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第1章・異世界転移と異世界転生

オブルリヒトの王③

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「今回の召喚で、聖女は二人、この世界へと来てくれた。矛の聖女は魔物たちの討伐や、魔王軍との戦いを、盾の聖女には国の守りを、と我らは考えているのだ。なのにユリアナは、君を元の世界に戻そうとしていた。ジュニアスは、これは国家反逆罪だと言っていてね……」

 王様の話を聞いて、この世界に危機が訪れていて、聖女が必要だという意味が、なんとなく理解できた。
 だけど、自分たちの都合で私を巻き込んでおきながら、聖女という役目を押し付けようとしているところは、ある意味勝手だと思う。
 王様のユーリへの愛情は本物だとは思うけれど、王族というのは勝手な考え方をするものなのだろうか?
 それともこの考え方は、世界を、国を思っての考え方なのだろうか?

 だけど、王様はさっき、盾の聖女は世界を守る、ではなく、国を守る、と言っていた。
 それって、自分の国さえ無事なら、他国はどうでもいいというようにも受け取れる。
 そして、それなら、自分の国を守るために、このオブルリヒト王国へと嫁いできたナディア様の献身は、どうなるのか。
 私は、ナディア様が報われないように感じた。
 ユーリへの想いを聞いて、少しだけ心がぐらついたけれど、王様の考えを聞いて、私はこの国のために力を使いたくないと思う。

「では、ユーリのところにある、私に荷物を、私に返してくれませんか? あの中に入っている財布の中に、私の両親との思い出が入っているのです」

 財布の中には、私が子供の時に両親と撮った写真が入れてある。
 元の世界での大切な思い出を返してほしいというと、わかった、と王様は頷いてくれた。

「あと一つ、お聞きしたい事があるのですが、よろしいですか?」

「何だね?」

「あの、王様は、矛の聖女のジュンさんを、どう思ってらっしゃるのですか? 少し言動が危険な方のように思うのですが……」

 ジュンの言動が危険なのは少しどころではなかったけれど、私は控えめに王様に聞いてみた。
 王様は私の問いを聞いて苦笑したが、確かに、と頷いた。

「確かに、行き過ぎた言動をされる方ではある……。だが、要望というものは、ある意味原動力でもある。強い意志を持った方なのだという見方もできるのだ」

 私は耳を疑った。
 王様を前に、「はぁ?」とか言わなかった自分を褒め称えたい。
 私が王様なら、あんな危険でしかない女、即処分である。

「そうなのですね、ありがとうございました」

 あり得ない、頭おかしいんじゃないの?
 そんな事を思いながら、問いに答えてもらった事へのお礼を言って、私はやはりこの国のために力を使いたくないって、そう思った。

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