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王都決戦

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ロウレン男爵の屋敷前で、大勢の兵士たちによって包囲されている。
それに対してロウレン男爵の兵士は、50人程だ。

執事「何事で御座いますか・・・」

「よく聞け!吸血鬼の血の儀式をロウレン男爵にとり行う。ロウレン男爵を出してもらいたい」

「男爵様は・・・日中は部屋からお出になりません」

「なんだと・・・なおの事だ!中に入って捕まえて参れ!言っておくが、抵抗すれば斬って捨てるぞ!」

屋敷に押し入った兵士は、怒鳴り散らす男爵を取り押さえた。

「男爵の我に、そのような儀式をさせるのか!」

「これは誰もこばむ事が出来ない儀式ぞ。拒むなら吸血鬼として討伐するしかない」

押し入った貴族の1人が、窓に打ち付けられた板を外しだした。

「何をする貴様は!」

太陽の光りが差込んで、男爵の手に当たった。

「ギャー!!」と叫び、手がただれ出した。

「やはり吸血鬼だったか・・・殺せ!殺してしまえ」

更に板が外された。
1人の兵士が盾の裏側で反射させて男爵に照らし当てる。

顔がただれて、崩れ落ちた。

「き、き、きさ、まらが・・・」




王都を取り囲むように、各地の領主が旗をなびかせて見守っている中で、正門前では使者が用件をのべている。

「我らは、領主連合!・・・ここ王都に、吸血鬼が好き勝手に振舞ってると聞き、はせ参じた!王の叔父スレンテが吸血鬼に成り下がったのは承知の事実だ。すみやかに引き渡せ!!さもないと王都を攻め入るしかない」

時間が刻々と過ぎようとしている。当初は騒いでいた王都内も一向に返事がない。

「もう昼ぞ、このまま待てぬ・・・」

「はやく戦いを初めて、夕暮れまでに決着を決めなければ不利ぞ」

領主連合の面々からも苛立ちがみえている。

「ここで表決を取りたい。見た限り異議はないな・・・王都攻めに賛成なら席を立って戦の準備を・・・まだ攻め時でないと思う者は、ここで座って見ていろ」

全員が立上がって天幕から出てゆく。



「よいか!この国の命運が掛かった戦だ!!」の合図で軍が動き抱いた。


「撃て!!」の合図でカタパルト(投石機)から石が撃ちだされた。

壁に命中したがビクともしない。
それでも諦めずに同じ場所へ、何度も何度も石が撃ちだされた。


正門前では、破城槌はじょうついが兵士らによって打ち付けられている。

「まだまだ力を溜めて打ち出せ!」

「ドン、ドン、ドン」と門が鳴り響いた。

本当なら上から矢とか石が襲って来るのだが、そんな素振りもみせない。


壁が崩れ始めた。それと同時刻に門に槌が突き破った。

壊れた壁から兵士が雪崩なだれ込むと、開け放れた門からも大勢の兵が王都へ入り込んだ。

それ以前に、王都内でもあっちこっちで黒煙が上がっていて、内乱中であった。


そんな領主連合の前に、王都の兵士がさえぎるように現れた。
緊張が高まり、両者は睨みあった。

「我らは、国王の命令で領主連合に味方するべく、はせ参じました」

「ならば、王の叔父スレンテへ案内しろ!」

「こちらです」


城内を案内されて向かった先では、兵らによって戦い中で誰が味方か敵か判断が出来ない状態だ。

「やめろ!バカ者が・・・スレンテ公が吸血鬼か判断するだけだ。吸血鬼でなければ殺しはしない」

「それは本当ですか・・・」

「神に誓って宣言する。我、ここに吸血鬼でない者は殺さない。それでいいな・・・」

「皆!剣を捨てよ」

スレンテが立て込む部屋へ、皆が入った。


薄暗い部屋だった。

床に少年が倒れた状態で、胸に剣が突き刺さっている。
その横にスレンテ公が立った状態で、薄笑いを浮かべている。

「甥の国王が今死んだ。だから我が国王ぞ。臣下の分際で下がれ!!」

「なんとむごい事を・・・皆で、廊下の日光に連れ出せ」

「何をする!国王に向かって無礼ぞ」

1人は、スレンテによって打ちのめされた。

「同時に襲い掛かれ」

左右と前後で襲い掛かれて、それでも暴れるスレンテを廊下へと連れ出された。
最初に手が日光に晒されて、手がボロボロと崩壊しながら悲鳴ひめいが「ギャーー!!」と響いた。

「やはり吸血鬼であったな・・・」

土くれになった土を、皆が見てる前で兵士の1人が踏み散らかした。

「お前が悪いんだ、お前が・・・」

誰も止めよとはしなかった。


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