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第1章・異世界転移と異世界転生

ステータス②

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「確かに、俺のステータスには、ルリアルーク王と書いてあるよ」

 ユリウスはそう言うと、苦笑した。

「この事を誰かに話すのは、君が初めてだよ。子供の頃から、ステータスに書かれている事は、絶対に誰にも言っちゃいけないって、きつく伯父上に言われていたからね」

 何故アルバトスさんがそう言ったのか――それは、どういう理由かはわからないけれど、アルバトスさんはユリウスのステータスに何が書かれていたかを、知っていたという事なのだろう。

「俺さ、初めて自分のステータスを見た時は、大喜びしたよ。子供の頃は俺だって創世王に憧れていたからね。創世王と同じ色を持って生まれた事もあって、本当に嬉しかった。だけど……すぐに熱は冷めたし、絶望した。自分の生い立ちを考えると、なれるはずがないって思ったんだ」

 はぁ、とユリウスは深い息をついた。
 子供の頃の絶望感を思い出したようだった。

「考えてみてよ。俺は、男でありながら、女として生まれてきた。これは、母が俺を守るためにそうして、伯父上へと引き継いだ秘密だ。伯父上が死んだら魔法は解ける事にはなるけれど、それっていつの事だ? 俺は、自分をそだててくれた伯父上には長生きしてほしかった。だけどそれは俺がずっと女として生きていかなければいけないという事になる。子供ながらにその現実に気付いた時、俺はこのステータスに書かれた事が、嫌で仕方なくなったんだ。その気持ちは、男に戻った今も変わらない。今は、なんて面倒なんだって思っている。ルリアルーク王だなんて、そんな大層なものになりたくなんかないし、こんな姿はいらない。好きでこんな姿に生まれたわけじゃないんだ」

 俺は、母上と伯父上の色が良かったんだと、ユリウスはまたブツブツと言った。

「とにかく、ステータスにそう書いてあっても、俺にはどうすればいいかわからないし、そんなものになりたくもないんだ。ただの村人であり、ただの冒険者でいいんだ。でも……」

「でも?」

「でもね。神聖女である君の夫でいるために、そうでないといけないと言うのなら……どうすればいいのかはわからないけれど、ステータスに書かれているものにならないといけないのかなと、今は思っている……」

 そう言ったユリウスは、私を見つめると、

「俺は、オリエの事を、他の誰に渡したくないんだ……」

 と、切なげに呟いた。

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