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79.涙

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 ウクブレストからの報せを聞いた後、リカルドは一人姿を消した。
 アリアはリカルドを探し、自分と彼の部屋――寝室で彼を見つけた。
 リカルドはベッドに体を投げ出し、両腕で顔を覆っていた。

「リカルド様……」

 そっと声をかけると、

「アリア、どうしたんだい?」

 両腕で顔を覆ったまま、リカルドは返事をした。
 彼は泣いているのかもしれない。
 声をかけない方が良かっただろうかとも思ったが、すでに声をかけてしまったアリアは、そのまま会話を続けた。

「大丈夫、ですか?」
「あぁ、大丈夫だよ」

 リカルドはそう言ったが、全くそうは見えなかった。
 彼はベッドに横になって、顔を覆ったままだったから。
 だけど、それでいいとアリアは思った。
 ただ、今は彼のそばに寄り添いたいと、そう思った。

「そばに居ても、いいですか?」
「……いいけど、かっこ悪い姿を、見る事になるよ?」
「構いません」
「今の俺は、君に気を遣えないかもしれないし、構ってあげられないかもしれない……。乱暴な事を、言ってしまうかもし、君に優しく、できないかもしれない」
「構いません。それでも、そばに居たいです」

 アリアがそう言うと、リカルドは苦笑した。
 体を起こし、腕で乱暴に目元を拭う。

「ほら、かっこ悪いだろ? 呆れたんじゃないか?」
「もう、呆れません」
「本当?」
「えぇ」

 アリアが頷くと、リカルドは腕を伸ばした。
 来て、と言われるまま、アリアはリカルドの手に自分の手を重ね、そのまま乱暴に引き寄せられ、ベッドに押し倒された。

「ほら、優しくできない」
「それで気が紛れるなら、構いません」
「アリア……君は純粋すぎる……あと、俺に甘過ぎだ」
「そんな事ありません。それに、甘いというなら、リカルド様もです。あなたの方が私に甘過ぎで、優しい……」
「アリア……」

 力を抜いたリカルドの体を、アリアは抱きしめた。

「リカルド様は、時々ご自分の事を、俺って言いますね」
「あぁ、気づいてた? 感情が高ぶった時は、自分の事を、俺って言ってしまうみたいなんだ。気をつけてはいるんだけどね」
「そうなんですね、覚えておきます。じゃあ今は、感情が高ぶってらっしゃるんですね。私はそばにいますから、安心して、心を休めてください。悲しいのなら、泣いてください……。だってあなたは……」

 大切なご友人を、亡くされたのですから。

 そう言って背中をぽんぽんと撫でると、アリアの肩に顔を埋めたリカルドは、ありがとう、と呟いた。
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