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第1章・異世界転移と異世界転生
リュックサック①
しおりを挟む午後になると、ジュニアスが私の荷物を持って、部屋にきた。
王様と話したのが午前中だから、まだ数時間しか経っていない。
こんなにすぐに持って来てくれるという事は、ジュニアスは以前から私の荷物を入手していたのだろう。
そして、返してほしいと言わなければ、そのまま処分するつもりだったに違いない。
「これでいいか?」
「見てみる」
荷物――元の世界から持ってきたリュックサックの中を確認する。
リュックサックの中身は、財布、化粧ポーチ、ハンカチ、ティッシュで。
「サーチートがない」
そう呟いた私に、「何だ、それは」とジュニアスが首を傾げた。
「私のぬいぐるみだよ。ハリネズミの……」
今は、自分で動いて喋っちゃうけどね。
「そんなもの、入っていなかったぞ」
「どうして?」
「そんな事、俺が知るか。まぁ、入っていたとしても、捨てていたがな」
「どうしてよ!」
「お前の足元でチョロチョロしていた、おかしな生き物だろう。俺が見た時は吹き飛ばされて転がっていった、間抜けな生き物でしかなかったが、兵士たちからは、危険な魔物だという報告を受けているからな」
オブルリヒト王国の報連相は、結構しっかりしてるらしい。
そういや、ジュニアスが私を連れに来た時、サーチートの姿を見ていたっけ。
「あの子は、魔物なんじゃないよ、多分……」
いや、確か、使い魔って言ってたような気がする。
使い魔って、魔物なんだっけ?
まぁいいや。とりあえず、このリュックサックの中には、最初からサーチートが入っていなかったというのは、ジュニアスの様子から本当の事らしかった。
でも、これは、どういう事だろう?
ジュニアスに見つかれば、捨てられるか壊される可能性があるから、わざと入れていなかったって事?
それとも、サーチートがもう、ぬいぐるみとしても存在していないって事?
一体、どっち?
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