異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第5章・ゴブリン・デスマーチ

神に選ばれた存在

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「ジュニアス王子、ノートン様、ゴブリンたちについてのご報告です!」

 今世のルリアルーク王であるという宣言式が終わり、ホーンハットという魔人に攻撃を受けた数時間後、ジュニアスは側近のノートンと共に、ゴブリンの報告を受けていた。
 ホーンハットの攻撃を受けた直後、ネーデの森からゴブリンの大群が四方八方へと飛び出してきた。
 その数、約一万体――。
 だがその一万体のゴブリンは、どういうわけか突然方向を変え、同じ方向へと走り出し、誰かに討伐されたらしい。
 誰が討伐したかまでは調べられなかったが、都合の良いことが起こったものだ。
 やはり自分は神に選ばれた存在なのだとジュニアスは思う。

 だが、ゴブリンの問題はそれで終わりではなかった。
 一万体のゴブリンは誰かに討伐され、ゴブリン・スタンピードは終結したようだが、今、約三百体のゴブリンが、まっすぐに王都オブリールに向かって行進を続けているらしい。
 ゴブリン三百体の内訳は、上位種のゴブリンが約三百と、ゴブリンジェネラルが二体、そしてゴブリンキングだった。

「ノートン、王都オブリールの現在の戦力は、どれくらいだ?」

「そうですね……すぐに動かせるのは、騎士団と兵士を合わせて、五千というところでしょうか。それから、今世のルリアルーク王への元へと集まった冒険者が、五百人ほど……」

「では、合計五千五百か。相手が上位種のゴブリンとゴブリンジェネラル、そしてゴブリンキングだとしても、それだけ居れば余裕だろう。もちろん、俺やジュンも出るからな」

 矛の聖女と呼ばれている異世界から召喚したジュンは、強力な火魔法を使うところから、今は炎の戦女神とも呼ばれている。
 自分の得意な風魔法と合わせれば、広範囲にダメージを与えられるだろう。

「それにしても、ゴブリン・スタンピードと、デスマーチとはな。規模が大きくなりすぎだ。エミリオがしくじったのだろうな」

 報告に来た兵士を下がらせた後、ジュニアスはノートンに言った。
 異母弟であるエミリオを、母親であるソフィアを人質にして、黒魔結晶をばら撒く計画へと引き込んだジュニアスは、彼にガエールやベルゼフ王国に近い場所で、黒魔結晶をばら撒かせた。
 ジュニアスの予定では狂暴化した魔物たちはガエールか、国境を越えてベルゼフ王国を襲うはずだった。
 だがエミリオがゴブリンに黒魔結晶を与えたせいで上位種へと進化し、恐らくホーンハットに利用されてこの王都オブリールに攻め入ろうとしている。

「エミリオはどうなったのだろうな」

「おそらく、亡くなられたのではないかと……」

「このゴブリンの規模を考えれば、そうだろうな。まぁ、いずれ始末をするつもりだったから、問題はない。エミリオが捕まったときのことを考えて、黒幕をアルバトスにするよう裏工作もしていたが、今ではすべてをあのホーンハットとかいう魔人が引き受けてくれた。なんとも都合が良いことだ。これも、俺が選ばれた存在だからかもしれないな」

 そう言って笑うと、ノートンも頷いて笑った。
 エミリオのことを誰かに聞かれたとしても、今回のゴブリンの件で死んでしまったと報告すればよいだろう。
 エミリオのことを心配しているのは、母親のソフィアくらいだろうが。

「ソフィアは、どうしている?」

「そうですね、最近はナディア様の近くで見かけることがありますが……」

 父王の側室であり、エミリオの母親であるソフィアの、このオブルリヒトの王宮での立場は低い。
 王宮での立場が低いもの同士、仲間意識でも芽生えたのかもしれないと思う。

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