異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

文字の大きさ
357 / 370
第5章・ゴブリン・デスマーチ

ゴブリン・デスマーチの行先

しおりを挟む


「全く、アントニオの野郎、お嬢ちゃんを人質にするなんてな……」

 ガエールとの通信を切ったゴムレスは、深い息をついた。
 そのせいでユリウスが怒り、今回の件からは手を引くと言っているらしい。
 ユリウスの実力を考えれば手を引かれるのは大きな痛手だが、ゴムレスは仕方がないと諦めることにした。

 ユリウスは……いや、ユリウスたちは、すでに今回の件では、十分に働いてくれていた。
 ユリウスは一人で一万体のゴブリンと戦い、ゴブリン・スタンピードを止めてくれたし、オリエは大量のポーションを作って、提供してくれた。
 小さなハリネズミだって、ゴブリンホイホイという残念すぎるスキルで、四方八方に飛び出したゴブリンを、ユリウスが待つ場所へと呼び寄せてくれたという。
 だから彼らに、これ以上を望んだりしてはいけないのだ。

「さぁ、次は俺たちが頑張る番だ!」

 ゴムレスがそう言うと、拍手する者がいた。
 拍手をしていたのは、スタイリッシュ・アーマーという店の店主であり、ゴムレスの右腕である、商都ビジードの冒険者ギルドの副ギルドマスターである、ジルの恋人であるリュシーだった。
 女のような話し方をするが、Bランクに届く実力の冒険者でもある。

「そうだね、次はアタシたちが頑張る番だ。ユリウスたちだけに任せておくべきじゃない。だってここは、アタシたちの街なんだから!」

「あぁ、そうだ。ここは俺たちの街だ。だから、俺たちの力で守ろう! リュシー、お前にも力を貸してもらうぞ!」

「わかったよ! ユリウスたちだけにいいカッコをさせてられないからね!」

 そう言ってウインクするリュシーを見て、ゴムレスは笑った。
 緊張して強張っていた体から、少し力が抜けたような気がした。

「もちろん、私も手伝います。後方支援は任せてください!」

「俺だって力になるぜ! アルバトスから貰った設計図で作った、爆弾だってあるからな!」

 ローレンスとクラウドもそう言って笑った。
 二人と、そしてアルバトスは、ゴムレスにとって信頼できる親友だ。
 ユリウスはもう協力しないと言っていたが、アルバトスは天才と呼ばれるその知恵を貸してくれた。
 俺には頼りになる仲間たちが居る。
 だからきっと何とかなるはずだ。

「でも、オリエちゃんが無事で良かったよ。本当に、そう思う……。だってあの子はアタシの親友の、大事な大事な奥さんだからさ」

「えぇ、そうね、リュシー。本当に良かったわ」

 リュシーの隣に居たジルも頷いた。
 二人を見ながら、ゴムレスは二人が結婚すると言っていたことを思い出す。
 今回のことが落ち着いたら、盛大に祝ってやろう。
 そして、どうか寿退職はやめてくれと、二人に頭を下げなければならない。
 ジルはこの商都ビジードの冒険者ギルドの副ギルドマスターで、自分の右腕だ。
 この冒険者ギルドには、まだまだ彼女が必要なのだ。

「まずは奴らの動きを確認する! ジル! 斥候にゴブリン・デスマーチを見張らせろ! だが絶対に手を出すなと指示をするんだ!」

 これはアルバトスが言っていたことだった。
 ゴブリン・デスマーチのゴブリンたちは、オブリールを目指しているから、こちらから手を出さない限り、襲いかかってこないはず。
 だからゴムレスは、斥候にゴブリン・デスマーチのゴブリンたちの動きだけを探り、報告するように指示を出した。
 同時に商都ビジードに残る冒険者たちを集め、ビジードの守りを固める。

 そして数時間後――。
 ゴブリンたちは一体も乱れることなく同じ方を向き行進を続け、ビジードに目もくれずに通り過ぎた。
 とりあえずは良かったと胸を撫で下ろしたものの、あの統率の取れたゴブリンの軍隊が向う先のことを考えると、ゴムレスは背筋がゾッとした。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...