異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第1章・異世界転移と異世界転生

偽物と本物②

「オリエさん」

「は、はいっ……」

 アルバトスさんに呼ばれ、私は顔を上げてアルバトスさんを見た。
 俯いていたアルバトスさんは顔を上げると、真剣な表情で私を見つめ、言った。

「オリエさんは、元の世界に戻りたい、という事でいいですか? あなたは、元の世界に戻りたいと言っていましたよね?」

「そりゃあ、そうですけど。でも……」

 でも、魔力の関係で、それは次の満月までできないという話だったはずだ。
 それを言うと、「確かに」とアルバトスさんは頷いた。

「確かに、術を発動するための魔力が足りないので、あなたがこの世界に来た時と同じように、満月の魔力を利用するしかないと思っていました。ですが、オリエさんのその魔力を使わせていただければ、次の満月を待たずにできると思います」

「え?」

「足りなかったのは、術を発動する際の魔力だけですからね。だから、それさえクリアできるのなら、二、三日中に準備できると思います。まぁ、私の足りない魔力の補充分として、あなたには大量の魔結晶を作ってもらわなければなりませんが」

「魔結晶……」

 確か魔結晶って、この世界のコンロやオーブンの動力源だったよね。
 電池替わりに使って、魔力のチャージもできるって言っていた物。
 それを、私が作るの? 私に作れるの?

「オリエさん、あなたが元の世界に戻りたいと思っているのなら、急いだ方がいいです。元の世界のあなたの命が尽きる前に、というのもありますが、あなたが本物の聖女だという事が、今回の聖女召喚に関わった者に知られたら、あなたはもう元の世界に戻る事はできません……」

「え? どうして、ですか?」

 驚く私に、「確かにね」と、ユーリが頷いた。

「でも、この国の人たちは、あの若くて綺麗な女の子が聖女だって言ってたし……」

「確かに、最初はそう思い込んでいたのでしょう。だけど、近いうちに誰かが必ず気づくはずです。今は聖女だともてはやされている女性が、聖女ではない事に。そして同時に、あなたが本物の聖女である可能性に気づくのです」

「え?」

「あなたが魔法を使える事は、オブルリヒトの兵士が証言するでしょう。あなたは彼らの目の前で、サーチートくんをヒールで治したのですから。その報告を聞いたジュニアス王子かノートンは、あなたこそが本物の聖女だったのではないかと考えるはずです」

「そんな……」

「あなたが本物の聖女である可能性に気づけば、ジュニアス王子たちは、ここに確かめに来るはずです。彼は、私たちがあなたを預かっている事を知っていますから。そして彼らがここに来れば、あなたが聖女だという事が彼らに知れてしまうでしょう。何故なら、何人もの医師や魔術師、賢者でも消す事ができなかったあの呪いの毒が、私とユーリの体から消えているのですから。あなたが本物の聖女である事を知った彼らは、あなたを連れて行くでしょう。そうしたらもう、元の世界に戻る事はできません」

 アルバトスさんの説明はわかりやすかったけれど、私にはどうしても信じられなかった。
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