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第3章・冒険者デビュー
王か友人か
しおりを挟むユリウスが全てを話し終えた時、リュシーさんもジルさんも、ずっと詰めていた息を全て吐き出すように、深い息をついた。
「うーわー、とんでもない事を聞いちゃったよっ」
と言うリュシーさんに、ジルさんも頷いている。
「ユリウスがユリアナ王女で、現オブルリヒト王の子供で、オリエちゃんが異世界から来たとか……」
「まるで、創世王と神聖女のようです! 私、お二人を初めて見た時も、胸がドキドキしました! この世界の女の子は、みんな創世王と神聖女に憧れていますから!」
うっとりとした表情でジルさんが言うと、隣に座ったリュシーさんが、「違うよ」と言う。
「ジル、まるで創世王と神聖女のようだ、じゃない。この二人は、創世王と神聖女そのものなんだよ!」
そう言い切るリュシーさんに、私とユリウスは顔を見合わせて苦笑した。
「俺、そんな事は言っていないけど?」
ユリウスが話した事は、自分はユリアナで現オブルリヒト王の子供だという事、私ことオリエはジュンと共にこの世界に召喚された人間だという事、ユリウスはジュニアスにさらわれた私を助けた時に魔法が解けて、男性に戻ったという事だった。
確かに、ユリウスは自分が創世王だという事も、私が神聖女だという事も言っていない。
「あのさ、アンタが今のオブルリヒト王の息子だってだけで、もうルリアルーク王だって決まったようなもんなんだよ」
「でも、ジュニアスは、自分がルリアルーク王だって言っている」
「あのクソ王子がルリアルーク王だっていうのなら、アタシはルリアルーク王なんていらないよ。いや、アレが次のオブルリヒト王になる事さえ嫌だ。ねぇ、アンタさ、ジュニアスの替わりに次のオブルリヒト王になるつもりはないの?」
「ない」
ユリウスはリュシーさんの言葉に即答した。
リュシーさんは不服そうに眉を顰める。
「ねぇ、ユリウス。アンタはあのクソ王子が跡を継いでもいいと思ってるのかい? ジュニアスが次の王になったら、国民たちが不幸になるとは思わないのか?」
「まぁ、そうなる可能性は、無いとは言い切れないな」
ユリウスが苦笑する。
確かに、ジュニアスが次のオブルリヒト王になったら、今以上に権力を振りかざして好き放題して、国民たちが不幸になりそうだ。
ユリウスが次のオブルリヒト王になったら――立派な王様になるんじゃないかなと思う。
だけどユリウスは、首を横に振った。
「アンタの事をジュニアス王子に不満を持つ者たちに話して、アンタを担ぎ上げる事だってできるけど?」
「そうきたか。だが、想定内だ」
「え?」
「俺を担ぎ上げようとしても、俺はそれに乗る事はないし、その時はオリエと共に姿を消すつもりだ。居もしない者を担ぐ事なんて、出来ないだろう? 例え、俺を担ぎ上げようとしていた者が、俺が居なくなったせいで罪に問われたとしても、俺は助けるつもりはないので、自業自得と思って、諦めてもらいたい」
冷たい言い方に聞こえるけれど、ユリウスは王位なんて全く興味がなくて、むしろ煩わしいと思っているんだよね。
リュシーさんは黙り込み、深い息をつく。
「じゃあさ、アンタ、なんでそんな秘密を教えてくれたのさ。アンタが次のオブルリヒト王になってくれるんじゃないかって、期待しちゃうだろう?」
「それは……ジュニアスの流れから、思わず言ってしまったって感じなんだけれど……期待させてしまったのなら、申し訳なかったな」
「うん、そうだね。本当に、期待しちゃったよ」
リュシーさんはまた大きなため息をついたけれど、仕方ないなぁと呟くと、頷いた。
「ねぇ、アタシとジルがアンタたちの秘密を誰にも言わなかったら、アタシたちの前から居なくなったりしないんだよね?」
「あぁ」
「じゃあ、それでいいや。アタシ、アンタがオブルリヒト王の子供であろうが、ルリアルーク王の生まれ変わりであろうが、何だっていい。ただの友人として、アンタとは付き合っていきたい」
リュシーさんの決断に、隣に座っているジルさんも頷いた。
その様子を見て、ホッとするユリウス。
良かったね、と声をかけると、彼は嬉しそうに頷いた。
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