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第1章・異世界転移と異世界転生

防御結界、箱庭(ミニチュア・ガーデン)①

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「では、箱庭の呪文の説明をします。この呪文は、一時的なものではなく、長期的な防御結界になります。そのために、あなたの無限の魔力が必要となってくるわけです。サーチートくん、オリエさんに、地図を見せてあげてください」

「はい、先生!」

 頷いたサーチートのお腹のスマホに、地図が映し出された。

「オリエちゃん、これが、シルヴィーク村の地図だよ」

 と、可愛い声でサーチートが説明をしてくれる。
 周りを森で囲まれた小さな村……それが、このシルヴィーク村だ。

「そして、これが箱庭を発動する範囲だよ」

 サーチートがそう言って、お腹のスマホを小さな手でチョンと触ると、シルヴィーク村を囲うように、いくつもの白く丸い点が現れた。

「この白い点は、何?」

「オリエさんが大量に作ってくれた、魔結晶です。箱庭の発動範囲になります」

 答えてくれたのは、アルバトスさんだった。

「今回の作戦には、あなたを元の世界に戻すために用意した魔結晶を、利用しました。あなたには、この魔結晶を点と考え、線で繋いでいくように結界を張ってもらう事になります。この地図で、だいたいのイメージが掴めると思うのですが、どうですか?」

「はい、なんとなく、イメージは掴めますけど、でも……」

 私がシルヴィーク村に行った回数は、ホンのわずかだ。
 村の配置がどんなふうなのかは、記憶があやふやだし、ましてや村の外に埋められた魔結晶の位置なんて、サーチートが見せてくれている地図だけでは正確にわからない。
 そんな状態で箱庭の結界は成功するのだろうかと言うと、大丈夫です、とアルバトスさんは頷いた。

「大丈夫ですよ、オリエさん。私が、サポートしますから」

「サポート?」

 はい、と頷いたアルバトスさんは、私の肩に手をかけ、「リンク」と唱え、続けて「スカイ・アイ」と唱える。
 すると、私の頭の中に、空からシルヴィーク村を見下ろしているような映像が広がった。
 きっとこれは、アルバトスさんが見ているものを、私に見せてくれているのだろう。

「オリエさん、見えていますか?」

「はい」

「これは、今のシルヴィーク村を、上空から見た所です。スカイ・アイという魔法で私が見ている景色を、あなたに見ていただいています。この映像に、あなたが作った魔結晶の位置を重ねます」

 村を囲う森の中に、白い光が見えた。
 サーチートが見せてくれた地図だけでなく、今の映像を見せてもらえた事で、距離感が掴めたような気がする。
 それにしても、アルバトスさんはすごい人だ。
 確か学者の家系って言っていたけれど、いろんな呪文を知っているだけでなく、実際に使えるなんて……この人は一体、何者なのだろう。

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