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第4章:ゴブリン・スタンピード
どうして抵抗しないと思った?
しおりを挟む「サラさん、仲間のみなさん、エリザベス様たちをよろしくお願いします! ユリウスは、エリザベス様を人質に取られても、助けに来ませんから!」
「オリエ? どうしたんだい?」
「私、ここから逃げます! ユリウスのところに行きます! アントニオ! 今すぐ私を放しなさいよ! そうじゃないと、許さないから!」
「は? お嬢ちゃんが何言ってんだ? 俺から逃げられるとでも思ってんのか? 俺は元Aランク冒険者なんだぜ?」
私の腕を掴む手に力が込められて、ちょっと痛い。
「お嬢ちゃんに何ができるっていうんだ! アンタはポーション作りが上手いだけの、ユリウスに守られなければ自分の身も守れない、ただのお嬢ちゃんだ!」
アントニオは私のことを、そんなふうに思っているんだね。
ユリウスが強すぎるっていうのもあるだろうけど、私はユリウスにただ守られるだけの存在。
実際、そうかもしれない。
だけどアントニオ、どうして私が抵抗しないと思った?
「アントニオ! もう一回だけ言う……。今すぐに私を放せ。そうでないと、無事では済まないよ!」
「ははは! 無事ってなんだ! 俺が怪我するっていう意味か? やれるものなら、やってみろ!」
「うん、そうするよ」
高笑いするアントニオに、私は頷いた。
アントニオの言う通り、力では絶対に敵わない。
そしてアントニオは元Aランク冒険者だというから、力だけの男じゃないだろう。
だけどアントニオは、私を甘く見過ぎていた。
「エリザベス様とレイリーさんには申し訳ないけれど、私はもうどうでも良くなった……。ガエールの人はガエールの人たちで、この街を守っていけばいいと思う。今後は絶対に、私のユリウスに頼らせない」
「おいおい、お嬢ちゃん? お前、何言っているんだ? お前、自分の立場わかってんのか? そんな偉そうなことは、俺から逃げ出してから」
「だから、逃げるって言ってるじゃない!」
アントニオが掴んでいるのは、私の片腕だけだ。
だから私はもう一方の手を思い切り力を込めて握り込み、アントニオの胸を殴った。
自分的にはバキッとやったつもりだったけど、ぺちっと音がしただけだった。
「おいおい、こんな可愛い攻撃で俺から逃げるつもりだったのか?」
大笑いするアントニオ。笑いたければ笑えばいい。
だって私の目的は、アントニオの体のどこかに拳を当てることだったからだ。
体に拳を当てていたら、絶対に当たるはずだよね。
私の目的は、ファイヤーボールのゼロ距離射撃だ!
「ファイヤーボール!」
私がそう叫ぶと、アントニオの胸で拳大の炎の玉が爆発した。
本当はもっと威力のあるものを放つことも考えたんだけど、ここはアントニオの冒険者ギルドではなく、レイリーさんの商業ギルドだ。被害はなるべく少ない方がいい。
ゼロ距離で私のファイヤーボールを受けたアントニオは、驚いて私の腕を放してしまった。
この隙に、私は目的の場所へと移動した。
ガラス戸を開き、バルコニーへと出る。
「おいお嬢ちゃん! お前、やってくれたな! だがな! 逃げた先が駄目だった! ここは三階だ! もうお嬢ちゃんには逃げ場がねぇよ!」
アントニオは私を袋小路に追い込んだと思ったんだろうな。
だけど私は、アントニオを無視して、手すりへとよじ登った。
「オリエ! 危ないよ! お止め!」
「そうだぜ、お嬢ちゃん! いくら人質になるのが嫌だからって、そこから飛び降りて死ぬなんてよ!」
「は? 何言ってんの!」
誰が飛び降り自殺なんかするか!
私はアントニオを睨みつけると、思い切り手すりを蹴った。
そしてユリウスを想い、私自身は今まで一度も使ったことがなかった呪文を口にした。
「テレポート!」
向かう先はもちろん、ユリウスとサーチートが居る場所だ!
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