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49.アリアにできる事
しおりを挟むターニアからの手紙を見せてもらい、リカルドが言った戦争を早めに終わらせる方法を聞いてから、アリアはそれが頭から離れないでいた。
『ウクブレストが狙っているのは、ここだからね』
『ウクブレストを止めるために、フレルデントがあの国と戦争をするという事だよ』
戦争なんて恐ろしい。平和が一番だ。
だけど、恐ろしいからこそ、早く終わってほしかった。
なのに、それを終わらせる方法が、この国が戦争をする事だなんて。
「怖い……嫌だ……」
この穏やかで美しい国が戦争をするなんて、絶対に嫌だとアリアは思った。
だけど、ウクブレストがーーディスタルが狙っているのがこのフレルデントだというのなら、それは避けられないのかもしれなかった。
「アリア、顔色が悪いよ、大丈夫かい?」
「え?」
声をかけられて、アリアは顔を上げた。
声の主はロザリンドで、彼女は心配そうにアリアの顔を見つめていた。
「体調が悪いのなら、手伝いなんてしなくていいんだよ。大丈夫かい?」
「ロザリンド様……」
アリアはリカルドの元に嫁いだが、ロザリンドの館での手伝いを続けており、今は子供達が持ってきた薬草を一人で分けていたところだった。
「大丈夫です。ごめんなさい、ちょっと考え事をしていて……」
「そのようだね。かなり思い詰めたような顔をしていたよ。何を考えていたのか、話してみないかい?」
「ありがとうございます。でも……」
「ウクブレストの事、かい?」
「え?」
「ターニアからの手紙の件だろう? 坊が、お前に見せるかどうか、悩んでいたからね」
だけど、手紙を見せなくても、アリアはきっとターニアを心配して思い悩むだろう。
それなら、真実を知らせた方がいいのではないか。
リカルドはそう考えて、アリアにターニアからの手紙を見せてくれたのだと、ロザリンドは言った。
「何を考えているのか、話してみないかい?」
優しく聞いてくれたロザリンドに、アリアは頷いた。
「戦争が、怖いです。ウクブレストの……ディスタル様の目的がこのフレルデントだと聞いて、恐ろしくて仕方がありませんでした。でも、逃れられないかもしれないって思って……」
「あぁ、確かにそうだね。逃れられないかもしれない。ウクブレストは、ずっとこの国を狙っていたからね」
「そうなのですか?」
「あぁ、そうだよ。今の王の父親は血の気の多い男でね、何度も攻撃を仕掛けてきた。ディスタルとかいう小僧は、祖父の気性を受け継いだんだろう……」
戦争はどうしても起こってしまうのだろう。
アリアはそう思い、小さく息をついた。
「私に何かできる事はないでしょうか……」
「普段通りでいいさ」
「え?」
ロザリンドの言葉に、アリアは驚いた。
「いつも通りの生活をしていればいいさ。アリア、このフレルデントは、あんたが心配するような、弱い国じゃない。だから、いつも通りの生活を送っていればいい。でも……」
「でも?」
「でも、もしもお前がこの国を思い、どうしても何かをしたいと思ってくれるのなら……。この国が無事であるよう、祈り、歌ってくれないかね。それだけで十分なんだよ」
「それくらい、毎日、いつだってやります」
この国が無事であるように。
この国の人々が、毎日幸せであるように、祈り、歌う。
「ロザリンド様、お願いがあります。私にもっと薬草や、ポーションの事を教えてください。それから、魔法も……。少しでもこの国を守れる力が欲しいんです……」
自分には戦うなんて、無理だろう。
それなら他に自分ができそうな事は、全てしたかった。
「わかった。私が知っている事を、全部お前に教えてあげよう。そうして、坊と一緒にこの国を守っておくれ」
頷いたロザリンドに、よろしくお願いします、とアリアは頭を下げた。
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