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第2章:オトメゴコロとオトコゴコロ
4・灯里にないのは積極性
しおりを挟むある日の事。
調理実習で作ったカップケーキを、持ってきたラッピング袋に入れて、灯里は考え込んでいた。
これ、どうしよう。
調理実習で作ったものは、自分で食べても誰かにあげても構わないので、灯里は今までは、子供の頃から仲の良かった大塚正志と岸本卓也にあげていた。
だけど、今回は他にも渡したい人がいた。
「正志くんの分と、卓也くんの分……」
灯里の目の前には、カップケーキを二つずつ入れた袋が三つ……。
正志と卓也には今まで通りあげるつもりだ。
問題は、あと一つの袋だ。
「どうしようかな……」
灯里はぽつりと呟いて、周りの女子生徒たちを見つめた。
「ねぇねぇ、尊くんにあげに行く?」
「もちろん、尊くんにあげようよ!」
他の女子生徒たちはみんな先程調理実習で作ったお菓子を、尊にあげるつもりらしい。
彼女たちの手には、灯里と同じようにラッピングされた袋があった。
今回調理実習で作ったものは、お菓子、だ。
お菓子であれば何を作っても良かった。
灯里が作ったのはカップケーキだったが、クッキーを焼いた子、マドレーヌを焼いた子、いろいろ居る。
「あ、尊くん発見! 行こう!」
女子生徒たちはいっせいに移動し始めた。
灯里は彼女たちが向かった先に、尊の姿を見つける。
灯里も、彼にカップケーキを渡したかった。
「尊くーん、はい、これ!」
「尊先生、これ食べて~」
尊は周りを囲む女子生徒一人一人から、お菓子を受け取っていた。
先程の調理実習は、女子だけの二クラス合同の授業だったから、同じクラスの女子だけでなく別のクラスの女子も居る。
これは、尊がこの学園に来てから調理実習があるたびに目にする光景だった。
尊は全学年の女子から好かれていた。
正確に言えば、女子だけじゃない。
明るくさわやかな彼は、男女問わずこの学園に赴任してきたときから人気があった。
「あ……」
尊の両腕は、あっという間に女子生徒からもらったお菓子でいっぱいになってしまった。
灯里は自分が持っていたカップケーキの入った袋を見つめた。
あんなに貰ったのだから、今から灯里が渡しても迷惑なだけかもしれないと思う。
それに、お菓子を渡し終わったはずなのに、女子生徒たちはまだ尊を囲んでお喋りをしていた。
これでは彼に近づく事が出来ない。
「お、おい、そろそろ次の授業だぞ?」
尊の困ったような声が聞こえた。
あぁ、そうだ。そろそろ次の授業が始まると灯里は思った。
尊は早く職員室か体育教官室へ戻りたいのかもしれない。
ということは、灯里にはもうカップケーキを尊に渡す時間がないという事だ。
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