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第5章・ゴブリン・デスマーチ
癒しの雨
しおりを挟む「うおぉぉぉっ!」
高ランクの冒険者が連続で大技を繰り出し、冒険者たちは二体のゴブリンジェネラルを倒すことができた。
だが彼らには、ゴブリンキングの元へ向かう力は残されていなかった。
冒険者たちがなんとか二体のゴブリンジェネラルを倒し、生き残ることができたのは、ビジードやガエールの商人が用意してくれたポーションのおかげだった。
ビジードとガエールの商業ギルドから依頼されたと言って、王都に居る冒険者たちをわざわざ訪ね、格安でポーションを売ってくれたのだ。
今回の戦いで使用してわかったことだが、売ってもらったポーションは、低級は中級、中級は上級というように、一つ上のポーションの効果があった上、防御力まで上昇したのだ。
だが、もう彼らの手にそのポーションはなかった。ゴブリンジェネラルとの戦いで、使い切ってしまったのだ。
だから彼らにはもうゴブリンキングへと向かう力は残っておらず、冒険者たちはある者は地面に伏し、ある者は座り込んで、そのまま立ち上がることができなかった。
「暑い、な……」
地面に仰向けに倒れた冒険者の一人が、呟く。
恐らく他の冒険者も同じことを思っているだろう。
誰もがゴブリンジェネラルとの戦いで、全力を出し切った。
雨でも降れば、この火照ったからだを冷ますことができるのにと思う。
「お疲れ様」
誰かの声が聴こえた。若い女の声だった。
だが、ここは戦場――何故、と思う。
もちろん冒険者の中には女も居るが、今回の戦いではほとんど見かけなかった。
声がした方へと顔を向けると、長い黒髪の女が居た。
だが、仮面をつけていて、どんな顔をしているのかまではわからない。
女は持っていた長い杖でカツンと地面を叩くと、
「癒しの雨よ、傷ついた人々を癒したまえ……」
と優しく落ち着いた声で言った。
すると霧雨のような優しい雨が降ってきて、傷つき火照った体を望み通りに冷やしてくれる。
「どういうことだ?」
優しい雨はただ体を冷やしてくれるだけではなく、回復させてくれていた。
周りで倒れている冒険者や兵士たちも、生き残った者は少しずつ回復しており、これならまた戦えるかもしれないと、立ち上がろうとする者も居た。
「もう大丈夫です……。もう戦わなくてもいいの。どうか、休んでいてください……」
癒しの雨を降らせた女が、静かに言う。
「だが、まだゴブリンキングが残っているんだ! 動けるようになったなら、ゴブリンキングを止めないと!」
「大丈夫です……きっとすぐに終わるでしょう……」
だからあなたたちは、身体を休めてください。
女はそう続けると、現れたときと同じように、突然消えてしまった。
「聖女みたいだな……」
不思議な女の姿を見た者は、誰もがルリアルーク王の物語に出てくる聖女を思い出していた。
だが彼女が言った、「すぐに終わる」というのは、どういう意味だったのだろう?
己がルリアルーク王だと宣言したジュニアスは、連れてきた兵士も冒険者も見捨てて逃げてしまった。
自分たち冒険者が戦えない今、あのゴブリンキングをどうにかできる者など、居ないはずなのに。
「何の音だ?」
少し離れた場所で、誰かが戦っているような音が聞こえた。
もしかすると、ビジードやガエールから援軍が来たのだろうか?
回復した者たちが戦っている音がする方向へと目を向けると、まるで物語からそのまま飛び出してきたような、一目でルリアルーク王だとわかる男が、ゴブリンキングと戦っていた。
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