異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

文字の大きさ
334 / 370
第4章:ゴブリン・スタンピード

魔族の宣言

しおりを挟む


 黒い燕尾服に、シルクハット。そして赤い石がついたステッキを持った、まるでマジシャンのような男。
 一瞬余興でも始まったのかと思ったけれど、すぐにこの男の異様さにみんな気がついた。
 この男の肌は青く、耳はピンととがり、そしてシルクハットからは捻じ曲がった二本の角が生えていたのだ。

『お前は、何だ?』

 突然現れた異形の男にそう声をかけたのは、ジュニアスだった。
 ジュニアスもとても驚いているみたいで、彼は目を見開き、声は少し震えていた。

『私は、このたびルリアルーク王と名乗られたジュニアス様にご挨拶に参りました、魔族のホーンハットという者でございます』

 異形の男――魔族のホーンハットは、胸に手を当てジュニアスに丁寧にお辞儀をした。
 それはジュニアスを前に敬意を払っているようにも見えるけど、私には嫌な感じとしか思えなかった。
 これから何か大変なことが起こるような気がする。
 突然現れた魔族を前に、空に浮かぶ映像からも、窓の外からも、悲鳴が聞こえた。

『ジュニアス様におかれましては、このたび、今世のルリアルーク王と宣言されたこと、お祝い申し上げます。ですが我ら魔族の者としては、御身がルリアルーク王と宣言されたジュニアス様にお尋ねしたいことがあって、このたび参上いたしました』

『聞きたいこととは、何だ?』

 片手を上げて怯える民衆を静め、緊張した面持ちでジュニアスがホーンハットに聞いた。
 今のジュニアス、平静を装おうとしているけど、焦ってる感じだよね?
 ということは、あのホーンハットという魔族が今ジュニアスの前にいるのは、本当に予定外のことなの?
 だとしたら、ホーンハットが何を聞いてくるのかはわからないけれど、答え方次第では取り返しのつかないことになってしまうんじゃないの?

『では、今世のルリアルーク王であるジュニアス様にお尋ね致します。ルリアルーク王にとって我ら魔族は、一体どんな存在なのでしょう?』

 意外な質問だったのか、ジュニアスは一瞬目を見開き、言葉に詰まったようだった。
 何と答えるべきなのか少し考えているのかもしれない。
 ホーンハットが望む答えは、一体どんな答えなのだろう。
 だけどその時、民衆から声が上がる。

『ジュニアス様、魔族なんてやっつけてくれ!』

『ジュニアス様! ルリアルーク王! 魔族から私たちを守って! 私たちを、世界を平和に導いて!』

 一旦は落ち着いても、民衆は魔族を恐れ、嫌悪したのだろう。
 早くその魔族を退けてほしいと、民衆はジュニアスに助けを求めた。
 その声に、今世のルリアルーク王と名乗ったジュニアスは、『もちろんだ』と頷いた。

『魔族は人間の敵であり、滅ぼさなくてはならない者たちだ。だが、そこで膝をつき、床に頭を擦り付ければ、俺たちは貴様らを許そう。どうだ、降伏するか?』

 そう言ったジュニアスに、民衆が沸く。

『では、今世のルリアルーク王は、我ら魔族を敵とみなすわけですね?』

『あぁ、そうだ。我らにとって魔族は敵だ!』

『では、我ら魔族にとっても、今世のルリアルーク王と人間たちは、敵ということでよろしいですか?』

 ニヤリ、とホーンハットが唇を釣り上げて笑う。
 笑っているのに、目がギラギラと怪しく光っているのがとても不気味だ。
 あぁヤバい、と私は思った。
 そしてあのホーンハットという魔物は、自分が今世のルリアルーク王と宣言したジュニアスから、次の言葉を引き出したかったのかもしれない。

『あぁ、もちろん。我ら人間とお前たち魔族は、敵同士だ。俺は今世のルリアルーク王として、お前たちを滅ぼすことをここに誓おう』

 大歓声の中で、ジュニアスは満足げに笑う。
 だけど、そんなジュニアスよりもさらに声高らかに、満足そうに笑ったのは、ホーンハットの方だった。

『では、我々魔族も、同じ言葉をお返ししましょう! 我らはあなた方人間の敵で、あなた方を滅ぼすことに致しましょう!』

 ホーンハットはステッキを高く掲げ、続ける。

『我らは人間を滅ぼす前に、まずは今世のルリアルーク王を殺しましょう! そして人間どもの絶望する顔を見ながら、人間狩りを楽しむと致しましょう!』

 ホーンハットがそう叫んだ次の瞬間、ホーンハットが持っていたステッキから赤い火の玉……ううん、多分ファイヤーボールが放たれて巨大化しながら空高く昇っていき、そして昇りきったところで、まるで花火みたいに大きく弾けた。
 だけど花火と違うところは、弾けた巨大なファイヤーボールが、そのまま空から王都オブリールへと降り注いだことだ。

『さぁ、始めましょう! 楽しい楽しい、魔族と人間の殺し合いです! まずはゴブリン・スタンピード、そしてデスマーチをお楽しみください!』

 楽しそうなホーンハットの声を最後に、映像は搔き消えた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...