15 / 19
15・さて、あれは誰の差し金でしょうか
その後、セシリアとジゼルは、馬車の待機所までレオンに送ってもらった。
セシリアたちが待機所に着くと、ちょうどグランチェスター侯爵家の馬車が待機所に着いて、アルバートが姿を現した。
「セシリア、心配をかけないでくれ……。心臓が止まるかと思ったよ……」
アルバートはそう言うと、セシリアを抱きしめた。
セシリア自身も、アルバートに内緒で外出してしまったため、アルバートや屋敷で待つ家族に対し、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「心配かけてごめんなさい」
と素直に謝ると、アルバートはセシリアの耳元で、「本当に無事で良かった」と呟いた。
「グランチェスター侯爵閣下、お初にお目にかかります。自分は、レオン・ハートレイと申します」
「レオン卿、この度は本当にありがとう」
アルバートはレオンの手を取ると、固く握りしめた。
「レオン卿、君がいなかったら、娘はどうなっていたことか……」
「いえ、セシリア嬢はお強い方です。自分は彼女のような強い女性を初めて見ました」
そう言ったレオンが、セシリアを見ると、また頬を染める。
褒められているとは思うのだが、どうして彼は自分を見ると、顔を赤くするのだろうと、セシリアは思う。
「セシリア嬢をさらおうとした者たちは、捕らえております。後日、セシリア嬢にお話を伺うことになると思います。その際には、ご協力をお願いします」
そう言ったレオンに、セシリアもアルバートも頷いた。
「お父様、本日は本当に、申し訳ありませんでした」
帰りの馬車で、セシリアはもう一度アルバートに謝罪した。
アルバートは困ったようにセシリアを見つめ、
「お前が安心して外出するには、まだ早かったようだな」
と言う。
セシリアは頷き、アルバートの顔を見つめ返した。
「それで、お父様……何か、おわかりになりましたか?」
ルミナスバードで父に助けを求めたが、その後すぐにセシリアはレオンに助けられた。
そのことを確認したアルバートがセシリアを迎えに来るまで、何もしていなかったはずがない。
セシリアの予想通り、騎士団での尋問報告を待つことなく、アルバートは今回の騒動の黒幕を突き止めていた。
「レインズ男爵が雇ったらしい……。うちからの慰謝料請求の話を聞いて、自棄になったということだろう」
「そうですか……なんて迷惑な……」
ふう、と呆れたように息をついたセシリアの隣で、口元を引きつらせながら、
「旦那様、お嬢様、消しますか?」
とジゼルが言う。
ジゼルは、かすり傷とはいえセシリアが傷を負ったこと、そして自分が彼女の危機にそばにいなかったことが、許せないようだった。
「そうですわね……それもなしとは言いませんが……あぁいう方々には、惨めに生きていく方が、辛いのではないかしら」
セシリアがそう言うと、あぁ、とアルバートも頷いた。
グランチェスター侯爵家からの慰謝料請求の他、今回の件も含めレインズ男爵家の悪事は、これから白日の下にさらされるだろう。
「あとのことは、騎士団と王宮法務局に任せよう。全てを明らかにされて惨めに生きていくか、処刑されるか……どちらにせよ、わざわざこちらが手を回す必要はないよ」
「えぇ、そうですわね」
アルバートの決断に、セシリアは微笑みながら頷いた。
「セシリアー! 無事かー!」
屋敷へと戻ると、祖父が自慢の槍を手にして馬に乗り、今にも飛び出そうとしているところだった。
必死に止めている祖母と母の姿に、セシリアはまた申し訳ない気持ちになってしまった。
あなたにおすすめの小説
番ではないと言われた王妃の行く末
にのまえ
恋愛
獣人の国エスラエルの王妃スノーは、人間でありながら“番”として選ばれ、オオカミ族の王ローレンスと結婚した。しかし三年間、彼に番と認められることも愛されることもなく、白い結婚のまま冷遇され続ける。
それでも王妃として国に尽くしてきたスノーだったが、ある日、ローレンスが別の令嬢レイアーを懐妊させ、側妃として迎えると知る。ついに心が折れたスノーは離縁を決意し、国を去ろうとする。
しかしその道中、レイアー嬢の実家の襲撃に遭い、スノーは命を落とす寸前、自身の命と引き換えに広域回復魔法で多くの命を救う。
これでスノーの、人生は終わりのはずだった。
だが次に目を覚ますと、スノーは三年前の結婚式当日に戻っていた。何度死んでも、何度拒絶しても、結婚式の誓いの瞬間へと戻される。
番から逃れようと、スノーは何度も死を選ぶが――。
知らないうちに離婚されていた男爵令嬢は実家に帰ることにしました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
結婚して1年。
元・貴族令嬢エヴェリナは、平民商人の夫にこき使われ、自分の時間すら奪われていた。
久しぶりの自由時間を楽しんで帰宅すると、門番が立ち塞がり──
「ここより先には立ち入れません」
夫が勝手に離婚届を偽造し、彼女を家から追放した。
さらに「不貞の証拠」として、エヴェリナのサインを悪用した偽装契約書まで作成。
名誉を守るため裁判へ挑むが、そこで明らかになったのは──
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。ご都合主義です。
「お前を愛することはない」と言ってしまった夫は、妻の本当の目的を知らない【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
辺境伯ロランは、政略結婚で迎えた妻メリンダを「お飾り」だと思っていた。
だがある日、愛人が社交界で妻を侮辱し、王宮から勧告が下る。
窮地に立たされたロランは、妻の実家へ謝罪に向かうが──
メリンダは、9歳で商会を立ち上げ、15歳で貴族学園を3ヶ月で飛び級卒業した“怪物級の才女”だった。
さらに、ロランの代わりに愛人を修道院へ送り、家政も社交も完璧にこなす。
一方ロランは、妻の望む「コンドル」と「虎」を本当に捕まえて帰ってくるほど、妙な方向に頑張り始め──
気づけば、“お飾り”だと思っていた妻に、人生ごと振り回されていた。
そんな中、パーティーで“アフェイリ窃盗団”が出現。
ロランは初めて、妻を守るために剣を抜く。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。
エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。
──そして舞踏会の夜。
王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。
ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。
王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。
王国は“内乱寸前”へと傾いていく。
そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。
「僕と結婚してほしい。
僕以外が王になれば、この国は沈む」
冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。
「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」
エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。
それからの2人は──?
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。
選ばれなかったのは、どちら?
白瀬しおん
恋愛
「あなた、本当にうちの家にふさわしいと思っているの?」
その一言で、すべては終わるはずだった。
婚約者は沈黙し、公爵夫人は微笑む。
わたくしはただ、静かに席を立った。
――それで、終わりのはずだったのに。
届いた一通の封書。
王城からの照会。
そして、夜会に現れた“迎え”。
その日、選ばれたのは――どちらだったのか。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?