僕の二度目の恋と彼女の初恋は、卒業式まで実らない

明衣令央

文字の大きさ
5 / 43
第1章:二度目の恋と初恋と

4・過去の出会いと恋の始まり

しおりを挟む


「俺、なんかそういう話を知ってるっつうか……覚えがある、かも……」

 そう呟き、尊は聡の顔を見つめた。

「俺、十年くらい前に、この辺りで女の子に会った事がある。もしかしてそれって……」

「灯里様か? 本当に? 尊、お前、その時に灯里様に何と声をかけてくれたのだ?」

 聡は喜んだが、尊は混乱した。
 十年前、確かに尊は失恋後の自分探しの旅でこの辺りを訪れた事があり、そこで一人の少女に出会った。
 だがそこで自分は彼女に何を言った?

「え? あーっ!」

 尊は自分の言葉を思い出すと、赤面した。

「尊、どうした? お前、灯里様に何と言って差し上げたのだ?」

「え、えとっ……」

 少し考えて、尊は首を横に振った。
 聡は灯里を本当の妹のように、大切に想っているようだ。
 その彼に、尊は自分の過去の言葉を告げる事は躊躇われた。

「そ、それはっ……俺があいつにだけ贈った特別な言葉だから、聡に教える事は出来ねぇよ」

 そう言って何とか誤魔化そうとすると、聡はじろりと尊を睨みつけたが、仕方ないなと引き下がってくれた。

「あと、この事は、あいつには黙っててくんねぇかな」

「わかった……。お前も今や教師だ。特別扱いは出来ないという事だな」

「あぁ」

 頷きほっと息をつくと、尊は灯里の事を想う。
 彼女は尊を、「昔から好き過ぎて」と言った。
 そして聡が教えてくれた「魔法の言葉をくれた人が居て、その人が言った通りの自分になりたい」という事。
 この事が本当なら、彼女は本気で一度会ったきりの尊の事が好きで、尊があの日ホンの思いつきで言った言葉通りに成長した事になる。
 あの日、尊は暗く沈んだ少女を励ますために、こんな事を言った。

『どうなればいいのかわからないならさ、俺が一つ提案してやるよ。あのよ、お前は大人し過ぎる感じだけど素直な女の子みたいだから、それをそのまま伸ばせばいい。そして、学校に行って友達作れ。たくさんじゃなくてもいいんだ。少なくても、お前のいいところをわかってくれる友達を作るんだ。大丈夫だ、絶対出来るからさ。で、勉強嫌いな俺が言うのもアレなんだけど、勉強はそれなりに出来たほうがいいぞ。将来何をするにしても、出来る事が増えてくからさ』

 ここまでは普通だ。
 尊は少女を――子供の頃の古城灯里を、普通に励ました。
 だが、問題はここから先だった。
 あの日の尊は、失恋したばかりの自分も慰めるために、こんなふうに続けたのだ。

『そんでさ、優しくて可愛い女の子になれ。料理とか出来てさ、お菓子作りとかも上手いの。あとはそうだな……お前はすごく綺麗な髪の毛をしてるから、伸ばしてみたらどうだ? サラッサラの長い髪の毛とか、スゲーいいと思う。んでよ、おっぱいはでかくて、腰がキュッと細いナイスバディで、そんで、俺の事だけ、ずっと好きで居てくれるの』

 己の言った事を全て思い出し、尊はさらに赤面した。
 あの時は失恋したばかりで、いつかは自分にも自分だけのお姫様が現れるさ、そして俺の理想のお姫様はこんな感じなのだと、己の新しい理想のタイプを彼女の前で熱く語ってしまったのだ。

 十七歳になった灯里は、今では心を許せる友達を作り、学校の成績はトップクラスだ。
 まだ大人しい性格ではあるものの、素直に優しく成長し、料理もお菓子作りも上手い。

 十年前はおかっぱのショートカットだった髪は、今では長く美しく伸びてサラッサラで、胸は大きく腰はキュッとくびれたナイスバディという、尊の言葉通りの少女に成長した。
 そして……。

『わ、私は、先生の事が嫌いなんじゃありませんっ! わ、私は昔からずっと先生の事を好きで、大好きで、大好き過ぎて、だ、だから緊張して、嬉しくて気絶しちゃうんですっ!』

 そして、灯里は尊の事が好きなのだと言う。
 昔からずっと、一度会ったきりの尊の事を好きなのだと言う。

「マジか、古城……」

 この日から、尊は古城灯里という少女を意識し始めた。
 というか、十年前の自分の思いつきのままに成長した一途で健気な彼女に、尊は転がるように恋に落ちたのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

処理中です...