38 / 370
第1章・異世界転移と異世界転生
お別れの前に②
しおりを挟む森の中をぼけっと歩いていると、
「オリエさんっ!」
と、モネちゃんの悲鳴みたいな声が聞こえた。
声の方へと顔を向けると、左頬を腫れ上がらせたモネちゃんが、よろめきながらも必死な表情でこちらへと走ってきた。
「モネちゃんっ! どうしたのっ!」
私はモネちゃんに駆け寄って、腫れ上がった左頬へと手を伸ばした。
この頬、どう見ても殴られた跡だ。
一体誰が、こんな可愛い女の子に手を上げたんだー!
「モネちゃん、とりあえず、治そう!」
モネちゃんの左頬を治そうとヒールをかけようとしたんだけど、
「そんなのいいから! 逃げて!」
と首を横に振り、モネちゃんは叫んだ。
「に、逃げろって、どういう事?」
「いいから、早く! ジャンが時間を稼いでいるうちに、家に戻って! ユーリ様の元に行って、どこかに隠れて!」
「え?」
「早くっ!」
泣きながら叫ぶモネちゃんを見て、何か良くない事が起こっている気がした。
モネちゃんは逃げてと言ったけれど、このまま逃げてはいけない気がする。
ジャンくんが足止めしてるって言ったけど、彼は一体誰を足止めしているの?
私が逃げてしまったら、ジャンくんやモネちゃんはどうなっちゃうの?
「モネ! 何やってるんだ!」
「ジャン!」
ジャンくんの声が聞こえて、モネちゃんが声の方――ジャンくんの方へと走っていく。
私も声の方へと向かうと、傷だらけでボロボロになったジャンくんが倒れていた。
「オリエさんっ! モネに逃げろって言われなかったのかよっ!」
私に気づくなり、ジャンくんは怒鳴るように言った。
「何言ってるの! 今は、そんな場合じゃないでしょ!」
「そんな場合なんだよ、くそっ!」
ジャンくんは、腕や背中を激しく斬りつけられていた。
もしかして強い魔物でも近くに居るのかと思ったけど、彼の傷は刃物で斬りつけられた傷に似ている。
一体誰が、ジャンくんやモネちゃんにこんなひどい事をしたのだろう。
「モネ! お前、何やってんだ! オリエさんを逃がせって言っただろ!」
ジャンくんは、泣いているモネちゃんを、また怒鳴りつけた。
怒鳴られたモネちゃんは、体をびくりを大きく震わせて、またぼろぼろと涙を零し続ける。
私が逃げていないからモネちゃんが怒られたようだけど、それはモネちゃんのせいじゃない。
逃げろと言われても逃げなかったのは、私の意志だ。
「こら、彼女を怒らないの!」
ジャンくんとモネちゃんは、実は恋人同士だ。
若い二人が仲良くしているところ、とても可愛いんだよね。
モネちゃんはジャンくんの怪我を見て泣いているし、早く泣き止んで笑ってもらうには、ジャンくんの傷を治すのが一番だろう。
私はジャンくんの体に手を伸ばし、ヒールを唱えた。
少しずつジャンくんの傷が癒え、モネちゃんがほっと息をつく。
「モネちゃんも、治そうね」
殴られたモネちゃんの左頬に手をそえて、ヒールを唱える。
回復呪文は、モネちゃんの可愛い顔を元通りにしてくれた。
「オリエさんっ……」
「え? 何故っ!」
殴られた頬を治したというのに、モネちゃんは泣き続けた。
「くそっ!」
と、ジャンくんは地面を殴りつける。
一体どうしたのかと首を傾げると、
「本当に、ヒールが使えたのだな」
という誰かの声が聞こえた。
私はこの声を、以前聞いた事があった。
「なんで……」
声の主は、褐色の肌に黒い髪、赤い瞳の体格の良い男――ジュニアス王子だった。
その後ろに、赤茶の髪に薄い水色の瞳の男――聖女召喚の儀の術者だった、ノートンも居る。
「なんで、ここに……」
そう問うた私の声は、震えていた。
それに答えたのはノートンで、
「それは、あなたが何者なのか、確かめるためですよ」
と言い、ニィ、と唇の端を釣り上げて、笑った。
171
あなたにおすすめの小説
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる