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第1章・異世界転移と異世界転生
素敵な呪文②
しおりを挟む「ねぇ、オリエちゃん、思い詰めないでね」
腕に抱いていたサーチートが精一杯体を伸ばし、小さな手でぺちぺちと私の頬に触れた。
「あのね、オリエちゃん。ぼくは、アルバトス先生から、いろんな事を教えてもらったんだけど、その中で、素敵な呪文を教えてもらったって言っていたの、覚えてる?」
「そう言えば、そんな事を言ってたね」
攻撃魔法と回復魔法の説明をしてくれた時に、どんな呪文なのかまでは教えてくれなかったけれど、確か素敵な呪文を教えてもらったって、言っていたような気がする。
「あのね、オリエちゃん。それが、これからオリエちゃんが使う事になる、箱庭(ミニチュア・ガーデン)の呪文なんだよ。この呪文はね、さっきアルバトス先生が言ったみたいに、強力な防御結界でこの村を囲うものなんだけどね、ぼくはこの呪文の事を聞いた時、すごく素敵な呪文だって思ったんだ」
「どうして?」
「だって、この呪文が成功したら、箱庭の防御結界の中で、みんなで平和に、楽しく暮らす事ができるんだよ。それって、ものすごく幸せな事だなぁって、ぼくは思ったんだよ」
そう言って、サーチートは嬉しそうに笑った。
「ぼくはね、みんなでずっと、平和に楽しく、幸せに暮らせたらいいなぁって思うんだ。ぼくと、オリエちゃんと、ユーリちゃんと、アルバトス先生と一緒に。みんなであのおうちで、ずっと一緒に暮らしていくんだよ。それは、なんて幸せな事だろう。だからね、オリエちゃん。みんなが平和に楽しく、幸せに暮らすために、箱庭の呪文を唱えたらいいんじゃないかなぁ」
「サーチート……」
やる事は同じだけど、気持ちの問題なのかもしれない。
サーチートの言葉を聞いて、私は肩の力が抜けたような気がした。
「そうだね。私もみんなと、あのおうちで、この村で、平和に楽しく、幸せに暮らしたいよ。だから……やってみるね」
「うん、オリエちゃんなら絶対にできるよ! それに、ぼくだって居るしね!」
サーチートはそう言うと、私の手の中でころんと仰向けにひっくり返り、お腹にスマホを出してくれた。
そう、私にはサーチートが居てくれる。
私が知らない事、わからない事は、サーチートが教えてくれるんだ。
サーチートはそのために、アルバトスさんの元でたくさん勉強をしてくれているんだ。
「アルバトスさん、箱庭の呪文の事、教えてください! 私、やります!」
私がそう言うと、アルバトスさんは少し泣きそうな表情で笑って、ありがとう、と言った。
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