異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第4章:ゴブリン・スタンピード

ジュニアスの周り

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 宣言の時間がきた、とわかったのは、窓の外からの歓声が大きくなったのと、雲一つない青い空に突然映像が浮かび上がったからだ。
 青い空に映し出されたのは、ジュニアス。
 そして歓声が窓の外からだけでなく、空に映し出される映像からも聞こえる。

「大規模な投影魔法だね。しかも、音声つきかい。派手だねぇ。ジュニアスやあいつのじいさんが考えそうなことだ」

「じいさん?」

 誰のことだろうと首を傾げると、ジュニアスの母方の祖父のことだと、レイリーさんが教えてくれた。

「たしか、王都オブリールの商業ギルドの……」

「はい、ギルドマスターですね。私やローレンスくんの最大のライバルです」

「ガルディム・ゴルディン……金の力で娘を王妃へと押し上げた、強欲ジジイだよ」

 吐き捨てるようにエリザベス様が言った。
 エリザベス様の視線は、ジュニアスの少し後ろに立つ白髪の老人へと向けられていた。
 年齢はおそらく、六十代後半から七十代前半……年齢的には引退してもおかしくないはずなのに、鋭くてギラギラした目をしている。
 今ジュニアスが身に着けている金銀宝石がついたプレートアーマーは、この人があの出来レースで用意したものなんだよね。
 キラキラ輝いて綺麗ではあるけれど、あの出来レースのおかげで全くいい印象がないし、リュシーさんが作った衣装の方が、百万倍かっこいいよ!

『この映像は、全世界、どこに居るものでも見ることができる。これより、今世のルリアルーク王である、オブルリヒト王国第一王子、ジュニアス様より、全世界の民に向けてお言葉がある! 皆、心して聞くように!』

 一歩前に出てそう言ったのは、いつもジュニアスのそばにいる魔術師であるノートンだった。
 そして、ジュニアスの隣には、いつの間にかジュンが居た。
 私とジュンがこの世界に来てから、三カ月くらい経つ。
 私はいろいろありながらも結構のんびりと暮らしていたけど、あの女はどんなふうに暮らしてきたんだろう?
 偉そうな顔でジュニアスの隣に居るあたり、彼女の思い通りに――それは周りの人たちには迷惑でしかなさそうだけど――生きてきたんじゃないかと思う。
 というか、ナディア様は一体どうなさっているんだろう。
 それに、ジュニアスの正妻はナディア様なのに、どうしてジュンがジュニアスの隣に居るわけ?
 あの性格の悪いジュニアスに、女神のようなナディア様は本当にもったいないよ。
 ナディア様、ジュンに嫌がらせとかされていないかな?

「ナディア様は、どうされているのかな……」

 私がぽつりとつぶやくと、

「ナディア様ですか?」

 と反応してくれたのは、ソフィアさんだった。

「オリエ様、ナディア様をご存じなのですか?」

「はい。短い間でしたがオブルリヒトの宮殿に居たときに、良くしていただいたんです。ナディア様は、お元気にされているのでしょうか?」

 私がそう言うと、ソフィアさんは俯き、小さく息をついた。
 あ、これ、駄目なやつっぽい?

「もしかして、あの女のせいで、ひどい目に遭っているんじゃ……」

「あの女というのが矛の聖女様のことでしたら……ひどい目に遭わないように、大人しく生活されている感じですね。私も同じいようなものでしたので、ナディア様と一緒に過ごすことが多かったのです」

 ナディア様がジュンから逃れるためなら、ソフィアさんは現オブルリヒト王妃やジュニアスから逃れるためってことかな。
 ソフィアさんも、いろいろと苦労してきているんだね。

「少なくとも私が王宮に居たときは、穏やかに過ごされていました。今も侍女のアニーに守られながら穏やかにお過ごしのはずです」

「そうですか、良かった。アニーさん、すごくしっかりした子ですもんね! じゃあ大丈夫ですよね!」

「えぇ」

 ソフィアさんは頷いたけれど、小さく息をつく。
 大丈夫だって頷いたけれど、もしかすると何か気になることがあるのかもしれなかった。
 だけど、ゴブリン・スタンピードが起こるかもしれない今、それを口にしても仕方がないと思って口にしていないのかもしれない。
 いろいろと落ち着いたら、もう一度ソフィアさんから話を聞いた方がいいかもしれないね。


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