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第1章・異世界転移と異世界転生
朝まで待って①
しおりを挟む真夜中の真っ暗な森を、少し怖かったけれど、私はユーリが心配で、一気に駆け抜けた。
一気に駆け抜けられたのは、サーチートが教えてくれた、ライトの呪文があったからだ。
テニスボールくらいの明るい球体を出せる魔法なんだけど、足元までばっちりと照らしてくれるから、おかげで助かった。
アルバトスさんの家は、真っ暗だった。
夜も遅いし、ユーリは寝ているのかもしれない。
だけど、もしも体調が悪くて、倒れていたら?
そう思うと、居ても立ってもいられなくて、私はユーリの部屋の方へと足を向けた。
「ユーリ? 起きてる?」
ドアを軽くノックをして、声をかける。すると中から、
「オリエ? どうして?」
と、ユーリの声が聞こえた。
ユーリはものすごく驚いているようで、声がすごく掠れていて、いつものユーリの声よりも、低かった。
「ユーリが居ない事に気づいたの。アルバトスさんたちは大丈夫って言ったんだけど、心配でたまらなくって」
私がそう言うと、ありがとう、という小さな声がドアの向こうから届いた。
「オリエ、ありがとう。でも、伯父上の言う通り、大丈夫だから」
「そう? 本当に?」
「あぁ、本当だよ」
「じゃあ……」
安心したいから、顔だけでも見たいな。
私はそう言おうと思っていたのだけど、それよりも先に、部屋の中から苦しそうに呻くような声が聞こえた。
私は心配のあまりドアを開け、同時にライトの呪文を唱え、部屋を照らす。
「ライトの呪文、覚えたんだ?」
ユーリは、ベッドに横になっているようだった。毛布を頭まで被り、
「ごめん、明かりは、やめてもらえるかな」
と言う。
「ごめん、眩しかったよね? でも、私、ユーリの事が心配で……」
「いや、ごめん。心配、かけて……。でも、しばらく、一人にして、欲しいんだ。できたら、朝まで……。私は、大丈夫、だから」
ユーリはそう言ったけど、何度も言葉を切って、すごく苦しそうだった。
こんな状態のユーリを一人にしたくなくて、ユーリに何があったのかはわからないけれど、看病するよと申し出たんだけど、ユーリの返事は、少なくとも朝までは一人にしてほしい、だった。
「ユーリ、私が、信じられない? 私の事、嫌いになっちゃった?」
ユーリのために何かしたかったのに、拒絶された私は、悲しくなってしまった。
ユーリは頭まで毛布を被ったまま、顔を見せてくれないのだ。
迷惑ばっかりかけちゃったから、嫌われてしまったのかな。
そんなふうに思っていたら、
「嫌われるんじゃないかって思っているのは、こっちだよ」
と、小さな声でユーリは言った。
「ユーリの事、私が嫌うはずないよ」
「そう、信じたい。私は、オリエの事が、大好きだから……」
「何言ってるの、大好きだよ!」
大好き、大好き、と繰り返すと、震える声で、ユーリはありがとうと言った。
声が震えているのは、体調が悪いせい?
それとも、もしかして泣いているの?
私はユーリの体をぎゅっと抱きしめてあげたくて、ベッドで横になっているユーリの元へと近寄ろうとしたんだけど、
「朝まで、待って」
と、ユーリは近寄らせてくれなかった。
「オリエ……今、私には、想定外の事が起こっているんだ。まさか今、こんな事になるなんて、思っていなかった。とりあえず一晩、時間が欲しい」
「ユーリ……」
「約束するから……。明日の朝には、自分がどんなふうになっていても、必ずオリエに会って、理由を話すから……。だから、今は、そっとしておいて欲しいんだ。お願いだから……」
「わかった……」
ユーリはどうしても、今は一人になりたいようで、私は心配でたまらなかったけれど、ユーリの気持ちを尊重する事にした。
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