210 / 277
第3章・冒険者デビュー
ギルドもいろいろ大変らしい①
しおりを挟む「ところで、今日は何かありましたか?」
「あ! そうだった!」
私はジルさんに、またポーションの買い取りをお願いしたい事を伝えた。
「今回は、中級と下級を作ってきたんです。よろしくお願いします」
作ってきたポーションを差し出すと、はい、とジルさんは頷いて、私が渡したポーションを手に取った。
「鑑定」
と言ったジルさんの目が、また金色に輝く。そして鑑定を終えると、
「中級、下級共に、(+)が付いている質の良いポーションですね」
と、にっこりと笑って褒めてくれた。
「買取価格は、中級が一本九百ルド、下級が二百ルドでお願いしたいのですが、いかがですか?」
「はい、それでいいです」
ポーション作りは楽しいから好きだし、結構簡単に作れる事がわかったから、値段はいくらでも構わなかった。
「では、これが代金です」
「ありがとうございます」
「ところで、お二人の冒険者ランクは、どうなりました?」
ポーションの代金を渡してくれる時、ジルさんがこっそりと聞いてきたから、私もこっそりと、「Gランクです」と答えると、ジルさんは苦笑した。
「ギルドマスターから、ランクを上げて登録するっていう話は、ありませんでした?」
「それは、ありましたけど……みんなGランクから始めるものなんですよね? 何か申し訳ないし、それに裏がありそうだったから……」
私がそう言うと、確かにねぇ、とジルさんは頷いた。
「どうかしたんですか?」
「いえ、実際、裏はありましたから……」
ジルさんはそう言うと、だけどギルドもいろいろと大変なんですよ、言って苦笑する。
今、高ランクを含め、大勢の冒険者が王都オブリ―ルへと向かってしまったため、この商都ビジードの冒険者ギルドでは、高ランクの依頼が滞ってしまっているのだそうだ。
そんな時、謎の黒魔結晶が刺さった巨大熊を、一人で倒す実力があるユリウスが現れた。
何故か冒険者ランクがブランクだというが、実力は確かなのだから、高ランクに上げて滞っている依頼を受けさせればいい――というのが、ゴムレスさんの考えだったらしい。
「そういう事だったのか……。そんな理由だったのなら、悪い事をしたかな……」
ジルさんの話を聞いたユリウスが、ぽつりと呟いた。
「でも、他の方々と同じようにGランクからという事でギルドマスターが納得したのなら、それで良いのだと思いますよ。やっぱり、他の冒険者の事もありますから。ただ、冒険者ギルド側としては、早く上のランクになっていただきたいですけどね。あの、依頼の受け方の説明、しましょうか?」
「はい、お願いします」
ジルさんの申し出にありがたく頷くと、
「本当に初心者なんですね」
と笑われてしまった。
まぁ、初心者といえば初心者であり、違うともいえる。
ゲームでは何度も受けた事はあるんですけどね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
189
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる