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第5章・ゴブリン・デスマーチ
ゴブリン・デスマーチの行先
しおりを挟む「全く、アントニオの野郎、お嬢ちゃんを人質にするなんてな……」
ガエールとの通信を切ったゴムレスは、深い息をついた。
そのせいでユリウスが怒り、今回の件からは手を引くと言っているらしい。
ユリウスの実力を考えれば手を引かれるのは大きな痛手だが、ゴムレスは仕方がないと諦めることにした。
ユリウスは……いや、ユリウスたちは、すでに今回の件では、十分に働いてくれていた。
ユリウスは一人で一万体のゴブリンと戦い、ゴブリン・スタンピードを止めてくれたし、オリエは大量のポーションを作って、提供してくれた。
小さなハリネズミだって、ゴブリンホイホイという残念すぎるスキルで、四方八方に飛び出したゴブリンを、ユリウスが待つ場所へと呼び寄せてくれたという。
だから彼らに、これ以上を望んだりしてはいけないのだ。
「さぁ、次は俺たちが頑張る番だ!」
ゴムレスがそう言うと、拍手する者がいた。
拍手をしていたのは、スタイリッシュ・アーマーという店の店主であり、ゴムレスの右腕である、商都ビジードの冒険者ギルドの副ギルドマスターである、ジルの恋人であるリュシーだった。
女のような話し方をするが、Bランクに届く実力の冒険者でもある。
「そうだね、次はアタシたちが頑張る番だ。ユリウスたちだけに任せておくべきじゃない。だってここは、アタシたちの街なんだから!」
「あぁ、そうだ。ここは俺たちの街だ。だから、俺たちの力で守ろう! リュシー、お前にも力を貸してもらうぞ!」
「わかったよ! ユリウスたちだけにいいカッコをさせてられないからね!」
そう言ってウインクするリュシーを見て、ゴムレスは笑った。
緊張して強張っていた体から、少し力が抜けたような気がした。
「もちろん、私も手伝います。後方支援は任せてください!」
「俺だって力になるぜ! アルバトスから貰った設計図で作った、爆弾だってあるからな!」
ローレンスとクラウドもそう言って笑った。
二人と、そしてアルバトスは、ゴムレスにとって信頼できる親友だ。
ユリウスはもう協力しないと言っていたが、アルバトスは天才と呼ばれるその知恵を貸してくれた。
俺には頼りになる仲間たちが居る。
だからきっと何とかなるはずだ。
「でも、オリエちゃんが無事で良かったよ。本当に、そう思う……。だってあの子はアタシの親友の、大事な大事な奥さんだからさ」
「えぇ、そうね、リュシー。本当に良かったわ」
リュシーの隣に居たジルも頷いた。
二人を見ながら、ゴムレスは二人が結婚すると言っていたことを思い出す。
今回のことが落ち着いたら、盛大に祝ってやろう。
そして、どうか寿退職はやめてくれと、二人に頭を下げなければならない。
ジルはこの商都ビジードの冒険者ギルドの副ギルドマスターで、自分の右腕だ。
この冒険者ギルドには、まだまだ彼女が必要なのだ。
「まずは奴らの動きを確認する! ジル! 斥候にゴブリン・デスマーチを見張らせろ! だが絶対に手を出すなと指示をするんだ!」
これはアルバトスが言っていたことだった。
ゴブリン・デスマーチのゴブリンたちは、オブリールを目指しているから、こちらから手を出さない限り、襲いかかってこないはず。
だからゴムレスは、斥候にゴブリン・デスマーチのゴブリンたちの動きだけを探り、報告するように指示を出した。
同時に商都ビジードに残る冒険者たちを集め、ビジードの守りを固める。
そして数時間後――。
ゴブリンたちは一体も乱れることなく同じ方を向き行進を続け、ビジードに目もくれずに通り過ぎた。
とりあえずは良かったと胸を撫で下ろしたものの、あの統率の取れたゴブリンの軍隊が向う先のことを考えると、ゴムレスは背筋がゾッとした。
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