだが、尊は混乱した。
十年前、確かに尊は失恋後の自分探しの旅でこの辺りを訪れた事があり、そこで一人の少女に出会った。
だがそこで自分は彼女に何を言った?
「え? あーっ!」
尊は自分の言葉を思い出すと、赤面した。
「尊、どうした? お前、灯里様に何と言って差し上げたのだ?」
「え、えとっ……」
少し考えて、尊は首を横に振った。
聡は灯里を本当の妹のように、大切に想っているようだ。
その彼に、尊は自分の過去の言葉を告げる事は躊躇われた。
「そ、それはっ……俺があいつにだけ贈った特別な言葉だから、聡に教える事は出来ねぇよ」
そう言って何とか誤魔化そうとすると、聡はじろりと尊を睨みつけたが、仕方ないなと引き下がってくれた。
「あと、この事は、あいつには黙っててくんねぇかな」
「わかった……。お前も今や教師だ。特別扱いは出来ないという事だな」
「あぁ」
頷きほっと息をつくと、尊は灯里の事を想う。
彼女は尊を、「昔から好き過ぎて」と言った。
そして聡が教えてくれた「魔法の言葉をくれた人が居て、その人が言った通りの自分になりたい」という事。
この事が本当なら、彼女は本気で一度会ったきりの尊の事が好きで、尊があの日ホンの思いつきで言った言葉通りに成長した事になる。
あの日、尊は暗く沈んだ少女を励ますために、こんな事を言った。
『どうなればいいのかわからないならさ、俺が一つ提案してやるよ。あのよ、お前は大人し過ぎる感じだけど素直な女の子みたいだから、それをそのまま伸ばせばいい。そして、学校に行って友達作れ。たくさんじゃなくてもいいんだ。少なくても、お前のいいところをわかってくれる友達を作るんだ。大丈夫だ、絶対出来るからさ。で、勉強嫌いな俺が言うのもアレなんだけど、勉強はそれなりに出来たほうがいいぞ。将来何をするにしても、出来る事が増えてくからさ』
ここまでは普通だ。
尊は少女を――子供の頃の古城灯里を、普通に励ました。
だが、問題はここから先だった。
あの日の尊は、失恋したばかりの自分も慰めるために、こんなふうに続けたのだ。
『そんでさ、優しくて可愛い女の子になれ。料理とか出来てさ、お菓子作りとかも上手いの。あとはそうだな……お前はすごく綺麗な髪の毛をしてるから、伸ばしてみたらどうだ? サラッサラの長い髪の毛とか、スゲーいいと思う。んでよ、おっぱいはでかくて、腰がキュッと細いナイスバディで、そんで、俺の事だけ、ずっと好きで居てくれるの』
己の言った事を全て思い出し、尊はさらに赤面した。
あの時は失恋したばかりで、いつかは自分にも自分だけのお姫様が現れるさ、そして俺の理想のお姫様はこんな感じなのだと、己の新しい理想のタイプを彼女の前で熱く語ってしまったのだ。
十七歳になった灯里は、今では心を許せる友達を作り、学校の成績はトップクラスだ。
まだ大人しい性格ではあるものの、素直に優しく成長し、料理もお菓子作りも上手い。
十年前はおかっぱのショートカットだった髪は、今では長く美しく伸びてサラッサラで、胸は大きく腰はキュッとくびれたナイスバディという、尊の言葉通りの少女に成長した。
そして……。
『わ、私は、先生の事が嫌いなんじゃありませんっ! わ、私は昔からずっと先生の事を好きで、大好きで、大好き過ぎて、だ、だから緊張して、嬉しくて気絶しちゃうんですっ!』
そして、灯里は尊の事が好きなのだと言う。
昔からずっと、一度会ったきりの尊の事を好きなのだと言う。
「マジか、古城……」
この日から、尊は古城灯里という少女を意識し始めた。
というか、十年前の自分の思いつきのままに成長した一途で健気な彼女に、尊は転がるように恋に落ちたのだ。
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