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28.フレルデント王家
しおりを挟む声が出るようになった翌日、アリアは王宮に招かれていた。
現国王であるリカルドの父親であるフレルデント王と、先王であるリカルドの祖父に紹介されるためだった。
現王妃であるリカルドの母親と、先王の妃であるリカルドの祖母には、アリアはロザリンドの館で会った事があったのだが、王と先王と会うのは初めてだった。
「サリーナ・ダーフィルの妹、アリア・ファインズでございます。よろしくお願い致します」
リカルド、ステファン、サリーナがそばにいてくれるが、アリアはとても緊張していた。
だが、拍子抜けするくらい、フレルデント王家は温かくアリアを受け入れてくれた。
「やっと会えたね、アリア。とても嬉しいよ」
穏やかにそう言って、リカルドと同じ緑の目を優しく細めたのは、フレルデント王だった。
「王妃や母上が、大ばば様のところまで君に会いに行っていたのが羨ましくて、私と父上も大ばば様のところまで、君に会いに行こうかと思っていたんだよ。でも、みっともないから止めなさいって王妃に言われてね。自分たちは、会いに行ったくせに、ひどいだろう? ねぇ、父上」
フレルデント王は、隣に座っている先王へと目を向ける。
先王は、あぁ、と頷くと、
「本当に、お前に会えるのを楽しみにしていた。話には聞いていたが、本当に、愛らしい娘じゃな」
と言い、深い皺のある目尻を下げて笑った。
「アリアの事は、ステファンやサリーナから、よぉーく聞いておる。ずっと会ってみたかった。馬鹿孫の初恋の相手じゃからな」
初恋、と言われ、アリアは頰を染めた。
リカルドの初恋は自分らしいが、かなりの人が知っているようで、嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちになる。
「アリア、この馬鹿孫にはいろいろと馬鹿な話があるからな、いろいろと聞かせてやるから、楽しみにしておれよ」
先王にそう言われ、アリアは笑顔で頷いたが、隣ではリカルドが肩を落として俯いていた。
「おじい様、お願いですから、ほどほどにしてください。僕がアリアに呆れられたらどうするんですか……」
「おいおい、馬鹿孫よ、良いところばかり見せていては、いかんぞ。格好の悪いところも見てもらわねばな。それに、わしが言わずとも、お前の馬鹿話は、どこからでもアリアの耳に入るぞ」
「……あぁ、確かにそうですね」
「有名じゃからな」
「そう、ですね……」
有名な話って、どういう事なのだろう?
アリアがリカルドを見上げると、彼は観念したように、自らそれを口にした。
「君がディスタルと婚約した話を聞いて、めちゃくちゃ泣いたし、めちゃくちゃ荒れたし、めちゃくちゃ落ち込んだんだよ。あまりにもそんな状態が長かったから、国中に知れ渡ってしまったんだ」
「え? あ、あの、それって……?」
「ごめんね、引かないでね、アリア……。でも、どうせばれるから、先に言うよ。多分、僕が君をずっと好きだった事、この国で知らない者は居ないんじゃないかなっていうくらい、有名な話になってる……」
「え?」
予想もしなかった事実にアリアは驚いたが、思わず笑ってしまった。
「でもね、だからこそ、みんな祝福してくれるから」
「はい、ありがとうございます。すごく、幸せです」
いつの間にか緊張もなくなり、アリアは自然な笑顔を浮かべる。
彼女は、リカルドの隣で、この国を共に守っていきたいと思った。
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