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54.仕組まれた会見
しおりを挟むウクブレストとの会見の場である小さな村に現れたリカルドを見て、ディスタルは驚いたようだった。
リカルドは会見の場に馬車で現れ、馬車はリカルドたちを降ろした後、戻って行ってしまった。
人数は、三人。
リカルド本人と、右腕であるステファン。
そしてアリアだけだったのだ。
「リカルド、えらく身軽で来たものだな」
「いけなかったかい?」
「いや、相変わらず面白いやつだと思っただけだ。それに……」
ディスタルはちらりとアリアへと目を向けた。
「懐かしい顔だな。どうしてここへ? ファインズの息子の方ならともかく、この娘がここに現れると思っていなかった!」
「アリアは僕の妻になったんだ。ターニアから聞いていないかい?」
「あぁ、そう言えばそんな事を言っていたような気がするな。興味がなかったものでな」
「そうかい。まぁ、興味を持たれても、招待する予定ではなかったけどね」
リカルドとディスタルの会話を、アリアは黙って聞いていた。
二人の会話は、仲が良い者同士の軽口の応酬にも聞こえるが、憎しみ合った者同士の言い合いにも聞こえる。
「ところでリカルド……こんな少人数でここを訪れるという事は、俺の望み通り、フレルデントはウクブレストに降伏するという事でいいか?」
そう言ったディスタルに、リカルドは首を横に振り、
「まさか」
と言う。
「その反対だよ、ディスタル。フレルデントは、決して降伏などしない。今日はそれを伝えに来たんだ。他国を攻めるなんて馬鹿な事は、もう止めるんだ」
「それを、俺が聞くとでも思っているのか?」
リカルドの言葉を聞いて、ディスタルは呆れたように言った。
「聞いた方がいい。さもなくば……」
「さもなくば?」
「フレルデントとウクブレストで、戦わなくてはならない事になる」
「ははっ、面白すぎるぞ、リカルド!」
ディスタルは笑い出した。
「リカルド、それこそが俺が求めている事だと、わかっているんだろう?」
ディスタルが右手を上げると、建物の影に身を潜めていたらしい兵士たちと、スザンヌが現れた。
兵士たちは剣や槍、銃をリカルドたち三人に向け、スザンヌはゆっくりとした足取りで、ディスタルの元へと向かう。
「ふふふ、馬鹿な男と、同じくらい馬鹿な女、ですわね。何をしに来たのかしら」
スザンヌはディスタルにしなだれかかりながら、アリアを見て馬鹿にしたように笑う。
「本当だ、リカルド。こんな少人数でここに来るなど、殺してくれと言っているようなものだ。お前はもう少し、賢いと思っていたのだがな……」
「ふふふっ、でも、お別れですわね!」
「そうだな」
ディスタルがもう一度右手を上げると、銃声が鳴り響いた。
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