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第1章・異世界転移と異世界転生

ステータス①

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「え? 何、これ……え? どういう事?」

 混乱し、ジタバタしていると、眠っていたユリウスが目を覚ましてしまった。

「オリエ、どうした? 大きな声を出して……何かあった?」

「あ、ユリウス、おはよう。ごめんね、起こして……でもっ……」

 私がちらりと開いたままのステータスの白い画面へと目を向けると、

「ステータスに、何かあった?」

 とユリウスは言う。
 距離的に、ステータスの画面を開いたままだと中身が見えそうなものだけれど、ステータスが本人にしか見えないというのは、本当のようだった。
 簡単に見られちゃったらプライバシーの侵害だけど、今みたいにわからない事がある時は、ちょっと面倒かもしれない。

「ステータスって、本当に本人にしかわからないんだね」

「あぁ、そうだよ。だから、嘘をつかれてもわからない」

「嘘?」

「そう、嘘。どっかの馬鹿は、自分のステータスには、ルリアルークの王って書いてあるって自慢気に言ってたよ。それはお前の願望だろうっての」

「何それ、もしかして、ジュニアスの事?」

 ユリウスは嫌そうな表情で、こくりと頷いた。
 ユリウスって、本当にジュニアスの事が嫌いだよね。
 そういや、あのジュンって人も、自分のステータスについて嘘をついていそうな気がする。
 ジュンが聖女って、絶対にあり得ないと思うんだよね。

「ジュニアスがルリアルークの王って言うのは、嫌だなぁ」

「大丈夫、あいつじゃないのは確かだから。あいつは自分でそう言いふらしてるだけだよ」

「良かった……。ジュニアスがルリアルーク王って、本当に嫌だよ」

 私は新しくなった自分のステータスを見て、ため息をついた。

 名前:糸井織絵
 年齢:二十歳
 職業:神聖女 ルリアルーク王の妻
 魔力:∞
 魔法:全て使える

 能力的には、何も変わらない。
 でも、何なんだろうね、この「神聖女」っていう職業は。
 そして、新しく増えた、「ルリアルーク王の妻」ってのも、一体何なんだ。
 ルリアルーク王の妻っていう事は、私の旦那様がルリアルーク王って事になるんだよね?
 だとしたら……ユリウスこそが真のルリアルーク王って事?

「あのね、ユリウス……私のステータスに、新しい事が書かれててね……」

「何?」

「ルリアルーク王の妻って書かれてるんだけど……」

「え?」

 ユリウスはよほど驚いたらしく、跳び起きた。
 それから私の顔をじっと見つめ、ステータス、と唱え、自分のステータスを確認している。
 試しにこっそりとユリウスのステータスを覗いてみたけれど、白い画面しか見えず、そこに書かれているはずの文字を見る事はできなかった。
 このルリアルークでは、個人のプライバシーはしっかりと守られているらしい。

「オリエ……君は、神聖女なの?」

「え?」

「俺のステータスには、神聖女の夫って書いてある」

「え? じゃあ、やっぱりユリウスって……」

 ルリアルーク王なの?

 そう続けると、ユリウスは俯き、

「ちょっと……いろいろと話さなきゃいけないようだね」

 と言い、深い息をついた。

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